政府による「インターネット切断」が激増しているとGoogleのシンクタンクが報告

GIGAZINE
2021年09月02日 21時00分
メモ



Googleの親会社・Alphabet傘下のシンクタンクであるJigsawと非営利団体のAccess Nowが2021年9月1日に、政府が主導のインターネット遮断が過去10年間だけで850回近く行われたとするレポートを発表しました。この報告により、世界各国では抗議運動の抑圧や言論の封殺などを目的としたインターネットの切断が、急増しているとの実態が明らかになっています。

Internet Shutdowns | Jigsaw
https://jigsaw.google.com/the-current/shutdown/

Internet shutdowns by governments have ‘proliferated at a truly alarming pace’ – The Verge
https://www.theverge.com/2021/9/1/22649909/internet-sthudowns-government-freedom-speech-data-access-now-jigsaw

Access Nowの調べによると、過去10年間に行われた850件の「意図的なインターネットのシャットダウン」のうち、768件が2016年以降の5年間に発生したものだったとのこと。2019年には年間213件だったシャットダウンは、新型コロナウイルスのパンデミックにより多くの地域で選挙が見送られた影響で、2020年には155件に減少しました。また、2021年にはすでに50回のシャットダウンが発生しています。


Access Nowの反インターネット遮断運動「#KeepItOn」の責任者であるフェリシア・アントニオ氏は、発表の中で「シャットダウンの監視を始めてから、政府主導のシャットダウンは驚くべきペースで急増しています」と話しました。

Access Nowが記録している中で最初期のシャットダウンは、2011年1月28日にエジプトで行われたものです。1月25日から始まっていたホスニー・ムバーラク元大統領に対する一連の抗議デモの広がりを危惧したエジプト政府は、同国が世界のインターネットとつながるためのボーダー・ゲートウェイ・プロトコルの経路3500カ所を停止させ、これによりエジプトのネットワークの93%が5日間にわたり完全にアクセス不能になりました。

エジプト以前にも、ギニアやイランでインターネットのシャットダウンや速度制限が行われた記録がありますが、国民の4分の1以上がインターネットを利用できるような国家がシャットダウンに踏み切ったのは、エジプトが初めてだとされています。なお、ムバーラク元大統領は結局、この年のエジプト革命によって失脚しました。

そして、これまでで最も長期的なシャットダウンは、2019年から記事作成時点まで続いているミャンマーのインターネット規制です。同国では、ミャンマー軍と反政府武装組織「アラカン・ロヒンギャ救世軍」の衝突が激化した2019年6月19日に、ミャンマー西部のラカイン州とチン州でインターネットが遮断されました。その後、2021年2月1日に発生した軍事クーデーターによりミャンマー西部では一時インターネットが復旧しましたが、今度はミャンマーの他の地域でインターネットが完全にシャットダウンされました。そして、2月5日からはミャンマー全土で接続が不安定になり、記事作成時点に至るまで改善されていないとのことです。

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アジアやアフリカを含む世界各地で行われているインターネットの遮断は、特に抗議活動が盛んに行われている時や、選挙の際に最も多く行われています。ベネズエラの弁護士であり、#KeepItOnの参加者でもあるMarianne Díaz Hernández氏は、IT系ニュースサイト・The Vergeに対し「シャットダウンの増加は、抗議活動を組織する手段としてのインターネットの有用性が高まっていることの表れです。多くの人が、ソーシャルメディアを通じて人権侵害を非難したり不安の声を共有したりするようになるにつれて、一部の国の政府はインターネットを制御すべき脅威とみなすようになるでしょう」と話しました。

インターネットのシャットダウンは、言論や集会の自由を妨害するだけでなく、経済にも大きな影響を及ぼします。例えば、史上最長のシャットダウンが続くミャンマーでは、同国のGDPの2.5%に相当する約21億ドル(約2310億円)もの経済的損失が発生しているとのこと。この経済的損失は、アメリカ初の世界金融危機が同国にもたらした損害の半分に相当し、損害が広がるのに要した時間は3分の1未満と推定されています。

レポートの末尾には、「インターネットのシャットダウンが個人やコミュニティに与える被害を食い止めるためには、すべての人にとって開かれた自由なインターネットを維持するべく、多国間組織や市民運動が中心的な役割を果たしていかなければなりません」と記されており、草の根運動と国際社会が足並みをそろえる必要があると訴えられています。

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