気になるので拾うというプリミティブなゴミ拾いです。
ゴミでも拾いたいなと思った。
善行によって日々の罪を清算したいという発想からではない。気になった物を拾いたいという野良犬のような発想からである。
しかし僕は人間の大人で、拾ったそのあとのことも考える。元の場所に戻すと、それはポイ捨てになってしまう。拾って戻しただけなので道に落ちているゴミの量は変わらないのだが、道にゴミを捨てるという行動それ自体が良くない。
だからゴミ拾いをしようと思った。気になったゴミを拾い、袋にまとめて適切に処分する。
1987年東京出身。会社員。ハンバーグやカレーやチキンライスなどが好物なので、舌が子供すぎやしないかと心配になるときがある。だがコーヒーはブラックでも飲める。動画インタビュー
気になっているゴミがあった
以前から、道でよくデンタルフロスを見つけてなんでそんなものがよく落ちているのかと気になっていた。
これを拾ったところで「なぜ」の部分は全く分からないのだけど、足を止めて写真まで撮ったのであれば、拾って処分した方がスッキリすると思う。ゴミを堂々と見られる。これから僕が捨てるので。
道具を買ったその街で即ゴミ拾い
焼肉屋で会計後にもらいそうな飴だった。焼肉が楽しくなくて気持ちがクサクサして捨ててしまったのだろうか。見回しても近くに焼肉屋はなさそうだったので、少し歩いてみんなと別れて一人になった時に捨てたんだろうな。
そんな風に勝手なことを色々考える。
ペットボトル、缶、吸い殻がやはり多い。この街のゴミをあまねく拾ってしんぜよう、という気持ちはあまりなくて、ただおもしろがりたいだけなのだが、目が合ってしまったゴミは仕方ないので拾う。
少し遠くで、おじいさんがこちらをじっと見ていた。ゴミを眺めたり拾ったりしている僕の善悪を見定めているようだった。「ただゴミを拾ってるんです」と説明したかったが、そうするには距離が遠すぎた。
やっぱりちょっとおもしろい
吸い殻を拾っても特に何も思わないのだが(すごく長かったり短かったりすると少しおもしろい)、たまに「ほぅ…」というゴミに出会う。
常々あるなあと思っていたものが、また見つかった。もうこれは気のせいではないと思う。道にはデンタルフロスがよく落ちているのだ。
歩きながらフロスをする人がいるんだろうか。でも歯に対してそんなに細やかな心配りができる人がフロスをポイっと捨てるだろうか。誰かにフロスを使うことを命じられていて、食後にフロスの数をチェックされるからその場しのぎとしてバレないように捨てるんだろうか。誰だ、そのフロスの数をチェックする人物は。
納得のいく答えの出ないままトングでつまんでみたが、つまんだところで当然分からないままであった。でも今回は素通りせず自分で処分できるので、気持ちは晴れやかだった。
気に入ったゴミはゲームのアイテムみたいにしておこう
人とやってみよう
これは人が増えると気がつくことも増えるのではないかと思い、ライターのりばすとさんを呼んでもう一度ゴミ拾いをしてみることにした。
休みの日に呼ばれてゴミを拾わされるのはあまりに酷なので、今回は本当に気になったものだけに注目して拾っていきましょうというルールを作った。ゴミ拾いというより、散歩のついでにゴミも拾う、というスタンスだ。気が滅入るようなことはしなくていい。
「歩きながら飲んだんですかね」「ちょっと残ってますね」「(自販機のゴミ箱の下にあったので)ペットボトルと思って置いたのかな…」などとしゃべりながら歩いた。
地面を見ながらポツポツ気兼ねなくしゃべれる雰囲気は釣りに近い。無理に間を埋めようとする必要もなければ、相手の集中を妨げてはいけないと気遣う必要もない。
正誤は分からないが、フタの薄さから飲み物の種類を共有できる感じが嬉しかった。
これが一番盛り上がった。秋真っ盛りのこの時期にパピコを嗜んでいた人がいるというのがなんだか既にすごくいいし、2本セットになっているパピコのもう1本はどうしたんだろうというのも気になる。
一人で2本食べるからもう1本は開けずに抱えて持っているのかもしれないし、もう1本は隣で歩いている誰かにあげて、その人は道にゴミを捨てるようなことはしなかったのかもしれない。
りばすとさんが「この部分ってパピコの外袋に入れておきますよね」と妙にリアルなことを思い出してくれたので、隣のもう一人が外袋を持っていてそこに飲み口のゴミを入れた、という情景が浮かんだ。「あなたのゴミもこっちに入れておくよ」と言えれば道に捨てることもなかったのだが、そうは言い出しにくい関係なのかもしれない。
全力で散歩を楽しんだという感慨とともに、結果的に街を少しきれいにしたという清々しい達成感がある。そしてそれを人とやると、釣りのような登山のようなサウナのような「一緒にやったなー」という経験が残ってよかった。焼肉のようなバッティングセンターのような。
ずっとちょっとおもしろい
ずっと、ちょっとだけおもしろかった。あまりに起伏がなくなると思って本文に挟めなかったものがある。