自転車に乗る意欲は雨や気温などの気象条件にどれほど左右されるのか?

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天気がいい時に自転車で通勤・通学するのは気持ちがいいものですが、雨が降っていたり寒かったりする時は自転車に乗るのが面倒になりがちです。サイクリストの自転車に乗る意欲に天候が与える影響を調査するため、さまざまな気候帯にまたがる16カ国40都市のシェアサイクルプログラムからデータを収集し、天候とシェアサイクルが利用される頻度の関係を分析した研究結果が公開されています。

How does weather affect bikeshare use? A comparative analysis of forty cities across climate zones – ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0966692321002088

We analysed 100 million bike trips to reveal where in the world cyclists are most likely to brave rain and cold
https://theconversation.com/we-analysed-100-million-bike-trips-to-reveal-where-in-the-world-cyclists-are-most-likely-to-brave-rain-and-cold-166894

自動車や公共交通機関といった交通手段と比較して、自転車はより天候の影響を強く受けますが、それを裏付けるために行われてきた研究のデータは地域や量的な制限があったとのこと。そこで研究チームは、熱帯気候から亜寒帯気候にまたがる16カ国40都市で運用されている、公共のシェアサイクルプログラムのデータを収集しました。

今回の研究で使われたデータセットは、合計1億回近くのサイクリングデータで構成されていました。研究チームが、時間帯や気候がシェアサイクルの利用に及ぼした影響について分析した結果、特に平日のシェアサイクル利用における最も重要な変数は時間帯であることが判明。それに加えて降雨や降雪、気温の上昇といった気象条件も自転車に乗る意欲を左右するほか、天候が及ぼす影響は都市によって差があることがわかったとのこと。


研究チームによると、アイルランドのダブリンでは雨や雪の多い時間帯のシェアサイクル利用率が通常の81%に下がったほか、スペインのセビリアでは79%、同じくスペインのバレンシアでは74%に下がったとのこと。また、オーストラリアのブリスベンでは68%、メルボルンでは46%と、雨や雪が降るとサイクリストは自転車に乗るのを回避する傾向が各地で見られるものの、その程度には都市ごとに差がありました。

過去の研究では、雨や雪によって自転車に乗るのを回避するかどうかはその地域の気候に左右されるものであり、涼しくて雨の多い場所に住む人々は雨や雪に慣れているため、天候が悪くても自転車に乗る人が多いと想定されていました。ところが上記の都市を見ると、ダブリンは雨が多く降ることで有名な一方、セビリアやバレンシアはかなり乾燥した気候であるにもかかわらず雨天でもシェアサイクル利用率が高くなっています。

研究チームは、自転車に乗る意欲に影響するのは天候に限らず、もっと多様な要因が存在すると主張。たとえば、自転車に優しいインフラストラクチャーが備えられている都市では、多少天候が悪くても自転車に乗る人が減りにくい可能性があります。セビリアやバレンシアは大規模なシェアサイクルシステムと安全な自転車ネットワークが整備されていますが、メルボルンでは十分に環境が整っていないため、悪天候によって自転車を回避する人が増えた可能性があるとのこと。他にも、シェアサイクルの利用可能時間や価格、代替となる公共交通機関の利便性なども自転車に乗る意欲を左右すると考えられています。


当然ながら、人々は暑すぎず寒すぎもしない時に自転車に乗るのを好みます。今回の研究では、最もシェアサイクル利用率が高くなるのは気温が27~28度の時であり、これより暑かったり寒かったりするほど利用率は減少することがわかりました。

しかし、気温と気候との関係はより複雑だと研究チームは指摘しています。たとえば、ヨーロッパの中でもかなり寒い都市であるノルウェーのトロンハイムと、より温暖な気候であるスロベニアのリュブリャナは、いずれも気温の低下で自転車に乗るのを避ける傾向が強くみられました。一方、寒い気候のダブリンと温暖な台湾の高雄市はそれぞれ全く違う気候ですが、どちらの都市でも気温が低下してもシェアサイクル利用率はそれほど変化しなかったとのこと。

研究チームは、「雨や雪と同様に、熱帯の人々は温帯に住む人々よりも暑い気候に耐えることができ、温帯に住む人々は熱帯の人々より低い温度に耐えられると以前は考えられていたため、この発見は驚くべきことです」と述べています。


自転車に乗る人を増やすために天候を制御することはできませんが、インフラストラクチャーや制度を整えてサイクリストに優しい都市を作ることで、移動に自転車を使う人を増やすことは可能です。「自転車利用率を改善することは大きな潜在的利点を提供します。医療費を下げ、交通渋滞を緩和し、温室効果ガス排出量を減らし、都市をより住みやすい場所にするでしょう」と、研究チームは述べました。

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