大抵の場合、選択肢が多いのはいいことだ。服でも日用品でもカラーバリエーションが豊富だと嬉しくなるし、「ニュアンスカラー」のような繊細な中間色も人気。しかし「黒ボールペン」はどうだろうか。
このたび、ぺんてるから「黒だけで6色もあるボールペン」が発売された。
いやいや画材ならともかく文字を書くのにそんなに黒いらんわ、と思ってしまうが、万年筆やガラスペンではインクカラーを楽しむというし、「大人のたしなみ」というヤツだろうか……?
・「エナージェル ブラックカラーズコレクション(0.5mm / 0.7mm)」各330円(税込)
ぺんてるのゲルインキボールペン「エナージェル」シリーズ。その20周年企画モデルとして発売された数量限定「ブラックカラーズコレクション」が今回の商品だ。
もちろん1本ずつでも購入できるが、6色セット(税込1980円)もある。すべて黒で、ブラック、クリムソンブラック、ボルドーブラック、チャコールブラック、インディゴブラック、オリーブブラックの全6色なのである。
これまで意識して買ったことはないのだが、同シリーズは全世界で累計10億本も売れているという。
さっそく書いてみる。ペン先の樹脂玉を外した瞬間から、一切よどみのない書き心地。「もう10年も相棒じゃないですか」というような馴染み具合である。
画像では相当わかりにくいが、それぞれのカラーをよ~く見てみると、たしかに色味の違いがある!
しかしカラーペンのような派手さはなく、「線や文字を描けば黒に見えるので、シーンを選ばず使うことができる」というのがポイントだそう。ビジネス場面でも大丈夫。
もし筆者に超絶技巧があれば、「6色の違いだけでカラーイラストを描く」とか「補色で6色を彩る」とかユニークな試みができるのだろうが、あいにく凡人であるためテンプレートを使おう。
面で塗ると、さらに色の違いが明確に!
もっとも特徴の離れた「クリムソンブラック」と「インディゴブラック」だと、「赤と青」と呼べそうなほどである。
意外なほどに印象の違いがあるので、勝手に「1人格付けチェック」を開催してみた。答えがわからないようにドラえもんを描いてシャッフル。
これは一目瞭然、もっとも赤っぽいクリムソンブラックである。正解。
もっとも青っぽいインディゴブラック。ジーンズみたいな色だ。正解。
インディゴブラックと少し迷うが、より灰色に近いチャコールブラック。正解。
クリムソンブラックにブルーを足したような、青紫っぽい色がボルドーブラック。正解。
最後だけわからなかった! これはオリーブブラック。
ただのブラックとオリーブブラックの見分けに苦労する。オリーブブラックは、その名のとおりほんの少しだけカーキが混ざったような色だ。濃くなるとオリーブ感よりもブラックが強くなってくる。
どれも光の加減などで、簡単に見分けがつかなくなってしまうほど微っ妙~な違い。しかし面で塗ったり、たくさんの文字を書いたりして全体を見ると雰囲気がある。まさに「白か黒か」で割り切れないファジーで曖昧な「ニュアンスカラー」である。これが大人のこだわりか……!
もし同僚がくれた何気ないメモで、意外に字がきれいだった上に「あれ、よく見たら青インク……?」と気づいたりしたら……惚れてしまうじゃないか。
大人とは、自分にだけわかるこだわりや、気持ちを上げる秘密の儀式など、日常のちょっとした余白を楽しむものなのだ。たぶん。
ちなみに見た目はシーンや性別を問わない「極限までシンプルさを追求したオールブラックボディ」だといい、6本ともほぼ同じ。色を見分けるにはシールの文字を読むか、ドラえもんを描く必要がある。
ペンケースなどから、とっさに使いたい色を取り出せる可能性は限りなく低い。こだわりを発揮するどころか、「自分でも何色を使っているのか よくわからない」という状況になりかねないので、シーンによって使い分けるというよりは気に入った1本を選ぶのがオススメだ。