エジプトといえばピラミッド。世界には196もの国があれど、これほどイメージが確立されている国も他にないのではないか。「ブルガリアといえばヨーグルト」「モーリタニアといえばタコ」「鳥取といえば砂丘」らを凌ぐ強力な方程式……それが「エジプト=ピラミッド」。
なんとなく砂漠の真ん中にありそうなピラミッドだが、実はカイロ中心部からほど近い場所に位置しているものもある。そしてピラミッド周辺には “ピラミッドが見える” ことをウリにしているホテルがいくつか存在しているらしいのだ。
・思い切って予約
クチコミなどを参考に、私が予約したのは『ギザ ピラミッズイン』というホテル。
ちなみにギザ地区内には「ピラミッド」の名を冠するホテルが無数に存在しているのだが、ビックリするほどピラミッドから遠いものがほとんどなので注意が必要。本当にホテルからピラミッドが見えるのか、事前によ〜く確認するべし。
フロントには高クチコミの証が誇らしげに掲げられていた。
館内にはエレベーターがなく、おまけに私の部屋は最上階らしい。これで部屋がバッチかったら救いようがないが……祈るような気持ちで階段を登る。
お、うおおぉぉぉぉぉ!!!!! よかった、けっこう広くて綺麗だ!
……と思ったらもう1部屋あったぞ!!!! ダブルベット2つに、よく見るとダイニングにはソファベッドが3台。7人部屋を1人じめということになる。他の予約との兼ね合いもあったのだろうが、なんだか申し訳なく思えてくるほど立派な部屋だ。
もちろん水圧バッチリ、シャンプー等のアメニティも完備!
・あの窓の向こうに……?
さて事前情報によると、部屋によっては窓からピラミッドが見えるらしい。
あの窓の向こうに人生初ピラミッドが……?
…………なワケないよね、向かいのビルが見えただけでした!
と、右に視線をやると……
アーーーーーーーーーーーーッ人生初ピラミッド!!!!!
このような形の初対面は想像もしていなかったが、ともかく部屋からピラミッドが見えることには違いなかった。なおピラミッド周辺エリアはラクダやロバが多く歩いており、全体的に動物のニオイが漂っているのはご愛嬌。
・最高のバルコニー
この窓からの景色が「ピラミッドが見えるホテル」の全貌……では、もちろんないので安心してほしい。ホテル最上階には24時間利用可能なバルコニーがあり、好きなだけピラミッドを眺めることが可能なのだ。
ウワァ〜! ピラミッド、かなり近いな〜! 非常に幻想的である!
私はこの段階ですでに「ここに泊まってよかったな」と感じていたのだが、ホテルの人によると毎日19時〜21時の間は “ピラミッド・ナイトショー” が開催されるらしい。他の宿泊者たちも続々とバルコニーに集まってきた。
ちなみに宿泊中のソフトドリンクは全て無料。ピラミッドを眺めながら食事したり、なんならうたた寝しちゃっても全然OKなのである。ほとんど “王族の生活” だ。
19時を少し過ぎて始まったショーは、「むか〜しむかし……」といった口調の男女がピラミッドの歴史を語る(英語)という、さながら朗読劇の様相。ときおり “ジャジャーン!” と大きな効果音とともにピラミッドがライトアップされ、観客たちはサッとカメラを構える。
が……ライトはすぐにトーンダウンし、再び「むか〜しむかし……」の語りが始まる。ジャジャーン! むか〜しむかし……ジャジャーン! むか〜しむかし…………この繰り返しで2時間持たせてしまったのだから、やはりピラミッドの画力はスゴイ、ということになるのだろう。
・エブリタイムピラミッド
朝、目覚めると即バルコニーへ。
朝食(宿泊料に込み)はバルコニーまで運んでくれる。
まさに王族の朝。
カイロは年間を通してほとんど雨が降らない砂漠気候。明け方のピラミッドはやや霞んで見える。
それが正午を過ぎると徐々にクッキリし始め……
個人的には夕暮れ時が最もピラミッドが美しく見えると感じた。心なしかスフィンクスの表情も違って見える。
……なんか今日1日で一生分のピラミッドを見た気分だ。個人的に『ギザ ピラミッズイン』の満足度は、近年泊まったホテルで稀に見る高さであった。ちなみにピラミッド周辺は悪質な客引きが多く、とてもじゃないが立ち止まってゆっくりピラミッドを眺められる状況ではない。
一生のうちでそう何度も来れるところではないエジプト。ピラミッドをじっくり拝みたいなら “ピラミッドの見えるホテル” は確実にチョイスすべきだと思う。なお今回私が支払った宿泊料は1泊約5000円(時期によって変動アリ)。けっこう安い気がするのだが……どうでしょう??
執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.