インターネット通販が当たり前になり、今や商品を販売する側も、SaaSなどを活用することで手軽にECサイトを構えることが可能になった。システムの構築や運用に手間やコストをかけず、「どのようにして商品を売っていくか」という本来の業務にフォーカスできるのは、小規模事業者にとっては大きなメリットだ。
しかしそれでも、商品情報や顧客情報を扱うECサイトの性質上、セキュリティリスクはどうしてもつきまとう。もしも個人情報が漏洩すれば、事業の存続にもかかわる致命的な結果を招きかねない。
オリジナル家具の製造を手がけ、実店舗やネット通販による販売で急成長を続けるFlavorでは、まさにそうしたセキュリティ上の危機意識から、インテル vProプラットフォーム搭載の「Lenovo ThinkPad X1 Carbon」を導入した。その決め手について「PCは武器であり、お金のかけどころ」だと強調する同社代表取締役の山本氏。高いパフォーマンスとセキュリティを両立するノートPCに、何を期待し、どんな成果を挙げたのか、そのポイントをお伺いした。
ユーザーのことを考えた「ものづくり」を支えるノートPCとは
かつて勤めていたWeb制作会社でコンテンツ制作やSEOのテクニックを身に付け、山本氏がそのかたわら個人的にオープンしたECサイトが、現在のFlavorのメインサイトである「Re:CENO(リセノ)」だ。当初は家具のセレクトショップとしてスタートし、2006年から半年程度で軌道に乗せた。その後はオリジナル商品の企画・製造なども手がけ、従業員数50名、売上にして20億円規模にまで拡大。近年はメディア事業にも力を入れており、自社のインテリア製品に関する情報をブログ記事や動画で発信している。
同社が家具を通じて提案しているコンセプトは「不の解消」だ。機能に無関係な細かなデザインに凝るのではなく、普段の生活のなかで使う家具として、ユーザーが抱えている悩みを解決するようなものづくりにこだわっている。
「たとえばソファは座るものと想定して作られがちですが、寝転んでダラダラできるのがソファの醍醐味だと思います。そのためには奥行きがあって、柔らかいクッションであってほしい。椅子も背が高くて座面が小さいと雰囲気はカッコいいけれど、椅子の上であぐらをかいたりする人もいるわけで、それも考えた作りにした方がいい」と指摘する。ユーザーの実使用シーンをイメージしたものづくりが、人気を集める理由の1つかもしれない。
ただ、人気が高まり顧客が増え、商品ラインアップも拡大していくことで、自分たちが管理することになる個人情報や商品情報も当然ながら膨大なものになっていく。セキュリティの隙が少しでもあれば、そこを突かれて大規模な漏洩につながる恐れもあるだろう。
だからといってセキュリティを厳重にするだけでは、業務に足かせを課すだけになってしまう可能性もある。同社ではコンセプトを大切にしていることもあり、経営にかかわる部分だけでなくメディア運営や家具のデザインも山本氏の仕事。1人で多様な業務を効率的にこなしていくための「支え」となるものが必要だ。同氏にとってはそれが、新たに導入したノートPC「Lenovo ThinkPad X1 Carbon」だった。
データが分散してしまう2台体制から、vPro搭載ノートPC1台に移行
山本氏の普段の業務においては、情報収集のためにWebブラウザーで20~30個のタブを開きっぱなしにするのは日常茶飯事。その状態で3Dモデリングソフトを使って家具を設計したり、動画の編集やチェックを行ったりすることも頻繁にあるという。
そのため、これまではデスクトップPCをメインマシンとし、サブ的にノートPCを用意していた。負荷の高い日常的な作業のほとんどはデスクトップPCで行い、ノートPCは在宅で仕事するとき、あるいは会議や外出で必要になったときだけ持ち運ぶ、という使い分けだ。
ところが、インテル vProプラットフォーム搭載の新しいノートPCを導入したことで、日常業務と出先利用の両方をその1台でまかなえるようになった。「デスクトップと同じように動くのが驚き」と山本氏が思わず感嘆したパフォーマンスの高さのおかげで、CPU負荷やメモリ消費の大きい用途でもストレスフリーな使い心地を実現している。
また、以前は2台体制だったために「情報がそれぞれのPCに別個に存在することになります。今回のようなオンライン会議のURLも、デスクトップPCだとすぐに受信済みメールから開けるけれど、ノートPCはメールを常に受信しているわけではないので、時間をかけて同期しないと見られません」という問題もあった。これについても1台のノートPCに統合したことで解消した。
ハイパフォーマンスなノートPCの値段は決して安くはない。とはいえ、業務に絶対に欠かせないアイテムだけに、「PCは武器であり、お金のかけどころ」と強調する。モバイル向けでありながら比較的大きめの14型ディスプレイで「テレワークでも作業しやすい」ことや、外部ディスプレイとの接続がケーブル1本で済むなど「拡張が容易」なこともメリットだとした。
セキュリティが破られて事業破綻する恐怖の方が大きい
もう1つのセキュリティについては、山本氏が特に敏感になっている部分でもある。なぜなら、情報システム部門や専属のセキュリティ担当者を設けることが難しい同社のような中小企業において、十分なセキュリティを維持するのは簡単なことではないうえに、それがビジネスの生命線にもなるからだ。
最も重要なECサイトの写真データを含む商品情報や顧客データベースなどは、信頼の置ける外部事業者のSaaSサービスを利用して、その高いセキュリティによって保護されている。が、従業員が使う社内PCは同氏自身がシステム担当として管理していることもあり、本業の忙しさの度合いによってはそこが「急所」として狙われる可能性もゼロではない。
同氏は「インテリア業界で成長してくプランは見えている」と強気だが、「それよりもセキュリティが破られてシステムが稼働しなくなり、商売が立ち行かなくなることで事業破綻することの恐怖の方が大きい」という正直な心情を口にする。
そういう意味でも、vProが持つ「インテル ハードウェア・シールド」のように、データ漏洩を引き起こすマルウェアからの保護や、データを人質にとるランサムウェアからの防御などが可能なハードウェアレベルのセキュリティ技術は、「本当に安心できる機能の1つ」と捉えている。
さらに、事業拡大にともない従業員が増えてきたことや、テレワークを導入していることなどから、今後1人1人が使うPCの管理が困難になっていく心配もある。たとえば「朝礼などで、Windows Updateを定期的に適用して、と呼びかけているものの、本当に実行できているかを確認するのには多くの手間と時間が必要」という実情もある。
こうした場面では、vProの「インテル アクティブ・マネジメント・テクノロジー(インテル AMT)」によって、「リモート管理でき、夜間のうちにアップデートして最新に保てるのは魅力」と山本氏は感じている。テレワークの状況が長期化していくことも考えると、「今後ますますセキュリティは大きな課題になってくる」ことから、プロアクティブに対処していけるvProに大きな価値を見いだしているようだ。
vProなら全従業員のリアル・リモート両方の仕事環境を満足させられる
同社のECサイト「Re:CENO」で必要となる原稿、写真、あるいはプロモーション用のブログ記事や動画など、ほとんど全ての素材は、実は同社の従業員が「全員参加」で手作りしている。そのメンバーの誰もが、普段はユーザーサポートや店舗運営など、本来の仕事をこなすなかで対応しているのだとか。
「1つの業務だけやるより、多くの業務に携わった方がビジネスの全貌が見えて、自分たちも成長できるし、何より楽しい」と山本氏。しかしそれだけに、全員がマルチに仕事をこなしていくためには、PCパフォーマンスは自然と高いものが求められるだろう。
そもそもテレワークの導入で出社7割減を達成してはいるものの、「不の解消」を目指す家具として、人のぬくもりが感じられる商品を生み出していくうえでは、従業員同士の日々の雑談から生まれる発想も大事。そのため「リアルとリモートのバランスが重要」であり、リアルとリモート両方の仕事環境を満足させる「高いパフォーマンスと、高いセキュリティを持つPCは必須」と、山本氏自身も考えている。
目標は、数年後に現在のおよそ2倍となる売上規模50億円、従業員数100名。ただし、単純に事業をスケールさせることを目的とはしていない。「オリジナル家具は強みですが、それはビジネスの本質ではない。そのうち他社に追いつかれるでしょうから」とし、それよりも「メディア事業で家具の楽しみ方を伝えること」を信条に「家具の売り上げナンバーワンではなく、家具業界のオンリーワン」を狙いたい、と話す。
「より良いインテリア環境を日本に根付かせる」ため、家具というアナログな世界で、テクノロジーをフル活用してECサイトとメディアを運営していく。その鍵を握るであろう、パフォーマンスとセキュリティの両方を高いレベルに引き上げるvPro搭載PCに、同氏は全幅の信頼を寄せているようだ。
【vProのツボ:記事一覧】
【vProイベント開催のお知らせ】
インテル vProプラットフォームのオンラインイベントが11月12日13時より開催されます。主催はインテル株式会社で、参加費は無料。
イベントでは、インテル株式会社 代表取締役社長の鈴木国正氏によるオープニングの後、セブン銀行などをはじめとするvPro活用事例の紹介や活用ポイントの紹介、さらには日本マイクロソフトによるWindows 11の紹介など、「最新の働き方」や「IT管理」に関するセッションが多数開催されます。
イベントの詳細はこちらを参照。参加希望者はウェブページから事前登録が必要です。
vProやその活用に興味のある方はふるってご参加ください。