幅わずか0.5mmという「粗塩1粒サイズ」のカメラをアメリカのプリンストン大学とワシントン大学の共同研究チームが開発しました。この超小型カメラは、体積が55万倍のレンズを装着したカメラと変わらない画質の写真を撮影できます。
Neural nano-optics for high-quality thin lens imaging | Nature Communications
https://www.nature.com/articles/s41467-021-26443-0
Researchers shrink camera to the size of a salt grain – Princeton University School of Engineering and Applied Science
https://engineering.princeton.edu/news/2021/11/29/researchers-shrink-camera-size-salt-grain
今回発表された新型超小型カメラは「Metasurface(メタ表面)」という技術を採用しており、160万本も埋め込まれたヒト免疫不全ウイルス(HIV)とほぼ同等サイズの極小円柱によってレンズと同等の働きをするように設計されています。この円柱はそれぞれ1つ1つが異なる形状をしており、各円柱は(PDFファイル)光アンテナのように機能するように、機械学習ベースのアルゴリズムを使って形状が最適化されているとのこと。
従来の超小型カメラで撮影された写真(左側)と、今回開発された超小型カメラで撮影された写真(右側)を並べた画像が以下。従来の超小型カメラで撮影された写真は視野角が限られた上に像自体もぼやけて歪み、色味も崩壊してしまっていますが、今回開発された超小型カメラで撮影された写真は一般的なカメラで撮影した写真を多少劣化させた程度にとどまっています。研究チームによると、フレームの端部分が少しぼやける点を除けば、体積が55万倍のレンズを使ったカメラと同等の写真が撮影できるそうです。
今回のカメラは光学面の設計と画像を生成する信号アルゴリズムの設計を統合的に処理した点が革新的だそうで、従来のメタ表面カメラは品質を求めた場合、光量などを人工的に整えた理想環境が必要でしたが、今回のメタ表面カメラは自然光環境下においてもパフォーマンスを発揮できるとのこと。研究チームはこの超小型カメラを、内視鏡検査や脳イメージングに活用できるだけでなく、このカメラ複数台を物体表面に分散配置することによって、新しい形の撮影が可能になると語っています。
今回の研究に参加したプリンストン大学のEthan Tseng氏は、「この小さな構造体を設計して実際に構築し、望み通りのパフォーマンスを出させるというのは非常に困難でした。高視野角のRGB画像を撮影するという特殊なタスクのために何百万ものナノ構造をアルゴリズムで設計するという手法は、これまでに行われたことはありません」とコメント。同じく研究に参加したワシントン大学のShane Colburn氏は異なる形状のナノアンテナ構造を自動でテストするシミュレーターを作成する際に、メタ表面によって生成される画像を高精度で近似した画像を出力するモデルを開発したとのことで、「ナノアンテナの数が多い上に光との相互作用も複雑なため、シミュレーションには膨大なメモリと時間が必要でした」と語っています。
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