Wikipediaが「中国人編集者の身の安全を守るため」に一部の編集者アカウントをBANに

GIGAZINE
2021年09月16日 14時00分
メモ



世界中のボランティアの共同作業により執筆されるフリーのインターネット百科事典である「Wikipedia」を運営するウィキメディア財団が、「中国語版のWikipediaで活動する編集者の身の安全をまもるため」に一部の編集者アカウントなどを停止処分としたことを発表しています。

[Wikimedia-l] Regarding a series of serious office actions / 有关于一系列的办事处行动 – Wikimedia-l – lists.wikimedia.org
https://lists.wikimedia.org/hyperkitty/list/[email protected]/message/6ANVSSZWOGH27OXAIN2XMJ2X7NWRVURF/

Wikipedia bans seven Chinese users amid concerns of ‘infiltration, physical harm’ • The Register
https://www.theregister.com/2021/09/15/wikimedia_china_bans/

ウィキメディア財団のコミュニティ・レジリエンスと持続可能性担当副社長を務めるマギー・デニス氏が、「個人を特定できる情報にアクセス可能な立ち位置」にいる一部の編集者アカウントを停止処分とすることで、コミュニティ全体の安全性を保つと発表しました。

ウィキメディア財団は中国語版のWikipedia上で他の編集者の個人情報を収集する取り組みが行われてきたことを認識しており、それに対する一連の対応として、中国本土で活動していたという7つの編集者アカウントと、シスオペ特権を有する12のアカウントを停止処分とすると発表。さらに、その他のWikipedia編集者に対してもポリシー準拠を促す警告を行っています。

ウィキメディア財団は「これまでほとんど公にすることはありませんでしたが、今回の事例は範囲と性質において前例のないものでした」と、今回一部の情報を公にした理由について説明しています。


ウィキメディア財団はセキュリティ企業と提携し、中国語版Wikipediaの編集者の個人情報を収集する動きを調査しており、一連のアクションが「複数のユーザーを危険にさらした」と評価。さらに、「一部のユーザーは身体的な危害を加えられたことを知っています」と述べ、個人情報の漏えいが一部の編集者に深刻な影響をもたらしたと報告しています。

なお、デニス氏は「ポリシーの変更によってアクセスが制限された特定の個人を非難するつもりはないことを強調したいと思います」とも述べており、アクセス制限の対象となったユーザーが故意に個人情報を収集していたとは限らないとしており、「外部からの恐喝により個人情報を収集した可能性」を示唆しています。

デニス氏は公にできる情報は限られているとしながら、「香港、中国本土、台湾からの誠実なボランティアは、半年以上にわたって危険なメンバーについての懸念を表明してきました」「中国語版のWikipediaに誠意をもって貢献したいというすべての人を歓迎すべく、包括的なコミュニティの再構築を目指す必要があります」と述べ、中国語版Wikipediaの運営にかかわるコミュニティの正常化を目指すとしています。


中国政府は社会主義的価値観を促進するため、インターネットの文明化を目指しています。その一環として、中国政府はニュースサイトやオンラインプラットフォームの監視を強化し、政府の意に沿わないものへの締め付けを強化していく予定であると報じられています。

中国、ネットの「文明化」目指す 社会主義価値観に主眼=新華社 | Reuters
https://jp.reuters.com/article/china-education-internet-idJPKBN2GA29H


中国本土ではWikipediaの利用が禁止されているため、中国語版のWikipediaの編集に携わる人々が中国政府から目を着けられていると考えるのは自然な流れ。海外メディアのThe Registerは、「中国政府は国境を越えて影響をおよぼすような作戦を実行することで知られているため、中国政府とWikipediaの編集者による歴史に関する解釈論争が、身体的危害にまでエスカレートしたというシナリオは十分に考えられるものです」と報じています。

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