リアルとフェイク、環境にやさしいクリスマスツリーはどっち?

うちのフェイクツリーはずっとクローゼットの中。

クリスマスが近づくと「リアルツリーと人工ツリー、どっちが環境にいいの?」という話題が飛び交います。毎年リアルな木を買って、コンポストするか捨てるかするなら、ずっと使い続ける人工ツリーのほうがいいんじゃないの? と思ってきましたが、まじめに答えを出してくれた科学者がいます。

リアルツリーのほうが持続可能。でも…

イギリスのシェフィールド大学で持続可能性評価の上級研究員をしているStuart Walker氏によると、本物のクリスマスツリーのほうが、人工ツリーよりも環境負荷が小さいそうですよ。

ただ、これには条件があるんです。多くの人がクリスマス前後の数十日のために毎年ツリーを購入して、シーズンが終わると廃棄します。その場合、人工ツリーを5年以上使い続ければ、環境負荷がリアルツリーよりも小さくなる可能性があるといいます。

環境負荷を比較するといっても、個人によって購入方法や処分方法は違ってくるため、Walker氏はいくつかの共通する条件を設定して分析しました。

まず、比較対象は、以下の3タイプです。

  • 人工ツリー(5年に一度買い換え)
  • 毎年使い捨てるリアルツリー
  • 鉢植えツリー(排出量は5年間の累計)

また、ツリーの運搬によって排出されるCO2は、すべてのタイプで同じ量になっており、運搬回数に比例して増えるように設定されています。人工ツリーは、5年で運搬が1回、使い捨てリアルツリーと鉢植えツリーは毎年2回です。運搬方法と距離は、ハイブリッド車で片道8kmに統一されています。

さらに、ツリーの高さは、燃焼時や埋め立て後に放出されるCO2の量や、鉢植えツリーが吸収するCO2の量、人工ツリーに使われる部品の製造時に排出されるCO2の量を同じ条件で推算するために、すべてのタイプで2mに統一されています。

使い終わった後の処分方法は、焼却、埋め立て、生分解(人工ツリーは不可能)を比較しています。

人工ツリーのライフサイクル全体における温室効果ガス排出量は、二酸化炭素換算で25~30kgです。人工ツリーは中国で製造されて輸送、幹や枝は鉄製、葉の部分はプラスチックなどの条件があり、それぞれの部品の製造時に排出される温室効果ガスも含まれます。数値に幅があるのは、処分する際に燃やすのか、埋め立てるのかなどの違いとのこと。

それに対して、リアルツリーの排出量は、5~10kgになっています。処分方法などによって違ってきますが、人工ツリーの排出量は、リアルツリーの3~5倍ということになります。

最も持続可能なツリーは圧倒的に鉢植え

こういった条件を考慮に入れて分析した結果、持続可能クリスマスツリーのチャンピオンは、圧倒的な差で鉢植えツリーでした。

鉢植えツリーの強みは、根を張って生きているところ。クリスマスシーズンだけ自宅に置くために、片道8kmを毎年2往復するため、CO2排出量は人工ツリーと使い捨てリアルツリーよりも多くなります。でも、5年間ずっとCO2を吸収し続けるので、この分析で用いた条件下では、排出量よりも吸収量のほうが多くなっています。Walker氏によると、ツリーショップまでの距離が片道15km以上になると、排出量が吸収量を超えるとのこと。

Walker氏の分析による使用開始5年後の最終順位は次のようになりました。

1位: 鉢植えツリー

2位: 使い捨てリアルツリー(埋め立て処分)

3位: 使い捨てリアルツリー(生分解処分)

4位: 人工ツリー

5位: 使い捨てリアルツリー(焼却処分)

人工ツリーの環境負荷は、6年使えば生分解処分するリアルツリーよりも小さくなり、8年使えば埋め立て処分のリアルツリーよりも小さくなります。

排出量が少ない処分方法を選ぶ

毎年クリスマス用に切り倒されたリアルツリーを買って、シーズン終了後に処分するのを批判する声は以前からあるんですよね。アパートの共同ゴミ捨てコンテナに突き刺さっていたり、粗大ごみ回収の日に道ばたに置かれている生ツリーを見るとため息が出ます。

Walker氏は、使い捨てツリーにしろ、人工ツリーにしろ、なるべく排出量が少ない処分方法を選ぶことを推奨しています。人工ツリーなら、燃やすよりも埋め立てのほうが排出量は少なくすむといいます。人工ツリーの構造上、リサイクルは無理っぽいですしね。

Walker氏は、今回の調査から得た重要なこととして、声明の中で次のように述べています。

「私の研究では、本物の木でできたクリスマスツリーが最も持続可能な選択肢であることが多いという結論に達しました。しかし、適切に処分した場合に限ります。このことは、生活のあらゆる側面において、再利用やリサイクル持続可能な代替品を考慮に入れる重要性を強調しています。最も持続可能な選択肢は、すでに所有しているものである場合が多く、人工のクリスマスツリーでも、できるだけ長く再利用すれば、環境負荷を減らせます。」

筆者は15年くらい同じ人工ツリーを使い続けている(飾るとネコたちが破壊するのでもう何年も箱の中ですけど)ので、1年あたりの排出量は相当小さくなっているはず。焼却も埋め立ても避けるために、これからもクローゼットの中で眠ってもらいます。飾らなければ電飾にも電気を使わないのでさらにサステナブル。

引っ越したら、移動で排出したCO2も足されてしまうんかな…。

Source: University of Sheffield

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