小林陵侑 不穏な空気変えた度胸 – 企業法務戦士(id:FJneo1994)

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今回の冬のオリンピック。日本選手団にとっては決して良い流れではなかった。

スピードスケートで圧倒的な期待を背に登場した高木美帆選手が最初の種目でメダルを逃す。

ソチから8年間、一時は世界で圧倒的な”女王”の地位を築いていた高梨沙羅選手にも金メダルの女神は微笑まず、再びの4位。

スノボのスロープスタイルでは、予選の滑りを見る限り「誰もがメダル間違いなし」と確信したはずの村瀬心椛選手が、決勝ではエアの着地が最後まで決まらずまさかの10位。

そしてモーグルでは男子こそ堀島行真選手が4年越しのリベンジで銅メダルを掴み取ったものの、予選から決勝まで好調をキープしていた他の2選手は不可解な判定やストックが折れるアクシデントに泣かされてファイナルに進めず。

この日曜日、結果的には「メインイベント」となった競技と平行して行われていた女子のモーグルでも、日本勢は世界ランキング1位の川村あんり選手を残して決勝1回目で早々と敗退し、その川村選手も、ターン技術よりも「スピード」のスコアの比重が相対的に高くなった今大会の傾向*1を前に、決勝のスコアは伸び悩んだ。

競技のスペックが確立され、通年で世界中を転戦する中で、選手間の力関係もある程度見えてくる夏季大会の種目とは異なり、冬季大会は、ごく一部の種目を除けばその時々の環境にコンディションが大きく左右されるうえに、五輪に照準を絞って臨んでくる選手も多く、前シーズンまでの成績は何の担保にもならない。

だから、前評判では「金メダル候補」といわれても、結果を残せずに敗れ去る日本人選手たちは過去にも多くいたし、今大会も出だしを見る限り、そんな流れになっても全く不思議ではなかった。

だが、スキージャンプのノーマルヒルで、小林陵侑選手が見せた1回目の大ジャンプは、そんな不穏な空気を全て吹き飛ばしてくれた。

前日には高梨選手が苦しみ、この日もW杯ランキング上位の男子選手たちが軒並み失速の憂き目にあった「風」と独特の形状のジャンプ台を”普段通り”に克服した卓越した技術と度胸。

いつもなら怖くて目をそむけたくなる「2本目」のジャンプもきっちりと決めてくれた先に飛び込んできたのは、

長野五輪以来、24年ぶりのスキージャンプ競技での日本人優勝

という吉報だった。

おそらく明日の新聞各紙の見出しには、「金メダル第1号」の文字が躍り、この日の競技結果の後解説から選手が歩んできたこれまでの道のりまで、沸き立つ報道はしばらく続くだろうから、それはそれで楽しみにしている。

ただ、今日自分が一番衝撃を受けたのは、つい昨日のことのように覚えているあの船木和喜選手のラージヒル優勝から既に四半世紀の時が流れていた、ということ。そして、その間流れた歳月は、「船木選手の前」、自分にとっては生まれる前の歴史上の出来事でしかない「日の丸飛行隊」の札幌から長野までの間に流れた歳月とほとんど変わらない、ということだった、ということは、忘れずに残しておきたい今夜の記憶として、書き残しておくことにしたい。

*1:上村愛子選手の例を出すまでもなく、採点競技ゆえの不可解さはどうしても付きまとうのだが、キングズベリー選手が敗れた男子といい、ターン点で差を付けられずエアの大幅な減点で川村選手がメダル圏外に消えた女子といい、長年見てきた者にとっての違和感はこれまで以上に大きかったような気がする。

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