Macを手にしたら最初に購入を検討したい周辺機器がApple純正のマウス「Magic Mouse」です。ノート型Macではトラックパッドがあるから必要ないのでは? と思う人もいるかもしれませんが、純正マウスならではの利点はたくさんあるのです。
そもそもMagic Mouseってどんなマウス?
Appleは古くから純正マウスの開発にも力を注いできました。初代Macintosh(1984年)が登場する前のApple Lisa(1983年)にも純正マウスは付属していたので、その歴史はなんと38年にも及びます。
角型の1ボタンマウスにはじまり、初代iMacに付属された円形マウス、初の光学式センサ対応の「Apple Pro Mouse」、スクロールボールを搭載した「Mighty Mouse」など、昔からのMacユーザーであればその革新的な歴代製品をきっと覚えているでしょう。
現在Appleが販売しているMagic Mouseは、世界初のマルチタッチセンサ搭載マウスとして2009年に初代モデルがリリースされました。2015年には新しいデザイン&充電式となった2世代目が誕生、そして今年8月からは同梱ケーブルがUSB-A – LightningケーブルからUSB-C – Lightningケーブルへと変更された新モデルが発売開始されています。
Magic MouseはApple Store直営店やApple Store Onlineなどで8,800円で単品販売されるほか(シルバーモデルのみ)、2021年5月に発売されたばかりの24インチのiMacには標準で付属し、カラフルな本体カラーに合わせた6色のカラーバリエーションが用意されています。
Magic Mouseの本体とジェスチャ操作
では、Magic Mouseはどんなマウスなのか基本スペックから解説していきましょう。まず、本体サイズは幅5.71cm、長さ11.35cmの縦長形状で、高さは2.16cm。一般的なマウスよりも薄くデザインされており、重量は99gと軽量ですが、重心が低いため手にした際の密度感はしっかりとしています。
マウスの上面で特徴的なのは、ホイールや左右ボタンの継ぎ目がなく、「全体が」クリックボタンとして機能する点です。Appleのマウスは「ワンボタン」といった表現がよく見受けられますが、これは半分正解で半分は間違い。現在のMagic Mouseは設定によって片側に副ボタンクリック(右クリック)を割り当てた2ボタンマウスとしても使えます。
また、マウス上面のAppleのロゴマークよりも前の部分には「マルチタッチ」センサが搭載されており、表面を指先で触れることでさまざまなジェスチャ操作が可能です。たとえば、マウスの表面を指で上下左右にスライドさせることで「スクロール」や「スワイプ」操作ができるので、「写真」アプリで写真を切り替えたり、「Safari」で前後のページに移動したり、上下にスクロールしたりする際にとても便利です。
こうしたMagic Mouseの基本設定は「システム環境設定」の[マウス]から行なえます。[ポイントとクリック]と[その他のジェスチャ]という2つのタブが用意されていますので、購入時にはしっかりと設定しておきましょう。それぞれのタブでどのような設定が行なえるかは、以下を参考にしてください。
[ポイントとクリック]タブの設定項目
[スクロールの方向:ナチュラル]
指先の動きに合わせて画面がスクロールします。iPhoneやiPadなどタッチパネル操作に慣れたユーザーであれば違和感は覚えにくいですが、一般的なマウスのスクロールホイールとはスクロール方向が逆向きになるため、もしWindowsからMacにスイッチして使いづらいと感じたらオフにしておくのも1つの方法です。
[副ボタンのクリック]
Magic Mouseを2ボタンマウスとして使うための設定です。Appleがなぜ「右クリックボタン」と呼ばないかというと、右利きの人も左利きの人もまったく同じように使えるユニバーサルアクセスに基づいたデザインだからです。右利きの人はマウスの右側を副ボタンとし、左利きの人は左側を副ボタンとすれば、そこからオプションメニューを呼び出せます。
[スマートズーム]
主にSafariで有効な機能です。Webページで拡大したいブロックにカーソルを合わせ、1本指でMagic Mouseの表面をダブルタップするとコンテンツの内容に合わせてウインドウ内の表示が拡大されます。再度ダブルタップすれば元の表示サイズに戻ります。
[軌跡の速さ]
カーソルの動きをスライドバーで調整できます。また、macOSではカーソルの動きとは別にスクロールの速さも設定可能です。これは[アクセシビリティ]パネルの[ポインタコントロール]という項目から[マウスオプション]を開くことで設定できます。カーソルの挙動がしっくり来ない人はこれらの設定を微調整しておくとよいでしょう。
[その他のジェスチャ]タブの設定項目
[ページ間をスワイプ]
Webページや複数ページのPDFなどで[進む][戻る]の動作をジェスチャで行なえます。[1本指で左右にスクロール]と[2本指で左右にスワイプ]、その両方を有効にする[1本指または2本指でスワイプ]から選べます。2本指での操作を含むジェスチャを選択すると、[フルスクリーンアプリケーション間をスワイプ]の設定は自動的に無効となる点に注意しましょう。
[フルスクリーンアプリケーション間をスワイプ]
デスクトップの操作画面やフルスクリーン表示したアプリ画面の間を2本指の左右スワイプで移動するジェスチャです。特に画面サイズの小さなMacBookシリーズで便利な機能です。
[Mission Control]
2本指でダブルタップすることで、開かれているウインドウやデスクトップ操作画面、フルスクリーン表示のアプリを一覧表示できるMission Controlを開けます。トラックパッドでは設定可能な通知センターの表示やLaunchpad画面、アプリケーションExposé(エクスポゼ)のジェスチャはMagic Mouseでは利用できません。
充電方法とバッテリの持ち
次に、Magic Mouseの裏側にも注目してみましょう。Appleらしく細部までシンプルにデザインされており、滑りを良くするための2本のソールと小さな電源スイッチ、レーザー読み取り方式の光学装置と充電用のLightningポートが配置されています。
Magic Mouseはレーザーによって読み取りを行なうためトラッキングの精度が高く、光沢面でもマウスの動きを認識します。ただし、透明素材に対してはやや弱い傾向もあるため、ガラス素材の机などではマウスパッドを敷くなどの対策をしたほうがいいでしょう。
充電に関してはバッテリとしてリチウムイオン充電池が内蔵されています。充電ポートはiPhoneと同じLightningコネクタですので、本体付属のケーブルでMacやACアダプタを使って充電します。マウス側に充電状況を表示するインジケータを搭載していないので「あとどれくらい使えるかがわかりにくい」と言われることもありますが、「システム環境設定」の[マウス]から充電状況を1%単位で確認できますので問題ありません。
充電時間に関しては急速充電に対応していて、Appleが「2分の充電で9時間使い続けられる」と謳っているように非常に高速です。筆者所有のMagic Mouseは新品ではないため正確な測定ではありませんが、電池残量が10%の状態で45WのACアダプタに接続し、2分の充電で2%回復しました。その9時間経過後も1%の残量低下であったため、日常的な使い方であれば短時間の充電でそのまま使い続けられるでしょう。
一方、残量なしの状態からフル充電する場合は、約2時間以上かかりました。Appleはフル充電で1カ月程度の使用が可能としていますが、実際のところは普段の使用頻度によって大きく変わってきます。また、Lightningケーブルを接続して充電している際はMagic Mouseを裏向きにする必要があります。そのため、電池残量の低下がデスクトップに通知されたら数分程度急速充電し、夜など時間に余裕がある際にフル充電する運用がおすすめです。
Magic Mouseを選ぶべき5つの理由
では、Magic Mouseはどのような人に向いているのでしょうか。ここからはMagic Mouseをおすすめする主な5つの理由をピックアップしていきます。iMacやMac miniなどデスクトップMacユーザーはもちろん、MacBook ProやMacBook AirなどのモバイルMacユーザー、さらにはiPadやWindowsユーザーにとってのメリットがあることも見逃せません。
①「握り込まない」独自の操作感
Magic Mouseの操作感は賛否両論です。しかし、「カーソルのポインティング操作がしにくい」という意見については、若干の誤解が含まれているようにも感じられます。それというのも、一般的なマウスとMagic Mouseは持ち方の基本スタイルが異なるからです。
たとえば、他社製の厚みのあるマウスは、全体を手で「握り込む」ようにホールドしたまま前後左右に動かすのが一般的です。これはエルゴノミクス(人間工学)に配慮された造形で、長時間の作業でも疲れにくく多ボタンの操作にも適しています。しかし、この持ち方をそのままMagic Mouseに適用すると、自分の手にうまくフィットせず思い通りに操作しにくいと感じる人もいるようです。
もちろん唯一の「正しい持ち方」があるわけではありませんが、歴代のAppleマウスのデザインを振り返ると、Magic Mouseにおいても全体を握り込むのではなく左右両端を親指と薬指(および小指)で摘みながら動かすのが基本的な構えとなります。薄く低重心なデザインもそれを意図したものと捉えるのが自然です。
この持ち方では手首が机に接することはほとんどなく、ジェスチャを行なう2本の指先の自由度が高まります。また、手のひら全体で握り込むよりも細かな操作が行ないやすくなり、正確なポインティングが必要とされるクリエイティブワークで効率が高まります。
②macOSと一体化したジェスチャ操作
Magic Mouseは豊富なジェスチャ操作をシステム標準で備えています。ハードウェアとOSの開発元が同じなので、ドライバソフト単独のアップデートなどは基本的に必要ありません。ジェスチャの設定項目も「システム環境設定」に集約されているので、自分好みに設定をカスタマイズできるのも利点です。
③接続の安定性が良好
こちらもシステム標準であることと関係しますが、Magic MouseはMac本体との接続が非常に安定しています。一般的なワイヤレスマウスのようにペアリングが途切れるケースはほぼなく、途切れても再接続時にデスクトップ上にメッセージが表示されるのはApple純正ならでは。驚くことに1台のMacで複数のmacOSをインストールするデュアルブート環境にしていても、一度記憶したMagic MouseはそれぞれのOSですぐに認識されて接続されます。
④iPadのマウスにもなる
これはMacそのものの機能とは直接関係ありませんが、iPadOS 14以降では「AssistiveTouch」の機能により有線およびワイヤレスマウスによるポインタ制御に対応しています。他社製マウスはもちろん、Magic MouseをMac以外でも有効活用したい人は知っておくと便利です。ごく個人的な印象ですが、iPadのポインティング操作ではトラックパッドより快適に感じられます。ディスプレイが指紋だらけになりにくいのもGOODです。
⑤実はWindowsでも使える
あまり知られていませんが、Magic Mouseはちょっとした裏技を使うことで、Windows 10を搭載したPCでも利用できます。Apple公式でサポートしている方法ではないものの、macOS付属の「BootCampアシスタント」から最新のドライバソフトを入手することで使えるようになるのです(BootCampが廃止されたM1 Macでは行なえません)。Windowsのシステム定義ファイル「.inf」のインストール方法やレジストリエディタによるスクロール方向の変更などはここでは解説しませんが、MacとWindows PCの両方を持っているユーザーであればこうした方法があることを知っておき、気になればWebを検索するなどして試してみてください。
ちょっとしたデメリットと次世代モデルへの期待
最後に、人によってはデメリットに感じられる点についても触れておきましょう。個人的にもっとも大きなデメリットと感じるのは、充電中に利用できないことです。前述のように急速充電に対応しているとはいえ、バッテリ切れに遭遇するのはMacの利用中であることがほとんどです。急ぎの仕事では代わりのマウスを探すことになったり不満を覚えることもあるでしょう。
また、Lightningポートの位置の関係で充電中はMagic Mouseを裏返す必要があり、見た目が悪いと感じる人もいます。LEDランプもなく充電状況を画面で確認する必要があるのも煩わしさの要因かもしれません。ポートの位置を変えるかiPhoneのMagSafeのように非接触充電に対応してくれるのが理想ですが、コストとの兼ね合いもあり次世代のモデルでどう対応するのかは気になるところです。
次に気になるのは、経年劣化によりバッテリ容量が低下しても、充電式のバッテリをユーザーによって交換できない点。使い捨て交換とするには本体価格が高価ですし、Appleのサポートでもアクセサリはリサイクルプログラムやバッテリ交換プログラムの対象となっていません。唯一、iMacの付属品で購入した場合は「AppleCare+ for Mac」で購入時から最大3年の延長保証の対象となるため、その期間内に「本来の容量の80%未満になった場合」はサポートされる可能性はあります。
とはいえ、MacBookシリーズの内蔵バッテリと異なり、Magic Mouseのバッテリ劣化状況は確認できませんし、わずか3年でそこまで容量が低下する可能性も低いと考えられます。しかし、一世代前のMagic Mouseが発売開始されたのは2015年のことで、初期に単品で購入した場合はすでに5年以上経過していることになるため、交換の時期を迎えたユーザーもいるでしょう。
新モデルが発売されたばかりですが、これらの不満を解消してくれるような次世代マウスに期待する人も多いのではないでしょうか。すでにMagic Mouseを使っている人もこれから購入を検討している人もAppleの動きに注目していきたいところです。
コメント