夏といえば花火だ。美しく咲いてパッと散る……その刹那の儚さが日本人の心である。世界で最も精巧で華麗な日本のHANABIは「一瞬の美しさ」に魂を込める職人の心意気そのものと言っていいだろう。そんな “永遠の一瞬” を、今日は皆さんと味わい尽くしたい。
というわけで、今回ご紹介するのは132円で購入した『おやじのプー船』なる噴出花火だ。ユニークな名前に込められた職人の魂の叫び……すなわち詩の意味をともに感じ取ろうではないか。ぜひ温泉に入って浴衣に着替えた後に、続きを読んでいただければ幸いである。
・製造国は中国
一気にワーッと火をつけてファイヤー! とするより、華やいだ後に訪れる静寂までも楽しめるようになったのは大人になってからだろうか。感動の余韻を味わっている間は、一瞬と永遠が出会っているような不思議な感覚。ああ、花火って最高。そんな前置きはさておき……
『おやじのプー船』の製造国は中国だった。
ま、別にいい。流れとしては、導火線の先端に点火すると5〜7秒後にピーッと笛が鳴り、その後オヤジのお尻から風船がふくらむらしい。なるほど、なんとも奥ゆかしい花火である。ファイヤーを終えた後の余韻で風船をふくらませるとは……芸術点が高いですねぇぇ。
それではさっそく。
組み立てて導火線を引っ張り出しておく。あとは先端に火をつけるだけ。刹那的な美しさを堪能すべく慎重に……
いざ点火。
チッ、チリチリチリチリリリ……
シュパァァァアアアアアアアアアアッ!
……………………
ピィィィィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ〜〜ッッ!!
スッ……
ススッ……
……………………
ええっと、そろそろアレが……
アレがそろそろ……
プーッとふくらんで……
風船どしたおいいいいいいいいいいいいいいいいいい!
いい加減ふくらまんかいいいいいいいいいいいいいい!
・風船出ず
──結果的に風船がふくらまなかったおかげで、一瞬と永遠が出会う余韻が異常に長く感じられた。まさか『あっ、出ちゃった! おやじのプー船』のメインディッシュとも言える「風船」が1ミリもふくらまないとはね……
ただただ、おやじの頭に火がついて笛が鳴るだけ。意味不明過ぎるぜ……しかし、それでも花火は花火。真夏の夜の幻である。静寂メインで楽しめる芸術作品であった。
参考リンク:面白花火「おやじのプー船」
執筆:砂子間正貫
Photo:RocketNews24.