株式会社サムライインキュベートは、東京都が推進する「5G技術活用型開発等促進事業」において、スタートアップを支援する開発プロモーターとして採択されている。2021年11月10日、同社は最長3ヵ年度の長期支援で5Gイノベーションの街中実装、事業化を推進するアクセラレータープログラム「GO BEYOND DIMENIONS TOKYO」を始動することを発表した。その記者発表会の様子を紹介する。
■サムライインキュベートに大いに期待
開会挨拶後、東京都産業労働局商工部技術連携担当課長 添田心氏による挨拶が録画VTRで行われた。
東京都産業労働局で実施している「東京5Gブースターズプロジェクト」(5G技術活用型開発等促進事業)は、東京都と民間事業者が協働し、5G技術を活用した製品、サービスを開発するスタートアップを多面的に支援する事業である。イノベーションの促進や5Gを活用した新たなビジネスの確立を目指して、昨年開始した。東京都と協働してスタートアップを支援する開発プロモーターを3社採用し、10数社のスタートアップが事業化を目指している。
今年度、さらにスタートアップ支援を加速するべく、新たに3社の開発プロモーターを採択した。その1社がサムライインキュベートで、東京都としてはサムライインキュベートの強みを存分に活かしたスタートアップ支援を展開したいとの考えだ。
新型コロナウイルスへの対応では、日本のデジタル化の状況が世界に遅れをとっていることが顕在化された。東京がこの先も持続的に成長していくためには、新しい日常を定着させ感染拡大の防止、それと社会経済活動の両立が必要となる。
本事業を通じて、サムライインキュベートを始め、開発プロモーターの支援の元、5Gを武器に新たなビジネスにチャレンジするスタートアップがこの東京で活躍することを期待している。
■収益モデルの実証や本格ビジネス立ち上げの検証まで行いたい
続いて、サムライインキュベート Director Enterprise Groupの山中良太氏が、本プロジェクトの3ヵ年度の構想についてプレゼンを行った。
サムライインキュベートは、シードVCとして立ち上がって、VC事業と大企業や自治体向けのオープンイノベーション事業という2つの事業を展開している。VCのノウハウを使いながら大企業や自治体の課題を解決していく、この2つを掛け合わせることで今までは起きなかったような、スケールの大きい抜本的なイノベーションを作ることができることが同社の強みとのこと。
これからのイノベーション創出には、エコシステムが重要になる。サムライインキュベートは京急電鉄とイノベーションエコシステム「AND ON SHINAGAWA」を運営しているほか、広島県では「D-EGGS」というプロジェクトを推進している。このプロジェクトは年間約5億円ほどの予算を割いており、日本最大級のアクセラレータープログラムである。単純にシーズを創出するだけでなく、地域の事業者の方々と一緒になって事業成長をさせたり、高専をはじめ地域の教育機関と連携して人材を育成していくところが特徴だ。
5Gで目指すビジョンは、「AI・データ活用のケータイ化」であり、誰もがどこでも気軽にAI・データ活用によるサービスを利用できるようにするというものだ。5Gの超高速・大容量、超低遅延・高信頼、多数同時接続という利点を活かすことで、必要な処理をクラウド側で行えるようになるため、エッジのコストを下げることができる。
今、一般的に5Gの機能として実装されているものと、これから実装されるものがあり、3GPPリリース15が今実装されているもので、超高速大容量は実装されているが、それ以外の超低遅延・高信頼や多数同時接続といった機能が実装されるのは、2022年頃に実装されるリリース16からとなる。
事業の全体像は、5Gイノベーション事業の卵を生み出し、育てていく営みを波状的に実施するというもので、3ヵ年度という期間を上手く利用して、収益モデルの実証や本格ビジネス立ち上げの検証まで行う予定。また、京急電鉄やジェイアール東日本都市開発、清水建設、三菱地所といった「街中実装パートナー」が事業開発に必要な環境やアセットを提供することで、生活者に確実に届く事業開発を担保しているところが特徴だ。
開発支援テーマは、「防災・減災・災害復旧」「インフラメンテナンス」「子育て・高齢者・障害者等の支援」「国際的な観光・金融都市の実現」の5つに分かれている。募集の締め切りは12月10日で、採択スタートアップの発表は2022年1月予定で、2022年夏頃には成果発表会を開催する予定である。
■街中実装パートナーによる様々な取組み
「街中実装パートナー」4社がプレゼンテーションを行った。
京浜急行電鉄株式会社 広報・マーケティング室 主査の羽根一貴氏は、京急の事業と所有するアセットを紹介し、同社のオープンイノベーション戦略は、「デジタル・テクノロジーによって、移動自体を便利にしていくことのみならず、その目的となる、多彩で豊かな顧客体験を生み続けていく」ことであると説明した。
株式会社ジェイアール東日本都市開発 常務取締役 経営企画部長の桑原健氏は、同社の事業エリアと4つの事業分野「開発管理事業」「ショッピングセンター事業」「オフィス・住宅事業」「物販・飲食事業」を紹介した。また、同社の企業姿勢は「高架下から未来のまちづくりを。」であるとし、5G事業について提供可能なアセットや同社が考える方向性を解説した。
続いて、清水建設株式会社 フロンティア開発室ベンチャービジネス部 主査 加藤大輔氏が、同社の会社沿革とデジタル社会実装に向けた取り組みの加速について解説した。また、オープンイノベーションの推進として、10年間で予算規模100億円にもなるベンチャー投資枠が設定されていることやデジタルゼネコンを標榜していることも紹介した。
デジタルツイン構築を目指す建物OS「DX-Core」やニューノーマル時代の新しいオフィスの提案「SHIMZ CREATIVE FIELD」といった取り組み、高測位精度の位置情報システムを活用したデジタルロケーションサービスについても解説し、様々な分野での共創を推進中だとした。
最後に、三菱地所株式会社 管理・技術統括部 統括 花岡大輔氏が、同社の事業領域および同社が目指すまちづくりについて説明した。同社が目指すまちづくりとは、「人」の生活基盤である街や空間を長期的な視点で捉え、社会の課題を解決するものだが、最近は個人のマインドが多様化し、デジタル中心の顧客体験が増えたことで、その前提が大きく変わり、個人にとって「リアルがデジタル世界の一要素」になっていると同氏は指摘した。
多様な考えを持つ一人一人に「まちと関わる意味」を明示できなければ、価値を提供できないことになる。そこで同社は街での体験がデータとなって蓄積・最適化されることで、より良い体験が生まれ続ける「まちのUX Loop」で街とユーザーとの関係を豊かにする「三菱地所デジタルビジョン」というコンセプトを推進している。
三菱地所デジタルビジョンで目指す世界では、オンラインとオフラインが融合した新しいまちづくりが必要になり、5Gが重要なファクターとなる可能性がある。そこで同社はローカル5Gを丸の内エリアに整備し、生きた環境で実証を行うことで、目指すまちづくりに繋げていきたいと説明した。具体的には丸の内エリアにさまざまな特性を持つ7つの実証拠点を構築し、参加事業者には専用の5G端末を貸与する予定である。
「GO BEYOND DIMENSIONS TOKYO」の最大の特徴は、東京を中心とする街中に施設・インフラ・モビリティ等をはじめとしたリアルな実証フィールド・アセットを有する複数の大手企業が「街中実装パートナー」として参画し、スタートアップと事業共創を推進していく仕掛けを組み込んでいることだ。
同プログラムは今後、5Gソリューションの出口となる大手企業のアセットを活用することで、スタートアップの成長支援を加速させ、ニーズ起点の実用性・実現性の高い5Gイノベーションを推進していくとしている。
■「GO BEYOND DIMENSIONS TOKYO」公式サイト
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