100億年で1秒しか狂わない時計が誕生。
「1秒」ってどのくらいの長さかわかりますか? 「秒」の定義は時代とともに変化しています。
20世紀半ばまでは地球の自転や公転にかかる時間から割り出していましたが、誤差が大きく、天文学で時間を測ることには限界がありました。
その後、原子がマイクロ波を吸収する性質を用いた時間をはかるセシウム原子時計が採用され、現在にいたるまで国際基準になっています。そして今、レーザー周波数を使用した最新の原子時計が、「秒」の定義を変えようとしています。
ドイツの国立計量研究所である物理工学技術局(PTB)では最近、新しいタイプのイオン・クリスタル・クロックを開発。これが、記録的な精度を実現。『Physical Review Letters』によると、このクロックは現在のセシウム時計の1,000倍の精度で時間と周波数を測定することができるのだそう。
光時計の仕組みと精度
たとえば、柱時計は振り子の往復で1秒を刻みますよね。一方、光原子時計はレーザー光で原子を捕まえ、その振動数で時間を計測します。特に電界に固定されるイオンを用いたイオン時計は、数十億年に1秒の誤差、という正確さで時を刻むことが可能に。
イオン時計には単一のイオンで動作するものもありますが、新たに開発された光イオン・クリスタル・クロックでは、複数種類のイオンを同時にトラップして構造化しており、測定効率が向上。異なるタイプのイオンを組み合わせることで強度も増すとのこと。
PTB物理学者のヨナス・ケラー氏は、
高精度を実現するために、有利な性質を持つインジウムイオンを使用し、イッテルビウムイオンを結晶に加えることで効率的に冷却します。
と話しています。
イオンをキャッチするトラップの設計や、冷却したイオンを結晶内に正確に配置する方法を開発するのに苦労したそうですが、新しいクロックの精度は小数点以下18ケタだそう。(0.000000000000000001秒くらい?)
「秒」の定義が変わるとどうなる?
こうした計時技術の進化を踏まえ、2030年ごろに秒の再定義が行われると言われています。定義が変わるということは、今よりも目盛りの細かい物差しが手に入るということで、それは時代が動くことにつながります。
高精度の時計が活躍する例といえば、GPS。かつて、当時最先端だったセシウム原子時計を搭載したGPSをフル活用したのが、Google(グーグル)だと言えるかもしれません。同社はカーナビやスマホナビ、それに関連する情報プラットフォームの、今やトップに立っています。
秒の定義が変わることによって、宇宙科学や産業が大きく動くことになるかもしれません。
Source: Earth.com