MSI Claw 8 AI+は買いなのか?ポータブルゲーミングPCの進化と課題

MSIのClawが、いよいよ名誉挽回です。

2024年に登場したMSI Claw A1Mは、Gizmodoだけでなく他のレビュアーたちからも、高い評価は得られませんでした。多くが期待外れの性能と、他社製品に劣る操作性を批判しています。

私にとってその最大の欠点は価格でした。800ドルにも及ぶ金額は、WindowsベースのポータブルゲーミングPCの中でも好評なASUSのROG Ally Xと同じ価格です。

では、新しくなったMSI Claw 8 AI+は、どのようなデバイスなのでしょうか。

まず、Claw 8 AI+の価格は900ドルです。これは、他主要メーカーの中でも高価な部類に入り、つまりはその分実力が問われる価格帯です。

Claw 8 AI+は、8インチの大きめサイズの画面(750ドルのLenovo Legion Goと同サイズ)と、刷新されたデザイン、新しいIntel Core Ultra 7 258Vを搭載しています。前世代のCore Ultra 7 155Hと比較して、本機搭載の内蔵グラフィックス、Intel Arc 140Vは、大幅に性能を向上させています。

またClaw 8 AI+は80Whのバッテリー容量(Ally Xと同じ)と、32GBのRAMを備えています。ただし、Steam Deck OLEDが同じ1TB SSDストレージを備えながら250ドル安いことを考慮すると、少し割高に感じるかもしれません。

MSI Claw 8 AI+ 概要まとめ

MSI Claw 8 AI+は、高負荷ゲームでは堅実なパフォーマンスを発揮し、バッテリー性能も良好ですが、ソフトウェアがいまひとつな印象です。

長所

・高負荷のゲームで堅実なパフォーマンス

・高品質の画面と驚くほど大きな音量

・80Whのバッテリー容量により、長時間のゲームプレイが可能

短所

・Center Mソフトウェアが不安定

・手が小さい人には、操作性に難あり

・他社製品と比べて重く、持ち運びが不安

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Photo: Adriano Contreras / Gizmodo

IntelのCPU、Lunar Lakeは、他の多くのx86 CPUよりもバッテリー性能が大幅に向上している点が特徴です。テストでは、TDP(熱設計電力)30Wで動作させた際に、Intel Core Ultra 7 258Vは、2024年に主流のAMD Z1 Extremeよりも、高いフレームレートを出せることが確認されています。

ゲームタイトルによってその差は異なりますが、もし大画面で強力なポータブルゲーミングPCを探しているなら、有力な候補になるでしょう。

もちろん、Ryzen AI 9 HX 370を搭載したONEXPLAYER、OneXFly F1 Proという選択肢もあります。しかし、価格は1,600ドルから1,700ドルになるので、自分に合った価格と性能のバランスをしっかりと見極める必要があるでしょう。

持ってみて高いフィット感を得られるなら、本機を購入する検討の余地ありです。ただ、いくつかまだ改善が必要なところがあることも、覚えておいてください。

Center Mソフトウェアは元のバージョンから改良されており、以前よりもゲームへのアクセスや、設定の変更がしやすくなっています。しかし残念ながら、システムが勝手にPCコントロールに切り替わり、ボタンを押しても反応しないという問題が発生します。時には再起動をしなければ使えないこともありました。

持ち心地に関しては、その大きさのためか、やや特殊な形状にも感じられました。もし手の大きな人がポータブルゲーミングPCを探しているなら、真っ先にClaw 8 AI+をおすすめするでしょう。ただ、2025年にはAPUのさらなる進化もありそうなので、Claw 8 AI+が今年ベストな買い物かと問われると、即答はできません。

MSI Claw 8 AI+は現在予約受付中で、2025年1月15日に出荷される予定です。

デザインと操作性

Claw 8 AI+の第一印象は、「重い!」ということでした。随分厚みもあるなと感じます。重量は795グラムで、数時間持ち上げていると、結構負担になるなという印象です。

確かに素晴らしいゲームプレイを楽しめる可能性を秘めたデバイスですが、ソファでリラックスしながら数時間遊んでみると、途中で膝の上に乗せたいと感じてしまいました。そんな時、突起した背面が役に立ちました。

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Photo: Adriano Contreras / Gizmodo

以前のClawでは、指が背面通気口に触れる問題がありましたが、本機では解消されています。背面ボタンもよりフラットになり、以前よりも押しやすくなりました。

Claw 8のトリガーは、AllyやSteam Deckのものよりも、はるかに「トリガーらしい」設計になっていると感じます。ただ、ハンドルのサイズが大きいため、シューティングゲームのようなジャンルをプレイする際には、指を伸ばして操作するのが少し苦痛に感じる人もいるかもしれません。

一方、左右のバンパーボタンの設計は、元のClawよりも大幅に改善されています。内側ではなく下方向に押し込むように再設計され、『Warhammer 40000: Space Marine 2』のようなゲームでは、より操作が快適になりました。

前面のボタンは、Ally Xよりも丸みを帯びたデザインで、A、B、X、Yのボタンの背後にはRGBライトを搭載しています。十字キーも改良され、使いやすくなりました。ただ、ホールエフェクトスティックやほとんどのボタン(トリガーを除く)の感触には満足していますが、全体的に配置が広すぎると感じました。

ソフトウェア

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Photo: Adriano Contreras / Gizmodo

操作性だけでなく、ソフトウェアの改良も行なわれています。Windows 11ベースデバイスの欠点を補うために導入されているCenter Mソフトウェア(性能や設定を最適化して、ゲーム体験を快適にする管理ツール)が、より洗練されました。

最もよく使うランチャーへのアクセスが容易になり、新しいクイック設定メニューが追加され、電力設定、キーボード、Wi-Fi、Bluetoothの設定を簡単に変更できるようになりました。

さらに、新しいメニューにはXbox Game Barが統合されています。今後、拡張機能やカスタマイズをどれだけ行なうことができるようになるか、期待したいところです。

ただ、自動的にPCコントロールに切り替わり、フェイスボタンが認識されなくなる問題が何度か起きました。画面を誤ってタップした時に起きているようですが、8インチという大きなディスプレイのため、多くの人が体験しそうなトラブルです。

また、Center Mがランダムに不具合を起こし使用不能となり、再起動が必要になることもありました。

これらの問題は、おそらく時間が経てば修正されていくでしょう。WindowsベースのポータブルゲーミングPCに共通する課題とも言える部分です。ここに、Steam Deckが依然として人気が高い理由があるのだと思います。

その点、ASUSやLenovoはMSIよりも先を行っており、スムーズな体験を提供しています。MSIもほぼ迫りつつありますが、あと一歩及ばない印象です。

パフォーマンス

では、気になるその性能はどうなのか。複数のベンチマークテストで、確かな結果を残しています。

Claw 8をClaw A1Mと比較すると、3D Mark Time Spyのテストで約700ポイント、3D Mark Steel Nomadのテストで約800ポイント上回っています。最新のアップデートを適用したROG Ally Xが、30W TDPでTime Spyスコア3,538を記録しているのに対し、Claw 8は4,437を記録しました。

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Photo: Adriano Contreras / Gizmodo

サイバーパンク2077』のベンチマークでは、Steam Deck推奨設定と、Intel XeSSまたはAMD FSRを使用した場合、Claw 8は1920×1080の解像度で52 FPSを記録しました。

最大となる1920×1200の解像度では若干フレームレートが落ちますが、スコアに影響を与えるほどではありませんでした。同様の結果が『アサシン クリード ヴァルハラ』や『SHADOW OF THE TOMB RAIDER』といったゲームでも見られ、Claw 8は同じ設定でAlly Xを5~10 FPS上回ることができました

典型的な2Dアクションゲームでは安定したパフォーマンスを得られます。『Hades II』のようなゲームは、Clawの大きな8インチディスプレイで非常に鮮やかに映えてくれます。一方で、最新の3Dゲームの結果はまちまちです。たとえば、『CONTROL』を中程度の設定でプレイすると、大きなアリーナエリアでは30~35FPS程度になります

『バルダーズ・ゲート3』では、高設定でAct Iをプレイする場合、AMD FSRを使用して30~40FPSを維持できます。ただし、Act IIIの都市部では、プレイ可能なフレームレートを得るためにグラフィック設定をやや下げる必要があるかもしれません。

残念ながら、『Indiana Jones: The Great Circle』のような非常に負荷の高い最新タイトルを30 FPS以上で動作させるのは、解像度を下げたとしてもできません。やはり、ゲームを最高レベルでプレイするためには、まだまだ携帯機では不十分なのでしょうか。

たとえば、『Warhammer 40000: Space Marine 2』のようなゲームでは、最大解像度で低設定にしても、わずか30 FPSを少し超える程度の動作状況です。これはAlly Xと比べてもあまり優れた結果とは言えません。

どうしても、専用GPUがないことの制限を受けてしまうのでしょう。Claw 8の900ドルという価格は、良質な低価格帯のゲーミングノートPCに匹敵します。

電源を外して使用すると、約30Wの電力でCPUは動作し、ファンを駆動するために合計45Wを使用していました。それでもゲームをプレイすることはできますが、ファンが回り続けるため、バッテリーの持続時間が短くなるでしょう。

バッテリー

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上から、Lenovo Legion Go、MSI Claw 8 AI+、ASUS ROG Ally X Photo: Adriano Contreras / Gizmodo

Lunar Lakeに加えて、Claw 8のもう一つの注目機能は、80Whのバッテリー容量と、2つのThunderbolt 4ポートを介した64W充電への対応でしょう。この容量はAlly Xと同等です。MSIによると、通常の連続使用で約4時間のバッテリー駆動が可能だとしていますが、その時間はゲームによって大きく変わります。

『Warhammer 40000: Space Marine 2』を30Wで連続プレイした場合、バッテリー残量10%になるまで約1時間30分でした。これは、負荷の高いゲームに対し、比較的強力なバッテリーだと言えます。クラウドゲーミングであれば、より良いフレームレートを得られ、バッテリーを4時間以上に延ばすこともできると思います。

私はここ数か月、Steam Deck OLEDで『メタファー:リファンタジオ』を遊んでいます。Claw 8でも試したところ、”AIエンジン“により、バッテリー使用を最適化し、フル充電状態から3時間稼働してくれました。Steam Deck OLEDでは、設定を下げても、バッテリーは2時間程度しかもちません。

画面が大きいにもかかわらず、Claw 8はAlly Xの大容量バッテリーと互角に渡り合える性能を持っています。ただし、80Whのバッテリー容量があるからといって、40Whのバッテリーを搭載したデバイスの2倍バッテリーがもつわけではないことには注意が必要です。特に、より高度な設定をする場合にはなおさらです。

画面と音

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Photo: Adriano Contreras / Gizmodo

私は、ポータブルゲーミングPCにおいて、どうしても大画面がほしいというタイプではありませんが、本機のIPS LCDスクリーンは素晴らしいものだと思いました。とても明るく、可変リフレッシュレート対応のディスプレイは最大120Hzまで対応しています。『Hades II』のようなゲームに適しているでしょう。

さらに、ベゼルの幅は、全体的に見るとSteam DeckやROG Allyよりもやや狭く、特に上部と側面でそれが顕著です。Lenovo Legion Goのベゼルに近いデザインで、画面の占有率を最大化しているという点で見事です。

音質について最も驚いたのは、2つの2Wスピーカーの性能です。このサイズのデバイスとしては非常に大音量で、部屋全体に響くほどの音を提供してくれました。

ただし、900ドルの価格を考慮すると、この音質が満足のいくものかどうかは疑問が残ります。高音域ではややこもったように感じることがあり、ヘッドホンを使った方が良い場合もあるでしょう。それでも、『メタファー:リファンタジオ』の素晴らしいサウンドトラックを聴いている間、通常はヘッドフォンを使うところを、Claw 8ではその必要性を感じませんでした

総評

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Photo: Adriano Contreras / Gizmodo

MSI Claw 8 AI+は、Claw A1Mでがっかりだった部分を補ってくれました。重量感がありますが、大きなディスプレイで遊びたい人には良い選択肢になるはずです。

ただ個人的には、8インチは少し大きすぎると感じました。Ally XやSteam Deckで採用されている7インチの方が、私の手にはフィットするように思います。それに加えて、小型デバイスは携帯性が高く、私にとっては、楽に持ち出せることの方が重要なようです。

来年にはAMDのZ2 APUが登場するという話があります。Z1でもすでに多くのゲーマーのニーズを満たしてくれましたが、再設計されたAPUが新たな基準を打ち立てる期待もしています。

最近のリーク情報によると、新しいZ2 Extremeチップは12基のRDNA 3.5コアを持ち、高品質なStrix Pointシリーズベースのアーキテクチャを採用する可能性があるそうです。

こうした今後の期待がありつつも、なるべく早く、大きな画面でのゲーム体験を求めている人には、MSI Claw 8 AI+は確実におすすめできるデバイスです。あまり噂情報に振り回されるのも良くないですが、とりあえずは、もうすぐ登場しそうなLenovoの新機種を待ってからでも遅くはないかもしれません。

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