毎日新聞は2022年10月28日までに、在ウクライナ日本大使館にウクライナ語を理解できる人物がいないと問題視した記事を取り消し、根幹部分に誤りがあったと謝罪した。
報道を受け、読者からは外務省の人材配置のずさんさを批判する声が相次ぎ、野党から国会で追及されるまでの騒動になっていた。しかし、外務省は「事実と異なる」と否定している。
「外務省が隠し通したいスキャンダラスな情報」
毎日新聞は10月21日、「臨機応変ができない 在ウクライナ日本大使館の不手際」と題したウェブ記事を配信した。筆者は軍事アナリストの小川和久氏。
記事では、10月5日に7か月ぶりに業務を再開したウクライナの日本大使館に言及し、再開までの期間が先進7か国(G7)と比べて異様に遅いと糾弾する。
その背景には「深刻な秘密」があったとうそぶき、「本稿では、林芳正外相にも伝えられていない、スキャンダルとも言うべき日本外交の実態の一端を、日本国民に伝えたいと思う」と物々しく予告した。
小川氏によれば、在ウクライナ日本大使館の書記官とウクライナの公的機関で交わされたメールを7月に入手し、「国際政治と安全保障を専門としている手前、各国の秘密扱いの情報が飛び込んでくることもたまにはあるが、今回ばかりは外務省が隠し通したいスキャンダラスな情報、それも日本外交のレベルの低さを世界にさらすという意味では国家機密にあたる情報で、さしもの私もがくぜんとさせられた」と中身の衝撃度を伝える。
ウクライナ側からのロシア語でのメールに対し、書記官は英語で書いてほしいとの要望とともに、その理由を「日本大使館にはウクライナ語がわかる人間が一人もいない」と伝えていたという。
小川氏は「きわめて深刻な問題だ」と事態の重大さを強調し、「しかも、ウクライナ国民の多くに通用するロシア語で記したメールをウクライナ語だと思い、英語で返信してほしいと求めるに至っては、ロシア語ができる人間も大使館内には限られているのではないかと思える」と機能不全に陥っているのではと推察した。