盗伐が増加も警告出さない林野庁 – 田中淳夫

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秋田県湯沢市で盗伐が起きた、という情報を得た。すでに“犯人”業者は特定されているようだ。

そして、また宮崎県からも100ヘクタール単位の盗伐が確認されたという連絡も受けた。串間市を中心に広範囲に行われていた。こちらも業者はわかっているのだが、多くの人が出した被害届を宮崎警察は受理されない。それを却下した警部の名前もわかっている。仕方ないので民事で訴えたが、すると「盗伐」ではなく「誤伐」扱いされて、賠償金の額は、1本あたり400円程度になってしまう。50~60年育てた木が400円!
一方で、宮崎地検が動き出しており、警察抜きで実況検分を行う動きもある。警察が受理しなかった被害届を地検が取り上げたとしたら、極めて珍しいことだろう。

盗伐は、今も治まる気配がない。わずかな業者が告発されたものの、それぐらいで止まらないほど、業界のシステムに組み込まれているのだろう。多いのは九州とされているが、さらに東北、北海道へと広がりを見せている。

それにしても、これほど広がっている盗伐を止めないどころか警告も出さない林野庁を始めとする行政官庁に失望する。そして林業を専門とする業界紙誌も、まったくと言ってよいほど触れない。仕事放棄に等しい。いや盗伐者と同じ穴のムジナだからか。

暗澹たる気分。SDGsだ、地球環境だというわりには、森林環境よりは目の前の金なのだろう。

そんなときに、こんな記事を読む。日立の研究なのだが、熱帯雨林の違法伐採を見つけるシステム設計を手がけているというのだ。それはアメリカの環境NGO、レインフォレスト・コネクションとのコラボだ。

日立、熱帯雨林での違法伐採を防ぐ「監視システム」開発

これまでも盗伐発見のために衛星画像を使うとか、なんだかんだと研究はされているが、映像だと伐採跡地を見つけることはできるが、後の祭り。盗伐にあった場所は見つけられるが、それは伐られてから発見するわけで手遅れ。犯人探しをしても、切られた森はもどらない。
だが、ここで開発されたシステムは、音で探知しようというところ。音ならば……。

チェンソー、トラック、銃声……さらには森の動物の鳴き声までをAIで分析して、違法伐採業者の侵入を探知する。そして、すぐにしかるべき機関に通報するという。

「最大の課題の1つは、人びとにできるだけ早く森の中にある脅威に気付いてもらうことです。日立は、森の音が私たちに脅威を知らせてくれるようにしてくれました。チェーンソーや銃を持った人が森に踏み入ったり、トラックが乗り入れたりすると、動物たちの行動が変わり、森の中でいつも起きている音とは違う音が生じます。非常に繊細な形で、動物たちが自分たちの感情や考え、感覚を表現するだけでなく、周囲で何が起きているかを伝えるのです。こうした現象を察知する上で、人工知能を利用することが重要なのです」(ホワイトさん)

違法伐採者が森林の下見に入ったときの音を検知するのだという。森の住人が入るのとは音が違うのだろう。膨大な森の音を収集して、AIで森に危害を加えそうな人の侵入を音で聞き分けるのだ。

もちろん、これは熱帯雨林に合わせた仕様ではあるが、理論的には日本の森でも応用できそうに思う。むしろスギやヒノキの一斉林の場合は、音の種類も少なめで簡単ではないか。ぜひ開発してもらいたい。

もっとも、森を守る意識高い系の林業関係者がどれだけいるのかが問題だけど。装置の設置をしぶる林業家に、そもそも山に関心のない山主。通報があっても動かない行政や警察……なんてのを想像してしまう。現場に足を運ぶのが1週間後とかだったら、あまり意味がない。

それでも、予防効果はある。探知したら自動でサイレンを大音響を流すとか警告を放送するなど、対応も自動にすれば盗伐が始まる前にストップをかけられるかもしれない。

日立よ、小型原子炉をカナダから受注するよりも、こちらの研究の方が価値があるぞ。

パプアニューギニアのジャングル伐採跡。

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