「Instagram」で年齢制限が強化されている。Instagramでは生年月日登録が義務化されているが、13歳未満は利用禁止とされているため、13歳未満の生年月日を入力するとアカウントがブロックされ、13歳以上であると確認できない場合は、アカウント停止となってしまうのだ。Instagramでこのような変更が起きた理由と背景について見ていこう。
問題多発への対処としての変更
Instagramでは、未成年を保護する対策が進んでいる。成人ユーザーが自分をフォローしていない18歳未満のユーザーにメッセージを送ることは禁止されており、16歳未満のユーザーが新たに作成したアカウントはデフォルトで非公開にされるのだ。
Instagramでは、新たにファミリーセンターとペアレンタルコントロールツールも導入されている。これによって保護者は、自分の10代の子どもがInstagramに費やしている時間を確認して時間制限を設定したり、子どもが誰かを報告したとシェアした時に通知を受け取れたりするのだ。
Instagramが10代ユーザーのメンタルに悪影響があると社内向け調査でわかっていたにも関わらず隠していたとして、運営会社であるMetaには非難が殺到していた。10代ユーザーへの対策は、その非難への対策として行ったと考えられる。
さらに保護者は、10代の子どもがフォローしているアカウントや子どもをフォローしているアカウントを確認して、それらのアカウントに関するアップデートも受け取れるようになっている。警察庁発表の「SNSに起因する事犯で被害児童数が多いサイト」によると、InstagramはTwitterに次いで二番目に被害児童が多いとなっており、このような被害に対する対策としての意味もあるだろう。
輪郭、顔のパーツを加工し、顔を理想に近づけたい10代
マンダムの「顔画像の加工に関する女性の年代別意識調査」(2022年5月)によると、自分が写っている画像をSNSにアップしたり、知人に共有したりするとき、自分の顔の加工や補正をしますかという質問に対して、全年代で「いつもする」「たまにする」が合計7割以上となるなど、加工が当たり前となっている。
自分の顔画像を加工する際どの機能をよく使用するかを聞いたところ、全ての機能に関して10代の使用率が最も高くなった。肌補正は全世代で6割以上だった。一方で、顔のパーツやバランスを変える「顔補正機能」は1割以上、「メイク機能」は約2割、10代の方が30代より利用していた。
さらに加工する部位について聞いたところ、輪郭は10代が30代より約3割も高くなっており、小顔にしたいなどのニーズが強い傾向にある。目、鼻、口においても10代が1割以上高くなっている。一方で、肌については30代以上の方が1割以上高くなっていた。
実際の自分の顔を加工画像に近づけたいかと聞いたところ、「すごくそう思う」と答えた人が10代では7割以上だったが、30代以上は4割程度だった。
30代は肌をきれいにして自分をよりきれいに見せようとするが、10代は顔の輪郭やパーツ自体などを変えたいと考えていることが多い。顔画像の加工によって理想の自分の顔を作りあげ、自分の顔もそれに近づけたいと考えているのだ。
メンタルを守って楽しんで使えることが目標
「インスタできれいな子やスタイルが抜群なモデルばかり見ていると、気持ちが落ち込んでしまう。自分はなんでこんな顔でこんなスタイルなんだろうって。食事したくなくなって、一時期、すごく痩せてしまって。親が心配してくれて、拒食症になりかけていたことに気がついた」と、ある女子大生はいう。
「インスタではみんなが友だちに囲まれてて、リッチな生活していて、見ていると落ち込むからほとんど見ないようになった。でも最近、みんなも同じように感じていて、同じように落ち込んだりするんだと知って、ちょっと安心した」
若者のメンタルに悪影響というのは、このように加工したスタイルの良い写真と自分のスタイルを比べたり、キラキラした他人の投稿と自分の生活を比べて落ち込んだりするためだ。若者の中には投稿に自分を近づけたくて、実際に整形に手を出す人も増えているという。
東京イセアクリニックの「現役高校生に聞く『美容整形』への意識調査」(2022年2月)でも、54.5%と半数以上が「美容整形に興味がある」と回答。女子高校生においては69.0%と約7割が、男子高校生でも40.0%と4割が興味ありと回答している。
整形に興味がある理由は、全体だとトップ回答に「悩みやコンプレックスを解消できるから」(45.0%)、次点が「自己肯定感を高めたい」(37.6%)となった。女子高生については半数以上が「悩みやコンプレックスを解消できる(53.6%)」と回答。また、女子高生の3割強が「外見の良し悪しで人生変わる(36.2%)」と感じているのだ。Instagramは、ルッキズムを促進している可能性もある。
Instagramはファッション誌のように見て楽しめ、好きなものを探しやすい。「好きなものだけに囲まれる」ことが簡単に実現できるため、「一番好きなSNS」という子もいる。一方で、Instagramの投稿だけがすべてと思い込むことで、落ち込んだり、自分自身の否定などにつながったりすることがある。対象年齢外の子どもはもちろん、対象年齢以上でも、Instagramの世界は加工が多く混じっていること、現実そのままではないことを知り、うまく距離をとって使うべきだろう。
高橋暁子
ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。執筆・講演・メディア出演・監修などを手掛ける。教育出版中学国語教科書にコラム 掲載中。元小学校教員。
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