今度の記事は工作ネタの予定だった。しかし、工作に失敗した。この短い記事ではせめてもの供養として、工作がどのように行われ、どう失敗したのかを、反省の意味もこめて紹介したい。
設計の段階では調子が良かった
工作は夢を膨らませることから始まる。最初に思い描いていたのは「寿司をピッタリ止めるゲーム」だ。
もともとこれは10月に行われるMaker Faire Tokyo 2021というイベントに出展するつもりの工作である。コロナ対策のため、手元ではなく足元のフットスイッチで寿司を止めるようにしたい。
「寿司をピッタリ止める」について説明すると、くら寿司のくらオーダーレーンと呼ばれる特急レーンに着想を得ている。注文した寿司がベルトコンベアに乗ってすごい勢いで移動し、自分の席のところでピタっと止まる。これは面白い。
なのでこれを模してゲームにしたら面白いのではないかと思った。大掛かりなベルトコンベアを作るのは大変そうなので、レーンの下にミニ四駆を置き、磁石の力で寿司を動かす予定だ。
ここまでは大変調子が良かった。希望に満ち溢れていた。
ミニ四駆を作りフットスイッチをかませるのは順調だった。
ミニ四駆は私が保育園生のときに流行っていたのだが、ほとんど憶えていない。(調べたらミニ四駆第二次ブームの時らしい。) 私も持っていたが、当時自分で作った記憶はなく、たぶん親に作ってもらったのだろう。
これがあのミニ四駆か。調べると今もなお人気で、カスタマイズの方法の動画がたくさん出てくる。なんだか邪道な使い方をしてしまい申し訳ない気分になってきた。
ここまでかなり順調である。あとはコースを作って磁石で寿司を走らせたら完成…のはずだった。
いやな予感
しかし実はすでに嫌な予感はしている。さきほどのGIFをもう一度掲載する。
いやな予感を抱えたままコースを作る。
段ボールの上に木材をくっつけるときに木工用ボンドを使う予定だったが、たまたま瞬間接着剤しか持ち合わせておらず、その液がもれて指に大量に付着した。これが最初の失敗である。
一生指がオーケーサインの形のままくっついてしまうかもしれないとめちゃくちゃ焦った。しかし説明書に書いてある通りぬるま湯を流しながら指を揉んだら無事剥がれた。よかった~。とても焦っていたので写真はない。記事的にも失敗である。
いやな予感が的中し、絶望へと変わる瞬間
あとはコースにフタをし、フタを隔ててミニ四駆に寿司皿をくっつける。これには磁石の力を利用する。
レーンの入り口に銅線がひっかかって止まった。
銅線の摩擦が強すぎる。銅線が少しでもコースに触れてしまうとミニ四駆は前に進まない。もちろん銅線から手を離して地面においてもうまく行かない。こりゃだめだ~。
いろいろ対策案はある。
- 銅線を摩擦が少なそうなやつにする
- パンタグラフみたいな構造にする
- そもそもラジコンカーを使って無線化する
しかし、どの対策案にも不安要素がある。銅線はどれも被膜で覆われていて多少の摩擦は発生する(そうでないとショートしてしまう)し、パンタグラフみたいな構造にすると寿司っぽさが無くなるし、ラジコンカーを使うといよいよ工作要素がほぼゼロになってしまう。いずれにしても新しく材料を買い足す必要があり、サラリーマンの夏休みの間には終わらない。
そして、ひとつうまく行かなくなったことが引き金となり、心の奥に潜んでいた数々の不安が一気に押し寄せる。そもそもこれは工作なのか?既製品を組み合わせただけなのではないか?仮にうまくいったとしてMaker Faireに出展してもよいレベルなのだろうか?出展できたとして、けっこうなスペースを取ってしまい、同じブースの参加者に迷惑がかかるのではないか?
またそもそも、寿司を止めるゲームって完成したとして面白いのか?疑いだすといろいろ不安になる。
あと、乗り越えるべき壁は実はもう一個あって、寿司皿とミニ四駆の間の磁力が強すぎると、ミニ四駆はフタにくっついてしまって動けなくなるし、逆に磁力が弱いと寿司皿がくっついて来ない。磁力の調整が難しすぎる。
そもそも考えが甘かったのだ。
ここはいさぎよく撤退するべきだと思った。工作は楽しむためのもの。つらくなったら無理に続ける必要はないのではないか。撤退を決めたら、気持ちがすっと楽になった。人間、あきらめない力も大事だが、時には逃げる力も大事だ。(急に説教っぽくなった。)
タダじゃ転ばない
うまく行かなかったということを担当編集の石川さんに相談した。
そして、この短い記事として、事の顛末を説明することになった。「短い記事」扱いだけど、書き始めたらまぁまぁ長くなった。ちなみにMaker Faire出展の夢はまだ続いていて、9月の連休に別のネタで工作をする予定だ。今度のネタはもう少し工作っぽいし、面白いし、成功しそうだと思っている。しかしこれもまたやってみないとわからない。
まとめ
自分の工作の才能のなさを痛感し、ちょっと嫌になった。工作は好きなのに…。しかし、気づいたのだが、そういう私でも無償の愛で受け止めてくれるのが「ヘボコン」であり、「レベルの低いルーブ・ゴールドバーグ・マシンコンテスト」なのではないか。企画者の石川さんが仏様のように見えてくる。
最後に、今回の経験から得られた教訓っぽいものを整理する。ほとんどしくじり先生のやり口だ。
教訓
- 工作は、見通しが甘いとうまくいかないことがある
- うまくいかないとき、撤退も一つの選択肢である。「そういうのは工作にはよくあること」ととらえ、過度に落ち込むべきではない。工作は楽しむためのものなので、つらくなったら本末転倒である。
- できれば「発生しうる不安要素とその対策」を事前に整理しておくとよい。そうすることで、事前に必要な材料の準備ができるし、壁にぶち当たっても落ち着いて対処できる。
- もちろん、「予想外の出来事を楽しむのも工作の醍醐味の一つ」という人もいるかと思う。そういうタイプの人はそれでいいと思います!(自分はふつうにヘコむタイプだと今回わかった。)