Windows 11の次期大型アップデートである「22H2」の目玉となるAndroid Apps on Windows 11のプレビュー版が国内で提供開始された。Amazonアプリストアを利用することで、AndroidアプリをWindows上で稼働させることができるが、現状はアプリの数が圧倒的に少ない。
ここでは完全に自己責任での利用となるが、イレギュラーな方法で手動でアプリをインストールする方法、およびサードパーティ製のアプリストアツールを利用して、より多くのアプリをインストールする方法を紹介する。
※注意
冒頭でお断りしておくが、本稿で紹介する方法の一部は通常の利用方法では想定できないトラブルが発生する可能性がある。場合によっては、意図せずマルウェアなどの不正なアプリをインストールしてしまったり、意図せず有効化した開発者向けの機能やツールが不正使用されたりする可能性もある。このため、本稿の方法を試す場合は、自己責任となる点をご注意いただきたい。
Windows上でAndroidアプリが動く
2022年8月19日、日本国内のWindows 11 Insider向けにAndroid Apps on Windows 11のプレビューが開始された。
秋に予定されているWindows 11の大型アップデート「22H2」だが、すでにWindows Insiderのリリースプレビューに参加しているユーザーは、簡単なセットアップをすることで、Windows上でAndroidアプリを動作させることができる。
本稿では、セットアップについては詳しく解説しないが、基本的には以下の流れで利用可能になる。また、参考になる公式ドキュメントのリンクも掲載するので、事前に確認することをおすすめする。
(1) Windows 11を22H2以降にする
Windows Insiderのリリースプレビューに参加し、Windows Update経由でWindows 11を22H2にアップグレードする(Microsoftストアアプリも22206.1401.6以降にアップデータされる)。
(2) Amazonアプリストアをインストールする
Microsoftストアアプリ(最新版でのみダウンロード可能)を利用し、Amazonアプリストアアプリをインストールする。これで自動的に、仮想化機能およびWindows Subsystem for Android(WSA)がセットアップされる。
Android SDK Platform-Toolsを利用する
WSAに手動でアプリをインストールする方法は、いくつか存在する。もっとも確実なのは、上記のWSAのドキュメントの「テストとデバッグ」にも記載されている通り、Android向けの開発者ツールを利用する方法だ。
スタートメニューから「Android用Windowsサブシステム設定」アプリを利用して、仮想マシンのAndroidで開発者モードを有効にし、それに対してADBコマンドを利用してapkパッケージをインストールする方法となる。コマンドの入力が必要だが、もっとも確実なので、個人的にはこの方法の利用をおすすめする。
(3) 接続先を確認する
開発者モードの画面に表示されるIPアドレスとポートを確認する。とは言え、標準ですべて共通で「127.0.0.1:58526」となる。この表示が出ていればリソースが起動し、接続可能な状態であることが判断できる。
(4) Android SDK Platform-Toolsをダウンロードする
以下のサイトからAndroid SDK Platform Toolsをダウンロードし、ファイルを展開する。その後、「platform-tools」フォルダを任意のフォルダにコピーしておく。頻繁に利用するならパスを通しておくと便利だが、必須ではない。
(5) インストールしたいapkを用意する
インストールしたいapkファイルを用意する。なお、インターネット上にはAndroidアプリを装ったマルウェアなども存在するため、出所のはっきりしないファイルは絶対にインストールしないこと。
(6) Windowsターミナルを起動する
(4)で配置した「platform-tools」フォルダを右クリックして[ターミナルで開く]を実行する。指定したフォルダでWindowsターミナルが起動する。
(7) ADBコマンドでWSAに接続する
「./adb connect 127.0.0.1:58256」でWSAに接続する。初回のみ、デバッグモードでの接続を許可するかどうかが表示されるので、許可しておく。
(8) ADBコマンドでapkをインストールする
「./adb install apkファイル」で、(5)でダウンロードしたapkファイルを指定してインストールを実行する。以上で、スタートメニューにインストールしたアプリが表示され、利用可能になる。
これ以外の方法としては、ユーザーが作成したWSA用のサイドロードツールを利用する方法がある。例えば有名なものとしては、「WSA pacman」などだ。
これらのツールを利用すると、Android SDKが不要なうえ、コマンドではなくGUIでapkをインスト―ルできる。WSA pacmanの場合、apkファイルに同アプリが関連付けされ、ダブルクリックするだけでインストール可能になる(開発者モードのオンなどの操作は必要)。
このほか、Windowsストアなどでも、WSA向けのサイドロード用ツールがいくつか検索にヒットし、ダウンロード可能になっている。ただし、これらのツールは、公式なツールではないので、自己責任での利用となる。ソースが公開されているかどうかを確認したり、既存の利用者の評価を参考したりするなどして、自分で信頼性を確認してから、利用することをおすすめする。
Aurora Storeを利用する
さて、ADBコマンドを利用したサイドロードは、もともと開発者が自分で開発したアプリをインストールして検証するための機能なので、あまり使い勝手がいいとは言えない。
そこで今回、筆者が利用したのが、非公式のアプリストアツールとなる「Aurora Store」だAurora Storeそのものは上記の手順によって手動でapkをサイドロードする必要があるが、インストールしてしまえば、あとはAurora Storeからアプリを検索してインストールすることができる。
もちろん、この手の非公式ストアアプリも、安全性に疑問がある。このため、本稿は、Aurora Storeの利用を推奨するものではなく、あくまでも筆者の利用例の紹介であることをお断りしておく。
ソースが公開されていること、そして上記フォーラムのFAQの記述の限りではアプリをGoogleのPlayストアと同じ場所からダウンロードしている点から、不具合が発生しても最終的に自分で責任を負えば問題ないと判断して、筆者自身は利用する判断をしている。
とは言え、リスクがないとは言い切れないため、ここでは概要のみの紹介にしておく。詳細や利用方法などは上記サイトを参照してほしい。
ちなみに、Aurora Storeは、前述したようにPlayストアと同じ場所からアプリをダウンロードするため、Googleアカウントでのサインインが必要となるが、フォーラムのトップに記載されている通り、「アカウントがGoogleのブラックリストに登録される可能性がある」とのことなので、普段利用しているGoogleアカウントでのサインインは避ける必要がある。
また、無料アプリは匿名サインインでもダウンロードできるが、有料アプリはGoogleアカウントに紐づけられるため、普段利用しているのとは別のGoogleアカウントを作成して利用する必要がある。
ただし、Aurora Storeには有料アプリの決済機能はないので、有料アプリはAurora Storeにサインインしているアカウントを使って、別途、WebなどからGoogleのPlayストア経由で購入し、そのアカウントに紐づけられたアプリをAurora Storeからダウンロードする仕組みになる。
動かないアプリもある
以上、本稿では「Android Apps on Windows 11」の概要、およびAndroid SDKを利用したサイドロードの方法を紹介するとともに、自己責任での利用となるが、筆者の非公式アプリストアの利用体験について述べた。
正直、現状のAmazonアプリストアには、使いたいアプリが豊富にあるとは言いにくいので、この点は今後の改善を期待したいところだ。そのうえで、この機能をユーザー自身が便利に使うためには、現状は非公式な方法しかないのも事実となる。
ただし、すべてのアプリが動作するわけではなく、ゲームなどでは途中で起動に失敗したり、突然アプリが終了したりする場合もある。後述するGeekbench 5などもGPUのテストが実施できなかった(3DMarkなども同様)。互換性が高いとは言えないところだ。
なお、最後に参考までにWSA上でGeekbench 5を実行した結果を掲載しておく。「Compute」の項目が表示されなかったため、「CPU」のみの計測となる。実際のアプリも思ったより快適に動作する印象だが、ゲームなどでは画面処理がもたつくシーンも見られるので、単純には判断できない印象だ。
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