「スキンケア用品はほとんど効果がない」という主張に対する専門家の意見とは?

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世界には多くのスキンケア用品が存在していますが、一体どんな成分がどんな効果を持っているのかは分かりにくく、「本当は効果がない」といった意見がでることもあります。そんなスキンケア用品の効果や誤解について、化学の博士号を持ち美容製品を科学的に解説するウェブサイト・Lab Muffinを運営するミッシェル・ワン氏が解説しています。

The Only Skincare That Works According to Science? ASAP Science video response | Lab Muffin Beauty Science
https://labmuffin.com/the-only-skincare-that-works-according-to-science-asap-science-video-response/

Scientist reacts: The ONLY face cream that works according to science | Lab Muffin Beauty Science – YouTube
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・目次
◆前置き
◆成分表から製品の効果を評価することはできない
◆スキンケア用品には多様な目的がある
◆成分が皮膚の奥まで到達する必要がない場合もある
◆科学的に効果が検証されていない理由
◆コラーゲンには本当に効果がないのか?
◆ビタミンCには本当に効果がないのか?

◆前置き
ワン氏は、自身が運営するウェブサイト・Lab MuffinやYouTubeチャンネルで美容製品に関する解説を公開しています。そんなワン氏のもとへ、2020年に科学系YouTubeチャンネル・AsapSCIENCEが公開した「市場に存在するスキンケア用品を科学的に比較するムービー」の内容が信頼できるものなのかどうかを検証する要望が多く届いたとのこと。


AsapSCIENCEは問題のムービーの中で「スキンケア業界は大げさな表現でユーザーに製品を売り込んでいる」「『科学的に検証された』という用語には意味がない」「スキンケア用品は『肌に浸透する』という用語で宣伝されがちだが、肌にはガード機能があるので簡単に成分が浸透することはない」といった意見を展開し、流通するスキンケア用品のほとんどは効果を誇張していると主張しています。ワン氏はこれらの意見を1つ1つ検証して、スキンケア用品が本当に効果を誇張しているのかどうかを解説しています。


◆成分表から製品の効果を評価することはできない
一般的に、化粧品や食品などの成分表には含まれる量が多い順に成分が記載されています。問題のムービーでは、成分表に表記される「グリセリン」の位置を比較することで、「製品Aより製品Bの方がグリセリンが多く含まれている」という主張が行われています。


しかし、例えば製品Aの全重量の5%がグリセリンで、製品Bの全重量の10%がグリセリンである場合でも、他の成分の重量によっては製品Aの方が成分表の上の方にグリセリンが記載されることもあります。このため、成分表に記載されている順位だけではそれぞれの成分の量を導き出すことはできないとワン氏は指摘しています。


◆スキンケア用品には多様な目的がある
AsapSCIENCEは、合成化合物・レチノイドに「科学的に効果が証明されている」「皮膚の奥まで到達する」「コラーゲンの生産用を増やす」「シワが減る」といった特徴があることから「レチノイドを含むスキンケア用品は、効果がある」と主張しています。


しかし、ワン氏は「しわができる理由はコラーゲンの喪失だけではありません。ヒアルロン酸などのグリコサミノグリカンやその他の物質の喪失、真皮に含まれる成分の変化、角質層の脱水といった多くの原因が絡み合っています」と述べ、コラーゲンの生産量増大にのみ着目することは間違っていると指摘しています。


また、AsapSCIENCEがシワを消すことを重視している点についても「スキンケアにとって重要なのはシワだけではありません。にきび・色素の退色・乾燥肌の治療など、人々がスキンケア製品を使用する理由はたくさんあります」「アンチエイジングに着目しても、シワ以外にシミやホクロなど着目するべき点が多く存在します」と語り、スキンケア用品を評価する際は多様な目的を考慮する必要があると主張しています。


◆成分が皮膚の奥まで到達する必要がない場合もある
AsapSCIENCEはスキンケア用品の効果を検証する際に「成分が皮膚の奥まで到達するか否か」を重視しています。しかし、例えば角質の水分含有量を増やすことを目的とする保湿剤は、皮膚の奥まで到達する必要はありません。同様に、表皮に「紫外線から皮膚を保護する層」を形成することを目的としている日焼け止めも皮膚の奥まで成分を届ける必要はありません。


また、アトピー患者を対象にした研究では、皮膚の表面に塗布したワセリンが実際に角質層を厚くし、抗菌ペプチドの産生を増加させることが判明しています。


さらに、皮膚の表面を保湿することで傷跡が消えるという研究結果も存在しています。ワン氏はこれらの研究結果を基に、成分が皮膚の奥まで届くか否かは、スキンケア用品の効果と必ずしも関係しているとはいえないと主張しています。


◆科学的に効果が検証されていない理由
AsapSCIENCEは、ほとんどのスキンケア用品の効果は科学的に検証されていないと主張しています。ワン氏もこれを認めつつ、「スキンケア用品は医薬品ではなく、化粧品に分類されており、科学的に効果を検証しなくとも販売することができます」「販売戦略のために科学的な検証を行う場合もありますが、検証には何年もの時間と数百万ドル(数億円)の費用がかかることもあります。検証せずともユーザーが購入するのなら、検証を行うための強い理由は存在しません」と述べています。


日本を含むいくつかの国では医薬品と化粧品の中間にあたる医薬部外品(Quasi drug)という分類が存在しています。これらの国々では「薬物には分類されていないものの近い効果が期待される成分」を含むスキンケア用品が医薬部外品として販売されています。


◆コラーゲンには本当に効果がないのか?
AsapSCIENCEは、多くのスキンケア用品に含まれているコラーゲンについて「コラーゲンは分子量が大きいため、皮膚の外部から浸透することはありません」と指摘し……


コラーゲンの効果は100%でたらめであり、コラーゲンを含むことをアピールしている製品は買うべきでないと主張しています。


ワン氏は「私もコラーゲンの効果は誇張されていると感じています。しかし、完全に効果がないわけではないので、『90%でたらめ』くらいにしておきましょう」と述べています。コラーゲンについては、皮膚表面での保湿効果を認める研究結果が存在しており、まったく効果がないわけではないとのことです。


◆ビタミンCには本当に効果がないのか?
AsapSCIENCEは多くのスキンケア用品に含まれ、「シワの発生を抑える」「抗酸化作用を与える」とアピールされているビタミンCについても「効果がない」と主張しています。


これに対して、ワン氏はビタミンCを含むスキンケア用品がコラーゲンの生産量を増やすという複数研究結果や、ビタミンCの抗酸化作用がシミの発生を防ぐという研究結果を挙げて、「ビタミンCは、スキンケアに効果があることを示す証拠を多く持つ物質の1つです」と反論しています。


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