4000年前に何があったのか…。マンモス絶滅要因に新展開

謎解きは続く…。

マンモスをめぐっては、いまだに多くの謎が残っています。でも、その絶滅の原因を探れば、急激な気候変動に苦しむ現代にも通ずる、なにか大切なものが得られるとの意見も。

このほど科学誌のCellには、シベリアの北方に浮かぶウランゲリ島のマンモスの遺伝子解析結果から、新たな発見があったとする論文が掲載されました。

4000年前までは健在だったマンモス

イメージとしては、氷河期旧石器時代の生物として描かれることの多いマンモス。しかしながら、ウランゲリ島のマンモスは、大陸から島が分離した後も生き続け、最後のものは約4000年前まで島に生息していたと考えられています。

Photo: Love Dalen

これまで主な研究が示していたのは、孤立した島に追いやられたマンモスが、遺伝的多様性低下という問題点を抱えていたとの指摘。陸の孤島近親交配を余儀なくされたため、次第に遺伝的多様性が失われたほか、有害な遺伝子変異も積み重なって、とうとう絶滅してしまったという説が有力でした。

それほど遺伝的な問題は深刻でなかった?

新たな研究はストックホルムのCenter for Paleogeneticsの遺伝子学者らが主導。5万2300年前から4333年前と幅広い年代におよぶ、状態のよい21体のマンモスゲノム比較分析が進められました。そのうち14体はウランゲリ島のマンモスのゲノムで、残る7体はシベリアに生息していたマンモスのゲノムです。

研究チームは比較分析の結果から、ウランゲリ島のマンモスが初め10頭に満たない小集団からスタートしたと結論。シベリアから約1万年前に海水面の上昇で分離して誕生したとされるウランゲリ島で、こうしてマンモスの歴史が始まりました。

どんどん繁殖して20世代以上にわたり、一気に島のマンモスは数百頭まで増えたと考えられるようです。

非常に短い期間に、なにか突然の出来事が生じ、最後のマンモスの死滅にいたったと考えられる。とはいえ、もっとマンモスの絶滅時に近いゲノムを解析するまでは、実際のところ、なにが起きたのか推測の域を出ない。

Center for PaleogeneticsのMarianne Dehasque博士は、こんなふうに語っています。

今回の研究で、確かに大陸から切り離された孤島という環境において、遺伝的多様性が次第に失われていったり、有害な遺伝子変異が残った可能性は否定できないことも判明。とはいえ、それがマンモス絶滅を引き起こすほど深刻なレベルではなかったことも明らかになったみたいですね。

Photo: Love Dalen

マンモスの牙からは、本当に多くのことを解析できます。実は同研究チームは、もっと絶滅時に近い、いまから4100年ほど前のマンモスを、解析対象のサンプルとして特定できているんだとか。その遺伝子解析結果を待って、これからさらなる絶滅の謎に迫る方針が示されています。人類が学び取れる教訓があったりするかもしれません。

Source: Cell