Amazonの手のひら決済は逆に不便 – 後藤文俊

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■ネット通販最大手のアマゾンは非接触の生体認証デバイス「アマゾン・ワン(Amazon One)」をアマゾンのリアル店舗への拡大を急いでいる。

アマゾン・ワンは手のひらをデバイスにかざすことで決済を終えるというもの。

モールの通路など小スペースでアマゾン製品を展示販売する「アマゾン・ポップアップ(Amazon Pop-up)」の全7店舗中、5店舗にアマゾン・ワンが導入されている。

カスタマーレビューで評価が星4つ以上の商品を中心にそろえた「アマゾン4スター(Amazon 4-Star)」では全32店舗中、8割以上となる26店舗に導入済みだ。

24店舗の展開となる「アマゾン・ブックス(Amazon Books)」では90%超える22店舗にアマゾン・ワンが設置されているのだ。

レジなしコンビニエンスストアの「アマゾン・ゴー(Amazon Go)」ではゲートでモバイル・アプリに表示したQRコードの代りに手の平をかざすことで入店でき「ジャスト・ウォークアウト(Just Walk Out)」の買い物ができる。

アマゾン・ゴーでは21店舗中、アマゾン・ワンを10店舗のみの設置にとどまっている。

全米で500店舗を超える展開となるホールフーズ・マーケットでは、シアトル周辺の8店舗のみの導入だ。

コンベンショナルな食品スーパー「アマゾン・フレッシュ(Amazon Fresh)」もシアトル周辺の3店舗のみとなっている。

チケットの代りに手のひらで入場できるようになっている、コロラド州デンバーの「レッドロック野外劇場(Red Rocks Amphitheatre)」を含めると10月10日現在、アマゾン・ワンは75ヶ所に導入されている。

なおワシントン州シアトル市にある屋内競技場の「クレイメット・プレッジ・アリーナ(Climate Pledge Arena)」にも導入予定となっている。

 アマゾン・ワンはカリフォルニア州内でも拡大しており、先日、ロサンゼルス郊外のアマゾン4スターストアで登録に手のひら決済を行ってみた。

場所は2年前にロングビーチにオープンした「セカンド&PCH(2nd & PCH)」。ホールフーズ・マーケットのあるショッピングセンターに4スターがある。

アマゾン・ワン端末の登録は簡単だ。登録はタッチスクリーンにあるオレンジ色の「サインアップ(Sign Up)」のボタン押して始める。

画面が切り替わり「クレジットカードもしくはデビットカードを挿入してください(Insert a credit or dibt card)」でアマゾン・アカウントに登録しているカードを端末下から挿入するのだ。

「最初の手のひらをかざしてください(Hover your first palm)」と表示され、カードを挿入したまま手のひらを端末にある円から3インチ(8センチ前後)離してかざす。

手のひらを正しく読み込むため、スクリーンにあるサークルに合わせるように「もっと高く・低く離してください(higher/lower)」との指示が表示される。

読み込みが終わるとチェックマークに「ありがとうございました(Thanks)」と表示される。

次に「左手をかざしてください(Now, hover your left palm)」の表示で左手のひらをかざす。

その後は利用条件を尋ねる画面になりOKボタンを押す。最後に携帯電話の番号を入力してサインアップは終了する。

一連の手続き中、カードは挿入したままとなる。

登録完了後はメールで「ようこそアマゾン・ワンへ(Welcome to Amazon One)」も通知され、アマゾン・ワンの専用アカウントにアクセスできるようにもなるのだ。

この専用アカウントでは登録日に利用履歴を参照できるようになっている。

 アマゾン・ワンの買い物はもっとかんたんだ。レジ係りに購入する商品を渡して、同じ端末に手のひらをかざすだけ。

手のひらを認識し「右手(もしくは左手)をスキャンしました(Right palm scanned)」と表示後、「ありがとうございます!スタッフが決済を完了するまでお待ち下さい(Thanks!Please wait for associate to complete your transaction)」とでる。

決済が完了するとチェックマークがつき、プライム会員なら「プライム会員になっていただき、ありがとうございます(Thanks for being a Prime member)」と表示だ。

紙レシートを受け取れるほか、メールにもレシートが届くようになっている。

手のひら決済は財布からクレジットカードをだす必要がなく、スマートフォンさえ不要だ。アマゾン・ワンはストレスフリーで時間もかからず会計が終了するので便利だ。

 なおアマゾン・ワンはロサンゼルス郊外でオープン間近となっているアマゾン・フレッシュ・セリトス店とラハブラ店に導入される予定だ。

シアトル郊外ベルビュー地区にあるアマゾン・フレッシュ・ファクトリア店と同様、手のひら認証のジャスト・ウォークアウトもしくはレジで手のひら決済のハイブリッド型店舗になる。

トップ画像:アマゾン4スターストアで手のひら認証で買い物をしてみた。決済が完了するとチェックマークがつき、プライム会員なら「プライム会員になっていただき、ありがとうございます(Thanks for being a Prime member)」と表示される。レシートを受け取れるほか、メールにもレシートが届くようになっている。アマゾン・ワンはかんたんすぎて逆に不安?

⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。アマゾン・ワンの手のひら登録では撮影中の「あるある」があります。撮影が気になってうまく登録できないのです。後藤の場合、斜めの角度から手のひらを当てていたので認識できず思った以上に時間がかかりました。シアトルにいる友人に頼んだときは、撮影で8センチ程度の高さがわからずやっぱり登録に時間がかかっていました。つまりアマゾン・ワンは正確に手のひらを端末に向けないと登録できないようになっているのです。

コツさえ飲み込めれば超かんたんなんですけどね。手のひら決済を使って感じたのは、手間がなさ過ぎるという不便。アマゾン・ゴーのジャスト・ウォークアウトを初めて体験した時がそうであったように、超シームレスなので逆に不安になるのです。レジなしの場合はモバイル・アプリですが、アマゾン・ワンは手のひらという生体情報を使うので「大丈夫なの?」という気持ちになります。便利すぎるとかえって不便というか...生体認証に慣れていないせいかもしれません。

 アマゾン・ワンを実際に使って「決済に手間がなさすぎると逆に不便」が仮説です。生体認証が導入されたアマゾン・ワンで毎日の買い物をやってこの仮説を検証してみたいと思います。