木下元都議 事故未公表のナゼ – 毒蝮三太夫

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共同通信社

東京都議会の木下富美子議員、やっと辞めたね、これで元議員になったよ。自分がした行為を冷静にかえりみれば、どう考えたって都議会議員にふさわしくないんだからすぐに辞職するべきだったけど、今回の騒動が表沙汰になってからかれこれ4ヶ月も都議に居座っていた。

木下元議員って選挙期間だった今年7月に免停中に人身事故を起こしただけでなく、他にも色々とやってたんだろ。ちょっと編集部、まとめてくれる?

編集部)まず、2018年から今年2021年までの3年間で、免許停止処分が5回。主な違反の内訳は「速度違反2回」「携帯電話使用2回」「信号無視1回」「一時停止無視1回」とのことです。さらに今年5月から6月の間に無免許運転を計6回していたことも警視庁の捜査で判明してます。ですので今年だけで無免が通算7回です。

違反の常習犯の確信犯だよ。免停5回に無免が7回、これもう役だけで倍満超えて役満のハコテンだ(苦笑)。

辞職表明の記者会見では「私の交通法規に対する遵法精神が弛緩していた」って話してたけどさ、免停っていうのは無免許状態だからね。免許不携帯とは別物で重い罪なんだ。その重いルールを何度も破ってたんだから「弛緩」のレベルじゃないよ。正確に言うなら「無視」。交通法規を交通放棄したんじゃないのかね?

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それにしても7月に起こした事故って、免停中に人身事故って聞くと大まかだけど、詳しく聞くとどうにもひどい事故なんだよな。ちょっとさらってみてよ。

編集部)はい、東京都議選の選挙期間中である7月2日、場所は板橋区の「高島平二丁目交差点」で、木下元議員の車が矢印式信号の右折表示が出ても進まなかったため、後方にいた50代男性の運転する車がクラクションを鳴らしたと。すると木下元議員の車が勢いよくバックして後方の車にぶつかり、そのあとスピードを出して直進。男性の車がそれを追いかけて、信号から200メートル先で木下元議員の車を停めたそうです。この事故で50代男性と同乗していた妻が軽傷を負いました。

これさ、信号で右折待ちしてたら、ギアを「D(ドライブ)」に入れたままブレーキ踏んで待つのが普通だよね。最近の車だと自動でエンジンが停止したりもしてる。そこから車をバックさせるって普通の動作では考えられないよ。つまり、うっかりでは起こりにくいことだよな。

これは推測になるけど、交差点で一時停止してたなら、自分の意志でギアをバックに入れなきゃ、車は後ろに走らない。しかもぶつけて謝らずに逃げたわけだろ。もはやタチの悪いあおり運転だよ。

選挙期間中の無免許運転 警視庁は公表しなくていいのか

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「選挙期間に立候補者」が「免停の無免許状態」で「当て逃げ」した、大三元でこれも役満だ。芸能界だったら即刻謝罪して謹慎、すべての仕事が無くなるよ。だけど、警察は当時この一件を公表しなかったんだよな。それが納得いかなかったな。選挙期間だからどうこうとかあるの? どういうこと?

編集部)警視庁は無免許運転を基本的に発表していないそうで、その理由は公表されていません。ただし、未発表でも警視庁記者クラブ加盟社に対しては、問い合わせがあれば、その都度対応するという・・・。

そうなの? だけどその基準は見直してもいいんじゃないか。選挙は市民の代表を選ぶ重要な機会なんだ、そこでみんなが知るべき、公表されるべき、候補者の情報が隠されたままっていうのは、良くないよ。

例えば学歴詐称してたらさ、選挙で当選したって公職選挙法違反になるだろ。ウソの経歴差し出して「サショウですけどお収めください」なんてやだよ。お車代もらってんじゃないんだから(苦笑)。

学歴詐称が選挙違反になるのは、虚偽の情報が選挙に影響を与えるのを良しとしてないからだろ。詐称は些少だって許されないんだよ。この学歴詐称と、選挙期間中に免停で当て逃げを起こしたのを黙ってたことと、どれぐらい違う? 本当のことを隠すってことでは本質は同じだよな。

だけど木下元議員は当て逃げ事故を公表せずに選挙を続けた。そして当選。当選後に事実が発覚。都議会から辞職勧告を受けた。でも本人はそれを受け入れずに議員の座に居座った。かれこれ4ヶ月モメてようやく辞職を表明した・・・。

投票前に交通違反の情報が公表されてればこうはならなかったよ。これを機会に警視庁も、選挙期間の候補者に関する情報に一定の基準をつくって、市民が不利益を受けないようにしたほうがいいよな。

あの人を選出した板橋区民は「だまされた」って感じだった。アタマ痛いよな。そうそう、こんな言葉遊びがあるよ・・・

頭、イタバシ(板橋)
目は、まるのうち(丸の内)
腹、すきやばし(数寄屋橋)
ぐっとあなたを、抱いたばし(代田橋)

BLOGOS編集部

アハハハハ、まるで痴楽つづり方狂室だね。若い人は知らないか。昔、言葉遊びで売れた四代目・柳亭痴楽(りゅうてい・ちらく)という落語家がいたんだよ。「恋の山手線」だ。駅名を折り込んだ言い立てだな。

上野を後に池袋、走る電車は内回り、私は近頃外回り、
彼女はきれいなウグイス(鶯谷)芸者、にっぽり(日暮里)笑ったあのエクボ、
田畑(田端)を売っても命がけ、思うはあの娘のことばかり。
我が胸の内、こまごめ(駒込)と、愛のすがも(巣鴨)へ伝えたい。
おおつか(大塚)なビックリ度胸を定め、彼女に会いに行けぶくろ(池袋)、
行けば男がめじろ(目白)押し・・・

と、この調子で続くの。まあ、木下元議員のおかげで板橋区民はアタマイタバシだったわけだ。そういや、裏金で理事が逮捕された日大の問題も日大板橋病院がからんでたね。そっちもアタマイタバシだね(苦笑)。

板橋って地域はちょっと地味なんだよな。江戸時代は中山道の最初の宿になる板橋宿があったけど、今現在はこれだっていう特徴がない。以前、昭和から平成にかけて板橋区長だった栗原さんと話したことあるよ。栗原さんは「板橋は水と緑を売り物にするんです」って言ってた。かつてあった荒川沿いの自然を守ってホタルの棲めるような環境にするんだって意気込んでた。

編集部)その板橋区のホタルですが、かつて栗原区長の肝いりでホタル飼育施設「板橋区ホタル生育環境館」が1993年に開館されて、ホタルの見学ができる場所となってましたが、後年この施設でホタルがどれぐらい育っているのかが疑惑になるなど幾つかの問題があって、2015年に閉館となってます。

ホタルの光も消えちゃったか(苦笑)。ホタルでもアタマイタバシだったわけだ。板橋区でホタルを飼ってた、「飼ってくるぞとイタバシク」だな(笑)。

不祥事を起こしても政治家を守る法の厚さ

結局、ああいう居座り議員が現れた時に、周りで辞めさせるって難しいの?

編集部)都議会で議員辞職勧告がされても法的拘束力がありません。あとはリコール(解職請求)という手段がありますが、地方自治法により都議就任から1年以上たたないと実施できません。それも選出された選挙区の有権者のうち3分の1の署名を集め、都の選挙管理委員会に提出し、住民投票を実施して、過半数を獲得すれば成立・・・という中々手の掛かる道のりです。

この何年も不祥事を起こした政治家が出てくるたびに、すぐには辞めさせられない、議員の立場を守る法の厚さを感じるけど、誰がどう見たって「辞めたほうがいい」「税金ドロボウ」みたいな議員をすぐに辞めさせられないってもどかしいね。

ちょっと頭下げて言い訳してれば、段々とほとぼりが冷めて、そのうち何とかなるだろうみたいな風潮って、この10年ぐらいの間にやたらと目立つようになった。最近の自民党がそういう悪しき例を繰り返してきたのが広まっちゃったんだな。

居座っていた木下元議員がようやく辞職を表明したのは、小池都知事がウラで動いたからなんじゃないの? 元々は都民ファーストから選出された議員だし、ボスの小池さんには製造者責任があるし、グズグズしてると小池さんに飛び火するからね。「木下さん、あなたが議員を辞めたら私が仕事を世話するから、そろそろ都議会とソーシャルディスタンスを取りなさい」なんてね(苦笑)。

まあ、こういう居座り議員がまた現れないように、みんなで考え直さないとな。議員の資格も運転免許みたいにするか? 「わいろ10点」「違法行為3点」「不倫2点」「議会欠席1点」って、違反点数がたまると議員が免停になる(笑)。

瀬戸内寂聴さんが亡くなられたけど、寂聴さんがよく話していたのが「忘己利他(もうこりた)」。己を忘れて他に尽くすってこと。天台宗の開祖である最澄の言葉だって。政治家こそ誰より率先してこの忘己利他であるべきだよ。政治家の理不尽な居直りは「もう、懲りた」ってことだ(苦笑)。

(取材構成:松田健次)