ゲームに登場する「岩石」はどのように作成されているのか?

GIGAZINE
2021年09月08日 21時00分
動画



世の中にはカッコいい岩を求めて海外まで出張するというゲーム開発者も存在するほど、近年は3Dゲームにおいて「岩の描写」が重要視されることがあります。3Dゲームで扱われる「岩の3Dモデル」がどのように作成されているのかについて、アメリカのニュースメディアVoxが解説しています。

How video game rocks get made – YouTube
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ムービーは、アメリカ・ユタ州の広大な岩山で岩石をひたすら撮影する人物を映し出すところからスタート。


この人物は、3Dアセットライブラリを提供するQuixelのプロデューサー兼エヴァンジェリストであるGale Davis氏。Quixelは2019年にEpic Games傘下となり、Epic Gamesのゲームエンジン「Unreal Engine」に高品質なアセットを多数もたらしたことで知られる企業です。


Quixelがが岩山にカメラマンを送り込んでいるのは、岩の高解像度スキャンを撮影するため。岩の高解像度スキャンは、ビデオゲームや全ての3Dアートを進化させる上で重要だと考えられています。


Davis氏が主に岩のスキャンのためによく訪れると語るのが、ユタ州のHurrah Passと呼ばれる地域。


Hurrah Passは車で片道90分、道は舗装されておらず、ともすれば切り立った崖に落っこちてしまうような場所です。


もちろん充電できるようなコンセントなどは存在しないので、持ち込んだバッテリーを使い切ったら撮影は強制的に終わり。


今回、Davis氏はEpic Gamesの技術的デモンストレーションに用いる異世界のような雰囲気を持つ岩を探しにきたとのこと。


時折アングルを変えながら、対象と定めた岩の高解像度写真を撮影しますが、その際に重要になる道具の1つが日よけのテント。テントの中で撮影を行うことで、明暗の差が強くなりすぎないようにしています。


背中側には撮影時間を延ばすためのバッテリーパックを搭載。


また、対象のそばには寸法を指し示すスケールマーカーを設置し、写真からおおよそのサイズが把握できるようにします。


こうして撮影した岩の写真をソフトウェアで読み込んで、さまざまなアングルの写真を接合することで3Dモデルを作成します。


こうした3Dモデル作成ソフトウェアは、複数ある写真において被写体の共通部分を重ね合わせることで全体像を把握するという機能が備わっています。


この工程は岩だけでなく岩壁の場合も同様。岩壁や渓谷の場合は、撮影にドローンが用いられています。


実際の撮影時には、場所の選定が困難だと語るDavis氏。「歩いていて『お、いい感じ』と思う場所があるわけだけど、実際に使える場所なのかどうかを考えると最初の感動も急速に薄れる。ほとんどの場合、制約になるのは時間だ」とのことで、ソフトウェアに3Dモデルの作成を任せられるようになった時代でも課題になるのは時間です。


こうして作成された渓谷の3Dモデルは、Unreal Engineの「Bridge」で「canyons of Utah(ユタの渓谷)」と検索すると発見可能。


現実の映像を取り込むという手法の他にも、一から3Dモデルを作成するという手法もあります。かつてはドット絵で岩を描くという時代もありましたが……


現代では3Dモデリング用の専用ソフトウェアが存在しています。


こうした3Dモデリングソフトウェアでは、マーケットプレイスからダウンロードしたテクスチャや3Dモデルを扱うことも可能。マーケットプレイスで提供されている3Dモデルには、法線マップ(ノーマルマップ)と呼ばれる、オブジェクトの凸凹や溝などの3D的な形状について、XYZ座標系をRGB色彩系に変換したデータが含まれています。


Epic Gamesのスマートフォン向け3Dモデル作成補助ツール「Capturing Reality」を使えば、近くの公園で撮影した石を3Dモデル化することも可能。


さらに、高品質なパブリックドメインの3Dモデルアセット配布ライブラリ「Poly Haven」のような便利なサービスも存在します。


今回のDavis氏が撮影した渓谷の3DモデルはUnreal Engine 5のデモンストレーションムービーに用いられたそうで、Epic GamesはQuixelを傘下に収めることで高品質な3Dモデルアセットを提供し、その高品質な3DモデルアセットでUnreal Engine 5で作成されるゲームの質を向上させ、デベロッパーに対するアピールを行おうとしています。


こういう理由で、地質学者でもないDavis氏のような人物がわざわざ岩山に赴いて写真を撮影しているというわけです。


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