1日の睡眠時間が6.5時間を超えると認知機能の低下につながる可能性

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質の高い睡眠睡眠は体の修復を促進してメンタルヘルスを向上させるだけでなく、心臓病や糖尿病を含む多くの疾患のリスクの低下にもつながります。また、十分な睡眠がとれていないと認知機能の低下やアルツハイマー病のリスクなどにつながることもわかっています。しかし、ワシントン大学医学部の研究チームが「睡眠時間が長すぎるのも認知機能の低下につながる可能性があり、眠れば眠るほど健康にいいとは限らない」とする論文を発表しました。

Sleep and longitudinal cognitive performance in preclinical and early symptomatic Alzheimer’s disease | Brain | Oxford Academic
https://academic.oup.com/brain/article-abstract/144/9/2852/6401973


Sleeping longer than 6.5 hours a night associated with cognitive decline according to research – what’s really going on here?
https://theconversation.com/sleeping-longer-than-6-5-hours-a-night-associated-with-cognitive-decline-according-to-research-whats-really-going-on-here-170989

研究チームは、平均年齢70代半ばから後半の高齢者100人を対象に、4~5年間にわたって追跡調査を行いました。調査時点で100人中88人には認知症の兆候が見られず、12人には認知症の兆候が見られました。研究期間中、参加者は認知機能の低下や認知症の兆候を調べるために、一般的な認知機能テストや神経心理学的テストを受けました。これらのテストの成績は、複合的な認知機能尺度であるPACC(Preclinical Alzheimer Cognitive Composite)スコアにまとめられました。このPACCスコアが高いほど、認知機能が高いことを示しています。

睡眠は、寝るときに額に装着する単電極脳波計を用いて、4〜6日間にわたって測定しました。この脳波測定で脳の活動を正確に測定することができ、睡眠の有無(時間)や安眠度を知ることができます。さらに研究者たちは、年齢や遺伝、認知症に関連するアミロイドβタウタンパク質の有無など、認知機能の低下に影響を与える他の要因も調査しました。

その結果、1日の睡眠時間が4.5時間未満および6.5時間以上の場合、時間の経過とともに認知機能が低下することがわかりました。興味深いことに、睡眠時間が認知機能に与える影響は、認知機能低下の最大のリスク要因である年齢による影響と同様だったとのこと。これまでの研究で最も健康に良い睡眠時間は「7~8時間」とされていましたが、今回の研究は「認知機能を維持するのに適した睡眠時間は4.5~6.5時間」という結果を示しています。


これまでの研究から、睡眠不足が認知機能の低下につながることがわかっています。例えば、2017年に発表された研究では、不眠症や日中の過度の眠気などの睡眠障害を報告した人は、そうでない人に比べて認知症を発症するリスクが高いことが示されています。また、2013年に発表された研究では、睡眠時間が短い人の脳はアルツハイマー病患者と同様にアミロイドβのレベルが高い傾向にあることがわかっています。

なぜ睡眠不足が認知機能の低下につながるのかについては、はっきりとはわかっていません。一説によると、睡眠は日中に蓄積された有害なタンパク質を脳から排除するのに役立つといわれています。これらのタンパク質の中には、アミロイドβやタウタンパク質など、認知症を引き起こすと考えられているものがあります。つまり、睡眠が妨げられると、脳がこれらのタンパク質を除去する能力が阻害される可能性があるというわけです。2018年に発表された実験結果では、たった一晩の睡眠不足でも一時的にアミロイドβの濃度が上昇することが示されています。


これまでの研究でも過眠と認知機能との間に関連性があることがわかっていますが、その多くは睡眠時間の記録が被験者の自己申告に基づいているため、脳波を使って脳活動を測定するよりもデータの精度が低くなります。ワシントン大学医学部の研究チームが今回発表した論文は、こうした研究結果を裏付けるものといえます。

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2021年11月17日 21時00分00秒 in サイエンス, Posted by log1i_yk

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