数々のユニークな端末を送り出している中国・上海Uniherz。その最新作が「TickTock」だ。IP68防水でタフな筐体でありながら5Gに対応し、なおかつ背面に円形の1.3型サブディスプレイを備えている点が最大の特徴となっている。まもなくクラウドファンディングサイトでKickstarter出資を募るとしているが、事前にサンプルを入手したので、簡単に試用レポートをお届けする。
いかにもタフそうな筐体
そのほかの外観やデザインについて見ていこう。上下はなだらかにとんがっている形となっており、このあたりは同社のTitanシリーズに通じるものがある。中国のスマートフォンを追いかけていた人なら、かつてMeituがリリースした端末を思い出すことだろう。左右も多角形を用いていて、筐体は14.9mmと薄型のノートPC並みの厚さがあるため、かなりごつい印象だ。
サブディスプレイ周囲の金属パーツはなかなか高級感があるほか、背面パネルもカーボン調となっている。上下はラバーのようなバンパーを備えており、タフネスを強調するものだ。本機はIP68防水が謳われているのだが、落下耐性については特に謳われていない。とはいえ、この筐体なら持つ高さから足元に落ちただけで壊れるようなことはまずないだろう。
画面は1,080×2,340ドット表示対応の6.5型と平均的ではあるのだが、本体サイズは85.6×176×14.9mm(幅×奥行き×高さ)とかなり大柄。今やベゼルを極細にするといったデザインのほうが流行っているのだが、本機はそのトレンドを逆行するものだ。とはいえ、これによって堅牢性を確保しているのは間違いない。重量も308gと、スマートフォンを持っているというより、モバイルバッテリを持っている雰囲気だ。
ちなみにバッテリは6,000mAhとかなり大容量。後述するが、本機にはMediaTekのDimensity 700というミドルレンジ向けのSoCが搭載されているため、ゲームをしない通常の用途であれば2日程度は持つだろう。
このほかUniherzならではのユニークな機能としては、赤外線リモコン機能が挙げられる。プリインストールされているリモートコントロールアプリを使えば、TVやエアコンなどを操作できる。Jelly 2やTitan Pocketにも見られた機能だが、手元にスマートフォン1台あればほとんどの家電のリモコンを探さなくて済むようになるのは便利だ。
なお、有線インターフェイスはUSB Type-Cのみで、ラバーのカバーがついている。3.5mmステレオミニジャックはないが、防水のため省いたと考えるのが自然だろう。
生体認証については顔認証のほか、電源ボタンに統合された指紋センサーを搭載。この数日の試用では、指紋センサーの精度に不満を感じることはほぼなかった。
4,800万画素出力可能なSamsung GM1センサー採用。性能も十分
Uniherzのこれまでのスマートフォンは他の特徴が強かったため、カメラの性能についてはあまり強調してこなかった。これはTickTockも共通なのだが、調べてみたところ、背面のメインカメラのセンサーにSamsungのGM1(S5KGM1)が使われていた。発表は3年前なので枯れたセンサーではあるのだが、一応はプレスリリースがなされるほどのハイエンドモデルで、ソフトウェア補完により8,000×6,000ピクセルの撮影、標準では3,968×2,976ドットの出力が可能だ。
いくつかの作例を挙げるが、屋外での撮影のクオリティは申し分ない。もう少し鮮やかに味付けしても良かったのではないかと思えるが、ほぼ素のセンサーの絵ということだろう。ただ、Jelly 2やTitan Pocketのように冷色寄りにならないし、コントラストも極端ではなく自然な仕上がりである。
Jelly 2やTitan Pocketに使われているOmniVision「OV16880」が1/3.06インチ、GM1は1/2インチとかなりの差があるが、実際にはTickTockは全体的にダイナミックレンジが広い印象。とは言え、TickTockは暗所を持ち上げた分ややノイジーな印象で、この辺りはどんぐりの背くらべ程度でしかない。
背面にもう1つのカメラがあり、こちらはSamsungの「S5K4H7」だと思われるものの、カメラアプリから明示的に利用できず、ボケといった撮影機能もないので深度測定用とも思えず、用途は不明。前面カメラのセンサーはOmniVisionの「OV8865」である。
カメラの動作はキビキビしており、書き込みに時間を要したりすることは皆無なため快適。画質や機能ではもう一声欲しいところだが、自然な写真がサクッと撮れればOKという人なら、TickTockでも十分に応えられる。
性能については、Antutu Benchmarkを実行してみたが、314,916というスコア。CPUは94,023、GPUは69,930という結果は、ほぼアッパーミドルだと評していい。さすがに重い3Dゲームをプレイするのはやや力不足だが、カジュアルな3Dゲームならまったく問題ないレベル。一般的なWebブラウジングなどで不足を感じることはまずないだろう。
ちなみに、TickTockはUniherz初の5G対応端末。対応バンドは1/2/3/5/7/8/12/20/25/28/38/40/41/66/77/78と、日本での利用に必須のn77をきっちり含んでいる(技適ももちろん取得)。ミリ波はさすがに対応していない。Uniherzにおける今後の5G端末の最初の布石だと捉えて間違いないだろう。
他人とは一味違うスマートフォンがほしいユーザーに
これまでのUniherzの尖った製品などと比較すると、TickTockはパンチに欠ける。先述の通り、「小型」や「ハードウェアキーボード」といったキーワードを前に、機能が限定的なセカンドディスプレイに価値を見いだせるユーザーはほんの一握りだろう。メイン端末として考えた場合、厚みや重さもネックとなってくる。
つまりTickTockは、あえてサブディスプレイで時間や通知を確認するぐらいが楽しい、あえて重い端末を手にするからこそ満足できる、高い堅牢性で守りたいデータがあるといった価値観を持つユーザー向けなのだ。今あるスマートフォンはどれも一緒でつまらない、他人と一味違うスマートフォンを使いたいと思うユーザーにこそ、手にしてみてほしい端末だ。
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