Quantum3Dの「RAVEN」は、(おそらく)日本初となったビデオチップにVoodoo Bansheeを搭載したAGPのビデオカードだ。1998年10月発売当時の価格は2万1,800円だった。
当時のVoodooは独自の高効率3D API「Glide」を採用したビデオチップであったが、3D専用であり、Windowsのデスクトップなどを表示させるためには別売りのビデオカードが欠かせなかった。また、そのビデオカードからVoodooを経由して出力する仕組みのため、画質劣化は避けられなかった。
この問題を解消すべく投入されたのが、2DビデオチップとVoodooを1枚に収めた「Voodoo Rush」であったのだが、性能が低かったため、製品としてはほとんど成功しなかった。そこですぐさま代わりに投入されたのが、2Dと3Dを1チップに統合したVoodoo Bansheeである。
Voodoo Bansheeの3DエンジンにVoodoo 2をベースとして、128bitの2Dエンジンを統合。内蔵RAMDACは230MHzまたは250MHzで、最大1,920×1,440ドット表示が可能。登場時の製造プロセスは0.35μmで、クロックは100MHzだった。
性能的には、テクスチャユニットがVoodoo 2の2基から1基に減らされたため、それと比べると若干性能が低かったが、何よりGlideタイトルが動作する点が最大のメリットとなった。また当時としては大容量にあたるビデオメモリ16MBを搭載しながら(一部ブランドでは)2万円を切る価格で登場したためスマッシュヒットした。
ただ、先行した製品はいずれもPCI版であり、当時普及しつつあったAGPスロットで使いたい人は本製品の登場を待つ必要があった(とは言え、BansheeはAGPテクスチャ非対応)。
さて、RAVENを製造したQuantum3Dだが、1998年6月に2枚のVoodoo2を1枚に統合したという超弩級のカード「Obsidian2 X24」をリリースしている。しかしRAVENは非常にオーソドックスなカードであり、ビデオメモリにSamsungの「KM416S1020CT-G10」(512K×16bit×2バンクのSDRAM、100MHz駆動)を8枚搭載していて、「ややチップ枚数が多くて、空きスペースや空きパターンが多いかな?」と思う以外、至って普通のビデオカードだ。
ビデオチップとメモリ以外だと、Cherry Semiconductor製のリニアレギュレータ「CS5203A-1」や、AMD製のユニフォームセクタフラッシュメモリ「Am29F010」の採用が目立つ。
ちなみにQuantum3Dはさすがに現在はビデオカードを製造していないようだが、3Dグラフィックスのソリューションを展開しており、会社としては存続しているようだ。
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