先週から話題になっているホビージャパンの問題が、社員を解雇するという処分に発展した。
問題になった編集者のツイートは、次のようなものだ。
- 転売を憎んでいる人たちは、買えなかった欲しいキットが高く売られてるのが面白くないだけだよね? 頑張って買えばいいのでは? 頑張れなくて買えなかったんだから、頑張って買った人からマージン払って買うのって、普通なのでは。
- うーん… 転売問題が難しいところは、 転売されて困るのが一部のユーザーだけってことで、 ものは売れてるからメーカーも小売りも問屋も売り上げがしっかり立つから、 業界的には安泰なんですよ。 逆に、 いつでも買えて割引ガンガンのかつての状況って、店舗が死ぬので、 業界へのダメージもデカいんです。
これ自体は常識的な指摘だが、プラモのマニアから攻撃が集中し、会社は常務取締役編集制作局長など3人を降格し、編集者を「退職処分」にした。ツイートは懲戒解雇の理由にならないので、これは違法な解雇である疑いが強い。
驚いたのはそこからだ。私がこの処分はおかしいと指摘すると、数百のアカウントから攻撃が集中した。
こういう転売をめぐるトラブルは昔からあり、メーカー側がすべて負けている。
「定価」を押しつける価格カルテルは独禁法違反
オタクが怒る気持ちはわかるが、転売屋のやっていることは安く買って高く売るという市場経済の原則である。高い価格で買う人は、その商品を高く評価しているのだから損していない。ヤフオクやメルカリなどのオークションと同じだ。ガンプラの価格が上がったら、バンダイが増産すればいい。生産を絞っているから、転売屋がもうかるのだ。
むしろメーカーのやっている「定価」を維持する行為こそ、違法な価格カルテルである。転売はこのようなカルテルを破る行為であり、これを罰する法律はない。例外はダフ屋を取り締まるために2019年にできた「チケット不正転売禁止法」だが、これは市場経済のルールに反する法律として批判が強く、例外的にしか適用されない。
古物営業法で取り締まっているのは盗品の故買であり、マスクの転売も違法ではなかった。一時的にボトルネックができる場合もあるが、高い価格で売れると増産される。転売で市場の流動性が高まり、生産が増えることはユーザーの利益になるのだ。
このような投機の効率性は、1960年代にフリードマンが変動相場制を提案したことからある経済学の古典的な問題で、答は効率的市場仮説としてノーベル賞を受賞した。
昔はこういう転売やディスカウンターの流通経路をメーカーが止めるヤミ再販が横行したが、1980年代に日米構造協議で大店法がつぶされたころから流れが変わり、公取委がヤミ再販を摘発するようになった。「定価」という言葉が禁止され、「希望小売価格」と表示されるようになったのもこの時期である。
それでもこういう日本的取引慣行は、プラモで遊ぶ子供の脳内にまで深く定着しているようだ。ホビージャパンの処分も、日本社会にカルテル体質がしみこんでいることを感じさせる。
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