SNSの新トレンドか。空港の手荷物検査でキラキラ写真ってアリ?

もっと殺伐としてるべき?

空港のセキュリティチェックって、何回やっても緊張します。手荷物の液体は全部ジップロックに入ってるか、リップクリームは液体扱いされないか、コンピューターは裸でトレイに置くべきか、パスポートをトレイに置いて失くしたらどうしよう、靴は脱ぐのか脱がないのか、後ろの人がイライラしてないか、荷物を忘れてないか…などなど、並び始めてから全荷物を回収するまで、普段の10倍くらいの密度でいろんな心配をしてしまいます。

でもそんなピリピリする空間でも、「あ、可愛い」と思える瞬間を見つけて(というか自らそんなキラキラなグッズを持ち込んで)シェアしてる人たちがいるみたいです。The GuardianNew York Timesによれば、最近のTikTokやInstagramには「airport tray aesthetic(空港トレイのスタイル)」などと称し、バッグやらガジェットやらお洒落な雑貨・小物やらをパスポートやチケットともに美しく収めた空港トレイを撮った写真がたくさんアップされてます。

プラスチックの箱が表現の場に

グラフィックデザイナーのPiper Taichさんは、そんな空港トレイ写真を発信しているひとり。カラフルなバッグやスニーカーやサンダルに、カメラやサングラス、アクセサリーやちょっとした化粧品、そして飛行機のチケットをきれいにアレンジしています。カメラがコンデジだったり、アナログな腕時計が入ってたりするところにこだわりを感じます。

@pipertaich

📰 still getting vile hate comments 2 months later for putting accessories in a bin but….

♬ Club Penguin Pizza Parlor Theme – TootyMcNooty

ファッション分野のコンテンツクリエイター・Chelsea Henriquezさんは、ハイブランドのバッグにスニーカーをコーディネートして、ミックス感が光ります。この方もだいたいいつもコンデジを入れてますね。

@chelseaasoflate Replying to @Shelby Alexis 🤍 ♬ honeypie – 💐

プラスチックの退屈な箱が、旅のワクワク感を凝縮したムードボードに早変わり、とでもいいましょうか。「airport tray aesthetic」とか「TSA tray aesthetic」(TSAは米国運輸保安庁、空港セキュリティを管轄)といったキーワードでTikTokやInstagram、Pinterestあたりを検索すると、そんな写真が無数に出てきます。

この流れを企業のプロモーションに利用する事例も出ています。英国の出版社・フェイバーは、自社の書籍をガジェットや旅小物とコーディネートした空港トレイ写真をInstagramに載せて、話題作りに役立ててます。

ちなみにこのトレンドよりはるかに前の2018年、MacBookやらiPhoneやらiPadを積み上げた空港トレイを撮って「iTray」と命名した方もいて、個人的には大変共感いたしました。

そこでやらなくても、の声

…と、こういう写真を見てるだけなら、人のカバンの中身や旅行ガジェットを見せてもらう感覚で楽しいんです。が、これをあのピリピリした空港のセキュリティゲートで撮ってるの?と思うと、小心者の自分はドキドキしてきます。TikTokやInstagramのコメント欄にも「邪魔じゃない?」とか「人の流れを止めないで」といった声がかなり集まっています。

こうした声に応えて、上のHenriquezさんは「空港トレイ写真を撮るときは、セキュリティチェックが終わってからにしてね」という動画をアップしたりしています(ということは、チェックの前に撮影する猛者もいたんでしょうね!)。ただこれに対しても、「トレイの数は限られてるから、使い終わったらすぐにベルトに戻すべき」という反論が付いてますが…。

またTaichさんは、そもそも空港で撮るのではなく、あのトレイをAmazonで購入して自宅で撮影してるとのこと。旅のリアリティを出すために搭乗券をPhotoshopで作ったりもしてるそうで、これまた違った方向の猛者ですね。

禁止ではないの?

ちなみにNew York Timesによれば、米国の空港でのセキュリティチェックを管轄するTSA(運輸保安庁)はこのトレンドを容認してるようです。取材に対し「キラキラ写真のせいで遅延が発生したり、チェックポイントにいる他の旅客の迷惑にならない限り」問題ない、という回答でした。筆者が調べた範囲では、他の国でも(今のところ)当局からのお達しなどはないようです。

なので空港トレイ写真、ルール的にダメというわけではないんですが、もし撮るなら周りの混み具合などを気にしつつのほうがいいのでしょうね。また逆に、もし周りでそれっぽい撮影をしてる人がいても、イラッとせずに見守る心のゆとりを持っておきたいです。

考えてみれば、あのコロナの混乱はまだほんの2、3年前です。当時は空港トレイ写真どころか、飛行機に乗ってどこかに行くことそのものにものすごい制約があって、涙を飲んだ人がたくさんいましたね。そう思うと、空港セキュリティで写真を撮れるとか、それがアリかナシか言い合えるって、それ自体が幸せだなとしみじみしてしまいました。

で、このトレンドは、アリなんでしょうか?

Source: The GuardianNew York Times