野党は国民に選択肢を示すべき – NEXT MEDIA “Japan In-depth”

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ⒸJapan In-depth編集部

安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

【まとめ】

・国民の生命を守るため、政治を変える。

・野党は違いを認め合って結集し、国民に選択肢を示すべき。

・有事における医療体制、マンパワー確保の仕組みを作りたい。

自民党総裁選挙・衆議院議員選挙をめぐり政局が動き出した。新政権発足後、年内に総選挙がある。立憲民主党代表代行・平野博文衆議院議員に話を聞いた。平野氏は現在、党の選挙対策委員長も務める。菅義偉首相の求心力低下を印象付けた8月の横浜市長選では、山中竹春氏を推薦し勝利した。(平野博文「【談話】横浜市長選の選挙結果を受けて」2021年8月22日

安倍: 菅首相の電撃的な辞任表明。これまでの経緯をどう見ているか。

平野氏: その前に。新・立憲民主党を去年の9月16日に作った。菅内閣も同じ日にできた。「新党・新立憲として、菅内閣としっかり対峙をする」、「国民に対して一対一の対立構図をしっかり作ってやらないといけない」ということで当然我々としては、菅政権と選挙において選択をすると言うことを前提として考えていた。

一方で、我々政治家が一番国民の生命を守るという中で、新型コロナウイルスによる今まで体験したことのないパンデミックの状態が1年半以上続いている。ですから、「与党」「野党」ということではなく、理屈・政党を超えてやらなければいけないということで、与野党協議会とか色々な枠組みを作って、ずいぶん譲歩して、「与党がやるんだったら我々も協力するよ」という前提で、政調会長を各党出して国民の声をそこに集約・収斂させて、提案してきた。(政権は)ほとんど言うことを聞かないという状態だから、これはとんでもない政権だ。私も、「与野党を超えてやる大きな国家の危機なんだ」、「災害なんだ」ということを私もテレビで言ったことがあるが、なかなか与党として聞き入れない。一応聞いたふりをしているようでなかなか聞かない。

極めつけは、言葉を選ばずに言いますけれど、やはり行動制限あるいは活動制限をかけるということは、それに対する協力金・支援金を出してしかるべきだ。これがセットなら国民も理解するだろう。そこがなかなか噛み合っていない。十分な支援体制をとるというところを、菅さんはやってこなかった。やれなかったのかもしれませんが。やはり強いリーダーシップをとってやる、というのは1番大事なことだろうと思います。そこができていないということで、突然の辞任の結果になったと思っています。表向きは「コロナに専念する」と(菅首相は述べているが)、そんなものは誰も信用していない。

それと、総裁選挙、本人としてはやりたいと思ったけど、自民党の中で支援が崩れてきた。特に昨今の各種選挙で、「菅さんの下でやっても勝てない」と。極めつけは横浜(市長選)での結果、20万票の差が出たということも、本人の決断に至ったのか。自民党の中のパワーバランスが崩れてきて、(菅首相辞任という結果に)なったということもあるでしょうし、政府のコロナ対応に対する国民の不満とストレスがあって支持率が落ちていたということなんだろうと思います。

安倍: 安住(淳)氏の言うところの「コップの中の嵐」。権力闘争で自民党内部にごたごたが起こっていることは国民の目から見ても明らか。ここで野党は、対立軸を明らかにして「政権を取りに行くぞ」という気概を見せなくては。

平野氏: そのとおり。この選挙制度の中で、衆議院選挙と言うのは政権選択ですから、「与党は固まる、野党はバラバラ」。これはやはりよろしくない。野党がまとまって戦うというところは大事な視点だと思います。特に安住は国対委員長ですから、国会の中で野党がまとまるようにと彼も知恵を絞っている。国民に信を問うとき、「野党はこういう考え方でやります」という最大公約数をまとめたいと、選対委員長としては思います。

ただし野党はそれぞれ生い立ちがありますから。いつも言うんだけれど「違いを認め合え」と。違いを認めあって大きくまとまっていくということは、誰のためにするのかと言うと、政党のためじゃない。国民の皆さんにお示しする選択肢をしっかりさせるという意味で、違いを認めながらも、「今のこの政権を延命させることが国民のためにならず」ということでまとまらなければいけないと思います。

安倍: 2009年の政権交代。政権交代というものは起こるべくして起こる。野党の結集と、選挙協力をきっちりすることが政権交代の鍵になる。

平野氏: ただし、生い立ちがそれぞれありますから。「この選挙の大義はいったい何なんだ」ということを(共有しなければいけない)。政党間で違うのだから、違いを言い出したら、こちら側も「コップの中の争い」をしているようなものです。そうではなく、野党は「国民のため大義のため」、「まとまってでも変えることが、国民のため、国家のためだ」という理屈に持ち込まなきゃだめだ。

安倍: 選挙前に政党の合併も起こりうるのか。

平野氏: 僕はこの3年、そればっかりやっていた。17年の衆議院選挙でバラバラになって、希望(の党)が起こり、立憲が起こり、支援団体である連合の皆さん含めて「なにをやっているんだ」と。僕は17年は無所属で出た。出ざるを得なかった。19年の参議院選挙もバラバラ。これは国民から見たら「なにやってるんだ」となる。僕はこの後、国民(民主党)の幹事長を2年やり、その後大きく新党を作って新立憲にするまで。国民(民主党)の時に自由党の小沢(一郎)さんとかも合流した。この仕掛けばかりずっとしてきましたから。今でもまだ大同団結してやるべきだと言う夢は捨てていません、私自身は。

安倍: 国民民主党に対して声かけをしているのか。

平野氏: それはもうずっと。会えば、一緒になれと言う話はしている。元仲間ですから。

安倍: 国民民主党はそこまで頑なになる必要はないということか。

平野氏: 玉木(雄一郎)さんと私が幹事長という枠組みで来ましたから、彼の気持ちもわかる。私も強引にやりすぎたとかいろいろ言われたけれど、大きな大義は彼もわかっていると思う。

安倍: 日本維新の党とは難しいだろう。

平野氏: うん。維新の立ち位置は何なのかということがはっきりしないからアプローチしづらい。そこをはっきりしたらいいんです。是は是、非は非と。表では「我々は与党ではない」と「野党だ」とおっしゃるが、やっていることはよくわからない。与党の補完勢力になっていると映ります。

安倍: では、野党の中からまだまだ動きは起こりうるし、起きなければいけないということか。

平野氏: 起こさなければいけないと思います。

安倍: 自民党の総裁選の候補者乱立は、野党にとって決して悪いことではないということか。

平野氏: 菅総理が戦う相手だと、もともと想定していたところを、急に目くらましのように変えられたので、若干「これは大変だ」、「潮目変わるぞ」ということはあっても、そんなことに右往左往する必要はない。王道をきっちり歩いて、より我々の主張を国民に訴えるというスタンスは変わらないですから。

安倍: その他にも色々な問題がある。エネルギー、安全保障、経済、財政。どういうものを現在の自公政権に対する対立軸として打ち出すのか。

平野氏: 一番は、安倍政権・菅政権、長期にわたる政権のところに腐敗が生まれている、おごりが生まれているということ。そこは変えなくてはいけないということと、この1年半のパンデミックを変えるために、日本の政治を変えないと変わらないでしょうと。だから「政治を変える」です。国民生活(の逼迫した状況)は(政治を)変えざるを得ない、余儀なくされているわけですから。もっと国民目線のところに政治が移って行かないと。そういうふうに思いますから、「変える」です。「チェンジ」ですよ。

安倍: 2009年は「マニフェスト」選挙だった。

平野氏: 2009年はマニフェストと八策を作った。私は水面下で3ヶ月そればっかりやっていました。裏番ばっかりやっていましたからね。

安倍: 2009年の政権交代はだいぶ忘れさられている。しかし、長期政権は腐敗する。旧態依然とした政治では、パンデミックや他の政策は何も変わらないんだということを、国民に理解させないと政権交代は難しいのでは。

平野氏: そうです。だから、わかりやすくという意味で「変える」だね。昔、岡田(克也)がカエルの置物をいっぱい買っていましたけど。やはり「チェンジ」ですよ。