麻生太郎・副総理が懸念することとは…(写真/共同通信社)
まもなく投開票の日を迎える自民党総裁選。この国の舵取りを担うトップを決める選挙であるはずなのに、クローズアップされるのは候補者本人ではなく、「どの“重鎮”が誰を推しているか」ということばかりだ。麻生太郎・副総理は総裁選でテンションが上がりすぎてコロナをめぐる”舌禍事件“まで起こした。
「外で飯を食うな、人に会うな等々、制限をいつまでされるおつもりなのか、その根拠は何なのか、本当にそれが必要で効果があったものなのか」(9月21日の記者会見)
副総理の立場にありながら、政府のコロナ対応をそう批判。国民にすれば、“お前が言うのか”と呆れる無責任ぶりだが、この人、“コロナは俺の仕事じゃない”とばかりに、総裁選での河野太郎・規制改革相潰しに本気も本気になっていた。
「学級委員の選挙と訳が違う。これは権力闘争だ」
派閥の緊急総会でそのように檄を飛ばし、他の総裁候補ではなく、派閥会長の座を脅かす身内の河野氏との権力闘争に突入した。
これまでも麻生氏は河野氏の総裁選出馬にことごとく“待った”をかけてきた。昨年9月の総裁選では、出馬に動いていた河野氏を呼び出し、
「おまえの父親は首相になれなかった総裁だ。俺も首相は1年で終わった。焦らないほうがいい。必ず良い機会は来る」
そう説得して断念させたとされる。
河野氏は過去1度、麻生内閣が総選挙に大敗して自民党が野党に転落した2009年総裁選に出馬したが、このときも「麻生さんは出馬にいい顔をせず、河野さんに推薦人を出して応援したのは菅(義偉)さんのグループだった」(麻生派議員)。
それもこれも、「河野家への大政奉還」を恐れているからだ。麻生氏は河野氏の父・洋平氏(元自民党総裁、元衆院議長)から引き継いだ弱小派閥に、旧山崎派の甘利明グループ、旧谷垣派の佐藤勉グループ、旧山東派を合併させて細田派に次ぐ党内第2派閥へと拡大した。“俺が派閥のオーナー”という意識が強い。
しかし、“創業家”出身の河野氏が総裁選に出馬すれば、麻生派は「河野派」へと世代交代し、派の実権を奪われかねない。権力を維持するために、80代の麻生氏は、60歳に近い河野氏に「まだ早い」「時期を待て」と言い続けてきたのだ。それが今回、河野氏の出馬で派閥は大混乱に陥った。麻生派の中堅議員が語る。
「派内は岸田支持に回った甘利さんと河野さんとの事実上の跡目争いになっている。こうなっては麻生会長も収拾できない。河野さんが勝てば河野派に衣替えして外様の一部の議員が離脱し、負けたら河野さんのほうが派を割って出るだろう」
こちらも権力基盤の麻生派が総裁選後に空中分解を起こしそうだ。
※週刊ポスト2021年10月8日号
- NEWSポストセブン
- 小学館『週刊ポスト』『女性セブン』発のニュースサイト
『NEWSポストセブン』は小学館が発行する『週刊ポスト』『女性セブン』『SAPIO』を統合したニュースサイトです。政治経済・国際情勢・社会問題から芸能スポーツに至るまで雑誌発のスクープ、プロフェッショナルの取材に裏打ちされた情報を厳選してネット向けに再編集、WEBオリジナルの記事も配信します。