Google・Amazon・Facebookなどのハイテク企業が巨額の資金を大学や研究所に提供しているのは倫理的に問題があるという指摘

GIGAZINE
2021年08月02日 20時00分
メモ


by Huzaifa abedeen

EUの6つの主要な学術機関が、Google・Facebook・Amazon・Microsoftから数十億円の資金提供を受け、プライバシーやデータ保護、AI倫理、デジタル市場における競争など、テクノロジー企業のビジネスモデルに関わる問題を研究していると、イギリスの雑誌であるNew Statesmanが報じています。New Statesmanは、テクノロジー企業からの資金提供を受けている研究の対象はテクノロジー企業自身であるため、研究対象が主要な資金提供者になっていると倫理的な問題が生じると指摘しています。

How Google quietly funds Europe’s leading tech policy institutes
https://www.newstatesman.com/business/sectors/2021/07/how-google-quietly-funds-europe-s-leading-tech-policy-institutes

例えば、ドイツのミュンヘン工科大学の人工知能倫理研究所は2019年にFacebookから750万ドル(約8億2300万円)の助成金を受けており、5年分の研究資金を確保しているとのこと。また、フンボルト大学のインターネット・社会研究所はGoogleから約1400万ユーロ(約18億2000万円)の資金提供を受けています。同研究所の資金のうち、第三者提供分の3分の1をテクノロジー企業が占めているそうです。


このように資金提供を実際に受けているにもかかわらず、一部の研究者がテクノロジー企業からの資金提供を受けていることを開示していないことは研究の透明性に問題があると、New Statesmanは指摘。テクノロジー企業から資金提供を受けている研究者はNew Statesmanに対して、「自分たちが研究する上で、『大学を後援する企業に対する批判を控えろ』という表立った圧力は感じていない」と語っています。

しかし、匿名の研究者は、テクノロジー企業からの影響力が少なからずあると証言。さらに「テクノロジー企業は自身に対して無批判な学者と関係を構築し、インセンティブを与えて必要なデータへのアクセスを許可しています」と述べ、テクノロジー企業が政治的につながりのある学者を「御用学者」としてサポートしていると主張しました。

Googleのフランス支社でアカデミック・アウトリーチ担当を務めたことのあるミシェル・ベナール氏も、「GoogleやFacebookなどの企業は、産業界での存在感を高めるために大学のスポンサーになっています」と証言しています。同氏はAIやインターネット、クラウドコンピューティングの研究を行うために大学との関係を構築する仕事についていたそうですが、退職間際の2017年には、技術政策に沿ったテーマが重要視される傾向があったと感じていたそうです。

New Statesmenは、オックスフォード大学インターネット研究所の哲学・情報倫理学教授で哲学者のルチアーノ・フロリディ氏をテクノロジー企業からサポートを手厚く受ける研究者の一人だと主張しています。フロリディ氏は、欧州委員会やイギリスのデータ倫理イノベーションセンターや外務省、金融行動庁などに参加する技術政策専門家で、GoogleやDeepMind、Facebook、中国のテンセント、日本の富士通からも資金提供を受けて研究を行っているとのこと。


フロリディ氏は関連のある企業の中でも特にGoogleとの関係が深く、Googleの「忘れられる権利」委員会や社内の倫理委員会にも参加していたとのこと。フロリディ氏はGoogleの検索エンジンについての研究論文の執筆にも関わっていますが、フロリディ氏を含めGoogleを肯定する研究の著者は、Googleと金銭的な利害関係があることを一切公表していない、とNew Statesmanは指摘しています。

New Statesmanの調査によれば、オックスフォード大学インターネット研究所で資金源を公開している19人の教職員のうち、13人はテクノロジー企業から直接資金を受け取っており、1人はGoogleから全面的な研究資金提供を受けているそうです。結果として、同研究所で調査対象となった学者の75%近くが大手テクノロジー企業から資金提供を受けていることになるとのこと。

フロリディ氏はNew Statesmanへのメールの中で、「私が行っている研究や監修業務は、学術的な自由を尊重した上で、資金提供者からの影響を受けることなく行われています。私はテクノロジー企業に定期的に厳しいアドバイスを行い、企業から、あるいは政府や規制当局から意見を求められた場合には、その企業の行動を批判しています」と述べています。

また、なぜGoogleからの資金提供を公表していないのかという質問に対して、フロリディ氏は「Googleからの資金はもちろん、その他の企業からの資金も、この論文における私の仕事に一切の影響を与えていません」と答えました。


オックスフォード大学インターネット研究所のビクトリア・ナッシュ所長は「さまざまな方面から支援を受けることは、政府が推奨する高等教育機関への資金提供モデルに沿ったものです。外部からの資金提供は、研究成果の価値や完全性を損なうものではありません。実際、私たちの教職員や学生はテクノロジー企業の慣行を強く批判してきました」とコメントしました。

これに対して、匿名の研究者は「テクノロジー企業は批判をすべてもみ消そうとしているのではなく、自分たちにとって都合のいい批判を増幅しようとしています」と述べています。

Googleの広報担当者はNew Statesmanに対し、「私たちは誇りを持って、学術機関や大学、研究機関の研究者を支援しています。研究者は、テクノロジーが社会に与える影響を検証するために、世界をリードする研究を行っています。私たちは、独立性を確保するための厳格な手段や透明性を維持しつつ研究者や組織を支援しているのです」と語りました。

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