共同通信社
菅政権肝いりの新たな中央官庁「デジタル庁」が1日に発足した。
1日午後、東京・千代田区の「東京ガーデンテラス紀尾井町」で行われた発足式には、菅首相がオンラインで出席。挨拶では民間人材を含む組織であることに触れ、「立場を超えた自由な発想でスピード感を持ちながら、行政のみならず、我が国全体を作り変えるくらいの気持ちで知恵を絞っていただきたい」と話した。
また発足式後には、平井卓也デジタル大臣とともに、事務方トップの「デジタル監」就任が決まった一橋大学名誉教授の石倉洋子氏もぶら下がり会見に応じた。石倉氏は、打診された際の心境について「何が起こるのかなと、ひょっとしたら新しい世界が広がるかもしれないなと」と前向きに受け止めたことを説明した。
デジタル庁は、菅首相が昨年9月の自民党総裁選で打ち出し、2021年中の創設をめざし「早急に準備を進める」と語った肝いりの政策のひとつ。省庁の縦割りを打破し、マイナンバーをはじめとしたデジタル改革をけん引することが期待される。
同庁は民間から任用された200人(非常勤含む)を含む約600人の職員で組織され、平井卓也デジタル改革担当大臣がデジタル大臣、藤井比早之内閣府副大臣がデジタル副大臣、岡下昌平内閣府大臣政務官がデジタル大臣政務官に、それぞれ就任している。
【発足式後のぶら下がり会見全文】
平井)今日は私も指示書をいただき、官邸で辞令もいただきました。私からデジタル監に辞令をお渡しさせていただきました。そのほかCXOの皆様も今日からスタートということで初めてリアルにお顔を拝見させていただきました。
ほとんどの会議はウェブなので、こうして石倉さんと直にお会いするのは2回目ということなんですが、今このデジタル庁がスタートするにあたり、いかに大変な仕事であるか、しかし挑戦のしがいがあるなと、そして石倉さんが今までの経験や色々な知恵をこのデジタル庁に注いでくれるということで、大変心強く思っています。
総理からは前向きな激励もいただいていますし、何といってもこのデジタル庁の組織は、トップは菅総理なんですね。そして強い権限を与えられている組織でございますので、これから縦割りを打破して国民のためになるデジタル化を進めていきたいと、そのように思います。色々な仕事はありますが、短期的に結果を出せるもの、そして大きくは5年間をかけて取り組まなければならないガバメントクラウドみたいなものもあります。それも順次説明をしながら進めさせていただきたいと思っています。
さっき職員のみなさんにはミッション、ビジョン、バリューの話もさせていただいたんですが、仕事のやり方も含めて、今からなんです。これから作り上げていく、お手本のないところで新たなバリューを作っていくというのは、まさにスタートアップ企業と同じだと思っていて、国民が喜ぶサービスを作っていく。ですからビジョンのところに「Government as a Startup」という言葉と、「Government as a Service」という言葉を。
国民が喜ぶ品質のサービス、それをローコストでスピード感を持って届けること、そこに尽きるだろうと思います。今日からスタートということで新たな決意で頑張らせていただくのでどうぞよろしくお願いいたします。
石倉)みなさんこんにちは石倉洋子です。「デジタル監」という難しい名前で、英語で何て言うんですか?って言ったら、「Chief Officer of Digital Agency」という風にうかがって。非常にやりがいがある、大変は大変である、新しいことができそうだということで大変楽しみに、どうやってやったらいいのかなということを色々考えつつ進めていきたいという風に思っています。
デジタルは社会の色んな側面、働き方とか、一般の人たちの生活、それから雇用、健康とか色々な側面に非常に大きな影響を与える、非常に大きく変える原動力になると私は思っています。原動力になって「変える」というと、怖いと。デジタルってなんだかよく分からないし、それによって私の生活が変わるんだと、心配だと思われる方がすごく多いような気がするんですが。「変わる」ということは、今までと同じじゃないという意味では心配だし、先が見えないっていうことがあるんだと思うんですが。
今の時代は今までのようにやろうというのは基本的にもうできないんです。今ある技術、今ある価値観を使って一体どういう社会を作っていったらいいのかということをよく考える。そのひとつの手段がデジタルだという風に考えています。具体的には、色んな境界ってありますよね。国境もあるし、距離もある。私たちのCXOの人とか、官の方々と色々会議をやっているんですが、みんなオンラインでやっている。今日初めてこういう方だったのかということがすごく多い。それだって今までだったらできなかったんですね。
今みたいにコロナで、移動ができないっていう時代の場合に、デジタルがなければそういう会議というのもなかなかできなかった。そういう意味で、境界を越えるということが言えますし、国境を越えるとも私は思っています。デジタルを上手く使えば国境を越えて色々なことができるという風に思っています。それからもちろん、組織は色んなところで境界がありますよね。それも越えられるすごくいい手段だという風に思っています。民間の企業の場合も、「ここは担当が違います」とかっていう話がときどきあるんですが、そういうこともデジタルで解決していこうとすると、組織の境界を越える手段。多分これは私は年齢も越えられるのではないかという風に思っています。
そういう意味では素晴らしい可能性をもつ手段であるという風に思っています。できることがたくさんありそうなんだけど、仕事が増えちゃってやりたくないなと、ちょっと待てという感じもあるかもしれないんですが、もうちょっと長期的に考えてどんなことができるのかということを、アイデアを出していったらいいのかなという風に思います。
「できません、できません」とか、「こういう問題があります、ああいう問題があります」といくら言っても何も変わらないんですね。ではどうやったらできそうなのかというので、色々なアイデアを出してどんどん試して、解決していって、みなさんにこういう社会になるのかという感じを持っていただけるというのを私たちの理想と考えています。
そんなにすぐできないことも結構ありますけど、それでもそちらの方向を目指して色々な活動をしていきたいという風に思っています。みなさんのご協力とか民間の人たちも専門家がたくさんいるので。官の方々も色々経験を持っていらっしゃる方が多いわけで、そういう方々の経験とか知見とか、知識を使って、うまく活用してみんなで協力してより良い日本を作りたい。
私は常に「世界の中の日本」だという風に思っているんです。今のところデジタルだと日本は蚊帳の外みたいな感じで、存在感全然ないと言われているんですけど、逆に言えばそれが可能性がすごく大きいと考えられるわけで。色んなことを飛び越えて、日本って昔はしょうもなくて、デジタルが遅れているのかと思ったら新しいことを色々やろうとしていて、それによって素晴らしい国になるんだ、なったんだというのができれば、素晴らしい経験だと思っています。そういう活動に少しでも関与できる、いかに私が幸運かということを感じていますので、これからもみなさんのご協力をお願いしたい。
Q)デジタル庁の重要なミッションでマイナンバーカードの普及があるがどのように考えているか
平井)まず、マイナンバーカード、マイナンバーというのはデジタル社会のパスポートだとずっと言っているのは、本人確認がベースにないと安全・安心なデジタル社会ができないということがひとつです。あと、カードが色々な情報連携することによって、ものすごく便利になります。ワクチン接種記録なんかもマイナポータルから来年には見られるようになりますし、その前の段階の色々なサービスもできるようになると思いますし、ぜひマイナンバーカードをみなさんに持ってもらいたいというのが一つです。
そして我々が目指しているのは、今まで日本ではなかなかなかったプッシュ型のサービスですね。「申請主義」からの脱却。知らないうちにマイナンバーカードを使って、申請も簡単ですし、申請がない場合でも給付ができるようになる。一部もうスタートさせていますけれども、それをさらに進めていきたいと思います。その意味でもマイナンバーカードはデジタル庁にとっても非常に重要な政策のひとつであることは間違いありません。
石倉)私はマイナンバーカードは始まったときに割とすぐ取ったんですね。「ああそうか」という感じで。なにしろ、こういうのは早くやるのがいいという感じがしたので、やりました。
そうすると、私はいろんな企業の仕事をしていたので、給料とか講演料をもらうときにマイナンバーと、カードの裏表を送らなきゃならない、結構めんどくさいなと。それも簡易書留で送ってくださいとか、郵便局にどうして行かなきゃいけないのみたいな感じのことがあったのですが。
住民票とかですね、実はすごい役に立つことが結構あるんですよ。住民票は昔は区役所のセンターのようなところに行かなきゃいけなかったのが、今コンビニでできるんですよね。それも最初あんまりよく知らなくて。さっき「プッシュ型」とおっしゃいましたが、あんまりメリットが具体的に分からなくて、よく見たらコンビニでできるじゃない、ということが分かってからはかなり使うようになりました。
ですからマイナンバーカードを皆さんに持ってもらうということはものすごく大事な話で、これが進んでいけば、もっともっといろんなことができると思うのですが、その前にまず取っていただかなきゃならない。その部分は「こういうことができるんですよ」ということをちゃんと説明しないと、何だかよく分からないと。フォローされているんじゃないのと思う人たちが多いと思うので、「実際にこんなにいいことがあるんですよ」ということを、ちゃんとお伝えすること。それから情報を色んなところをみんな繋げて、マイナンバーカードで免許証とか健康保険証とかですね、そういうことがみんなカバーできるような形になるべく早くできればという風に、一般的な使っている人からいうと、そういう風に思います。