日本経済新聞の記事によれば、大手百貨店三越伊勢丹ホールディングスは、百貨店事業中心から不動産・金融事業へと事業の軸足を移すようです(写真も同紙から)。
百貨店事業は、コロナ禍で加速した消費者のネット販売へのシフトや、ファッショントレンドの低価格化の影響もあり、収益が上がりにくい不安定な事業です。
それに対し、不動産事業は立地が良ければテナントからの安定した家賃収入が見込め、金融事業も過去に蓄積した優良な顧客基盤にクロスセルを行うことでシナジー効果が見込めます。
百貨店が自社による店舗運営を諦め、テナントに賃貸する「大家さん」に変わっていけば、パルコやルミネのような専門店街があちこちにできることになります。
また、百貨店はショッピングをするだけのところではなく、金融サービスや資産運用アドバイスを行う窓口となり、証券会社や銀行と競合することになります。
更に、ホテルやフィットネスクラブ、エステサロンのような「コト消費」にビジネスを広げることができます。
伊勢丹のような特色のある百貨店が外部のテナントによって味気ない商業施設に変わっていくのは寂しい気もします。伊勢丹は、子供の頃は特別な時に行くあこがれのデパートでした。
とは言え、百貨店が不動産ビジネスのウエイトを高めるのは、理にかなった戦略です。不安定な本業を補完するメリットがあるからです。
これは、デパートだけではなく、企業経営一般に学ぶべき経営判断です。経済環境の変化が大きくなればなるほど経営リスクも高くなります。不動産事業をもう一つの事業として立ち上げれば、安定した経営に資することになります。
企業経営も資産運用と同じで、分散による経営資源の配分が長期で成果を上げるために極めて大切なことなのです。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2021年11月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。