給食とおとなたち ~「全国学校給食集会」とは~(デジタルリマスター)

デイリーポータルZ

お昼になると、ぼーっとしててもご飯が出てくる。給食のことである。

今はお昼になったら自分で買ったり作ったりしなくちゃいけないんだからすごい。

何も考えずに、出てきたものを「わーい」とか「ふーん」とかいって、結局はおいしくたいらげていた。

そんな完全に“受身の食事”だった給食。裏側の仕組みとそこに渦巻くものを目撃してきました。

2007年3月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。情報は取材当時のものです。

全国の給食関係者が集まる会がある

全国の学校給食関係者が集まる会がある、というのを聞きつけた。「全国学校給食集会」だ。

給食関係者が!一堂に会する! それだけでなんだかわくわくする。

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会場は日本青年会館中ホール。全体のイベントジャンルのばらつきがすごい

しかし、集まって、いったい何を話し合うんだろう。

給食というと、決められたメニューを給食センターや学校の調理場で作るというシステマティックなものだと思っていたのだが……。話し合ってどうこう、ということがあるんだろうか。

ニュースやなんかで近頃の給食を見ると、地場産のフカヒレが出たり、ワールドカップのころは世界各国のメニューが出たりなにやら多彩みたいだ。そういうことについて話し合うのかな。

もしかして、未来の給食の献立なんかが分かったりするかもしれない。

ミーハー状態で「学校給食全国集会」の告知もとである「学校給食ニュース」さんに連絡を取ってみた。

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会場には即売スペースがあって、給食関連の書籍や新聞が並んでいた。これが毛穴の開くラインナップ(のちほど写真を掲載します!)

給食の実態、かなり意外

すると、なにやら“給食”というものの後ろに色々と込み入った事情があることが分かってきたのである。

メールでお話を聞かせてくださったのは、学校給食ニュース事務局の牧下圭貴さん。給食の事情についていろいろ伺ったなかで、一番びっくりしたのは

「学校給食は心意気である」

ということだった。給食についてのあれこれを行うのは市町村である。で、給食には「学校給食法」という法律があるそうだが、これが基本的に義務ではないらしいのだ。

つまり、市町村がその心意気ひとつで給食をどうにでもできるわけである。

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給食関係者に向けた参考本。やっぱりコツがあるのか
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こちらは硬派。文字中心の業界紙

そういえば私は小学校を一度転校しているが、そのとき給食の内容がかなり変わったのを覚えている。

転校前の学校では入学当初はご飯食がなく毎日パン食、中学年にあがるころ月に2回のご飯が弁当箱につめた状態で配られる方式で試され出した。

それが転校後はほとんど毎日ご飯食だったのだ。大きなコンテナに入ったご飯をおかず同様配膳する。わかめご飯が大人気で私も一瞬で好きになった。

そうだ、転校前後では牛乳パックの形も違ったし、食器も違った。

地域ごとに気候が違うみたいに、給食も違うのかな~と、当時はそれぐらいに思って気にしなかったのだが、給食の進化が各地でまばらということだったのか。

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当然業界誌だってあるぞ! Q&Aコーナーには「年上の調理員と上手に付き合えません」などといったならではすぎてふるえるお悩みも

集会を通して各地の給食状況を知る

心意気いかんの給食のシステム。それだけに、各地でそれぞれに様々な問題があるという。

集会では、各地の問題を発表しあって共有しつつ、よりよい給食というものを考えよう、というのが基本の姿勢らしい。

あくまでも、派手なメニュー展開や未来の給食の献立を話し合うわけではなかった。

もっと、地に足のついた切実な活動だったのだ。

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学校給食協会の公式キャラというのもいた。ネコのタロー。バンダナやエプロンといったオリジナルグッズも販売
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給食だより用のうめくさ集なんてのもあった 給食だより、懐かしい……
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おっかなびっくり会場へ

この「全国学校給食集会」には社会運動の側面がある。給食の民間委託やセンター化に反対する意見が大半だったりと、団結というか、勢いがある。

給食関係する方々は会に参加の方々はもちろん、不参加の方もさまざまな意見をお持ちだろう。その点もふまえてありさまをのぞかせてもらう、その気持ちで拝聴した。

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熱気むんむんのオーディエンスから次々に発言が

拝聴などということばが出るくらいだから相当及び腰でもある。こんな大マジな集会に乗り込んで、記事まで書こうなんて大丈夫か

でも、考えてみれば、参加の方々は私が子供の頃学校で、もしかしたら一番頼りにしていた調理員の方々なのだ。あのときのみなさんの思いを知りたい。

着いてみると、これがまたすごい人であった。後で聞いたところなんと700人が集まったそうだ。立ち見も出ていた。ほぼ全員が給食関係者である。すごい。

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発言者の働く現場が地図にマークされていく。北海道から熊本まで(このあと鹿児島からの発言もあった)

給食業界の現場が語られていく!

12時のスタートから16時の終了の間に2本の講演にあわせて会場参加型のシンポジウムが行われた。

専門的な2本の講演も興味深かったが、会場が沸いたのはシンポジウムのコーナーであった。

挙手制で自由に参加者たちが自分のかかわっている現場について発言していく。給食というものが熱く語られるという状況、これは普通に暮らしているとちょっとない。

・食材にうとい子供たちにカタクリを触らせたら子供、大喜び
・地元の生産者から食材を調達するようにした。土付きの野菜がどんどん入ってくるので作業は大変だが、質はとてもいい
・教室を回って調理員が一緒に給食を食べるようにしたら、残量(子供が給食を残す量)が激減した
・農家と契約して野菜を調達している。人参が豊作のとき、毎日人参のメニューを出した。子供が「なんで毎日人参が?」と思ったときが食育のチャンスなのではと思う

各地からの発言では方言も闊達に飛び交った。熱い。

この集会が始まったのは1983年だというから、私が小学生のころは既に行われていたことになる。

むしゃむしゃ、何も知らずに出された給食をただただ食べているころ、おとなたちははこんなふうに熱く語っていたのか。

なお、1983年の最初の活動は「カレー統一献立反対」という集会だったそうだ。そんなムーブメントがあったとは!

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なお、食育の推進キャラクターは長澤まさみさんとのこと

揚げパン、ソフト麺、さき割れスプーン……給食の思い出はしゃべりだすととどまることがない。

人が集まると、食べてきた給食の違いに驚かされたりする。

私が強烈に覚えているのは、半解凍になってビニールに入っている納豆だ。と「10秒にぎって完全に解凍する」というものだった。本当にみんなじっと握っていた。

そうだ、はちみつとピーナツと味噌をあえたもの、小分けジャムのようなパックにはいっていて切り口からにゅるっとしぼり出して食べるなんてのもあったな。

今考えてみるとちょっと普通のご飯とは違っていた給食。それをささえる熱いおとなたちをまのあたりにして、子どもの私が感激したように錯覚するいちにちだった。

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おみやげに買った学校給食協会のオリジナルナプキン、給食柄!

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