元は琉球王国という独立した国家だった沖縄県には、独自の文化が根付いている。
筆者は過去に高校の修学旅行で1度だけ沖縄を訪れたことがあるのだが、見かける物が未知のものばかりで「外国に来たのかな……?」と錯覚しそうになったのをよく覚えている。
その時に民泊体験をさせてもらい、「沖縄での暮らしってこんな感じなんだ!」と知ったつもりでいたけれど……
この本を読んで、まだまだ沖縄生活の表面的なことしか知らなかったことを思い知らされた。沖縄、深ぇ……!!
・ヒヌカン
こちらの「よくわかる御願ハンドブック 増補改訂」(税込1540円)は、沖縄の出版社「ボーダーインク」から出版されている本だ。
本文ではタイトルの通り、沖縄の「御願(ウグヮン)」という行事について詳しく解説されている。
御願とは、先祖や神様に祈りを捧げる行事のこと。
仏壇に手を合わせるのは沖縄以外の地域でも行うが、沖縄ではそれ以外にも「ヒヌカン」というそれぞれの家にいる神様を拝む行事がある。このヒヌカンは「火の神」という意味で、沖縄の家の台所にはヒヌカンへのお供え物が置いてあることも多いそう。
表紙のような温かみ溢れる手描きイラストも各所で登場し、「ヒヌカン」という存在をこの本を読み始めてから知った筆者でもヒヌカンを拝むために何を準備すればいいのか・どのように配置すればいいのかをイメージしやすかった。
ヒヌカンへのお供え物には、ヒラウコーという複数のお線香が1枚の板状になったお線香やチャーギ(イヌマキ)という沖縄でよく栽培されている植物などを使うらしく、これだけでも沖縄色が強く出ていることが分かる。
実は本来この企画は「御願ハンドブックを読んで実際にできそうなものがあればやってみよう」というものだったのだが、まずこれらのお供え物を用意できそうになくあっさり断念することとなった。無念。
・ご先祖様の供養も網羅
そしてなんとこの御願ハンドブック、ご先祖様への御願のやり方までばっちり網羅している。
沖縄ではお盆だけでなく、1年を通して仏壇に祈るらしい。端午の節句や七夕にも仏壇にお供え物をして手を合わせるようで、ヒヌカンへの御願のページと同じように詳細な解説が掲載されている。
各所に挟まれているコラムには御願以外の風習や細かい注意点も紹介されており、「よくわかる」の名前の通り沖縄の日常に根付いた文化をより深く知ることができるぞ。
・読み物としても
伝統行事の解説というと、なんだか小難しいことが書いてあるのでは……? と不安に思う方もいるかもしれないが、このよくわかる御願ハンドブックはマジで分かりやすい。
例えや説明文がすんなりと頭に入ってくるものばかりで、沖縄の年中行事についての知識がほぼ皆無な筆者が読んでも全く引っかかることなく内容を理解することができた。
よくわかる御願ハンドブックは、実際に御願について困っていることがある人にはもちろん、それ以外の人にも読み物としておススメの本だった。
このハンドブックさえあれば、御願の時にヒヌカンやご先祖様から「おっ」と一目置かれるようになる……かもしれない。