バイデン大統領包囲網

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バイデン大統領の采配がピリッとしません。各種世論調査でも支持率は40%程度で不支持率は50%台半ば近くになっています。今年に入ってからは支持率、不支持率ともレンジ内の動きですが、通常、戦争が起きるとアメリカは世界の中で主導的立場をとるため、支持率は上昇しやすくなります。ところが、2月下旬のロシアによるウクライナ侵攻後もほとんどその支持率は上昇していません。

バイデン大統領 narvikk/iStock

ここにきて国内経済を見ると物価高について政権への厳しい視線が向けられています。ようやく政府もガソリン高への対策を検討し始めていますが、行動に移すのが遅きに失するといってもよいでしょう。本日発表になったアメリカ1-3月期のGDPは想定外のマイナス1.4%に沈みました。ただ、解説では輸入品への需要が大きすぎたのが主因となっており、アメリカの消費動向は引き続き健全だとされています。

ただ、私は必ずしも解説通りではないとみています。確かに表面上、消費は堅調なのだと思いますが、賃金上昇率より物価高が上回る中で消費レベルが維持できるとは考えにくいのです。いわゆる駆け込み需要とコロナ消費の最終局面の恩恵、また、必要に迫られて、という「受動的消費増」ではないかとみています。

定義的には2四半期連続でマイナスを計上した場合、景気後退とされます。4-6月の景気動向が肝になりますが、パウエルFRB議長は来週のFOMCで0.50%の利上げを実施すると見込まれ、ひょっとすると6月にも同規模の利上げを実施するとすれば心理的な景気減退は大きくなります。利上げに素直に反応しやすい住宅販売が明白に下落し始めている中で4-6月期がプラス転換になるとは言い切れない状況だと思います。

あくまでも仮定の話ですが、そんなことになれば秋の中間選挙には強烈なダメージとなることは確実です。

もう一点、原油高対策です。SDGsを政策の最重要課題として進めていたバイデン政権にとって環境問題に逆行するように国内原油の増産に走らざるを得ないことはガソリン価格上昇への不満と裏腹に環境軽視と捉えられ、環境派の失望を誘うことになりそうです。

次に対ロシア政策です。プーチン大統領が強気一辺倒な理由は暴走列車を止める西側指導者がいないことであり、アメリカの立場が非常に中途半端であることは否めないところです。

プーチン氏の横暴を止められない理由は何か、と言えば日欧米は第三次世界大戦を非常に恐れているからとみています。つまり、ウクライナ以外の第三国が直接的にロシアに手を出せば、戦域は間違いなく広がり、とりとめがなくなります。そこでウクライナを橋頭保とするしかないのが現状でしょう。

アメリカはウクライナ支援として議会に330億㌦(4兆3000億円)の追加予算を求めています。ただ、アメリカとしてはゼレンスキー大統領にやりにくさを感じているかもしれません。彼はとにかくSNSを介して文句をいうことが非常に多く、昨日も国連事務総長がプーチン氏と先に会ったことにクレームしていました。正直、各国共、ウクライナ支援はするけれどゼレンスキー氏とは距離を置く関係になってきているように感じています。

先日もアメリカ国務長官と国防長官がキーウ入りした件をゼレンスキー氏が事前に暴露っていました。本来であれば複数の国家最重要人物が戦地入りするには極秘行動を伴うものでそれを平気で口外するゼレンスキー氏に誰も文句が言えない状態に驚きを感じています。バイデン氏がゼレンスキー氏に文句を言われない範囲で対応する姿勢が逆に煮え切らない形に映るのかもしれません。

大局的にみれば今回の戦争はバイデン大統領の足元を見透かした上での行動だったように見えます。トランプ氏だったら大丈夫だったのか、と言えば個人的には一定の抑止力はあったと思います。理由は「行動が読めないから」であります。バイデン氏はその点、「政治家」の王道を行く方だけに行動規範が全部読めてしまうのです。世界に権威主義の国家が増えてきている中、民主的であることの重要さは分かるものの結局「政治」というビジネスを背負っていることと、そして高齢で考え方や反応が鈍いこと、更に、使えない副大統領の面倒を見続けなくてはいけないことなど、どうやら難問山積というのが実情ではないでしょうか?

あまりアメリカが格好良くないとアメリカに向かう資本、人材が分散し、アメリカが普通の国になり下がりやしないかと心配になるぐらいです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年4月29日の記事より転載させていただきました。

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