幹細胞を使用して心臓組織を3Dプリント–スタンフォード大

CNET Japan

 3Dプリンターは、自動車や住宅、さらには食品を作る方法までをも変えている。そして、スタンフォード大学の科学者らの取り組みによって今度は、新しい臓器を患者に移植する方法を変える可能性がある。

実験器具を見つめる人物
提供:Stanford University/Andrew Brodhead

 Mark Skylar-Scott氏と同氏が率いるバイオエンジニアリングのチームは、生きた心臓組織の3Dプリントを可能にする手法を開発している。その目的は、心臓弁や心室といった、患者とともに実際に成長できる心臓の重要な部位をプリントする能力を、いつの日か実現することにある。

 米国では100人に1人近い子供が、先天性の心臓欠損を有する。移植を受けることは可能だが、20~30年後に移植物に対して体が拒絶反応を起こす場合がある。患者自身の細胞を使用した新しい臓器のバイオプリンティングは、そうしたケースを低減する可能性がある。

 この手法は、生体細胞を使用して臓器のような構造を構築する、バイオプリンティングの1例である。現代のバイオプリンティングは新しい概念ではないが、一般的に時間のかかるプロセスだ。通常は、細胞を一度に1つずつプリントしなければならず、1秒間に1000個の細胞をプリントしたとしても、1つの人間の心臓を作るのに1000年以上の年月がかかる。

 Skylar-Scott氏と同氏のチームは、オルガノイドと呼ばれる数千の細胞からなるクラスターでプリントすることにより、このプロセスを加速化させる方法を開発した。「それらを数百万個凝結させることによって、実質的にヒト幹細胞のマヨネーズのようなものを構成し、それをプリンターでプリントできる」(Skylar-Scott氏)。

 プリントされた細胞は、一般的な組織の形状をしていて、血管構造をその中にプリントすることが可能だ。

3Dプリントされた細胞に血管を直接書き込む様子
3Dプリントされた細胞に血管を直接書き込める
提供:Stanford University/Andrew Brodhead

 同チームは既に、人間の血管に似た管状構造をプリント済みで、この構造は実際に自ら液体を送り出すことができる。次のステップは、既存の心臓に移植できる心室のような、より大きな構造をプリントすることだ。

 Skylar-Scott氏は、わずか5年のうちにこの手法を使用してプリントした心臓弁を人間の患者に移植できるようになると考えていると述べた。一方で、心臓全体がプリントできるようになるまでには少なくとも20年はかかりそうだ。

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この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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