深海の魔物? 腕の先を光らせながらイカがカメラに襲いかかる

ヒロビレイカの2本の腕についた発光器が迫る。

珍しい深海イカが、餌付きカメラを獲物と勘違いする貴重な瞬間を収めた映像が公開されました。

この映像は、西オーストラリア大学(UWA)とミンデルー財団による深海研究センターの海洋研究者たちのチームのカメラが、南太平洋のサモア水路の北、水深およそ1km地点で撮影していたものです。

体長75cmのヒロビレイカ(Taningia danae)がカメラアームの先端に抱きついた後、すぐさま断念して泳ぎ去っていく。そんな短くとも鮮烈な遭遇シーンを複数台のカメラが捉えました。

研究センターのAlan Jamieson所長は、UWAのリリースの中で、「この種のイカの記録の多くは漂着、不慮の混獲か、クジラの胃内容物からです」と述べていました。

「このような驚異的な生物の生きている姿を観察できる機会は希少なため、すべての遭遇は地理的位置、水深、そして習性についての情報を集める上で重要になります。しかも滅多に目にすることのない変わった生物ですから、思わずシェアしました」

ヒロビレイカが誇る巨大な発光器

イカで“最大級”の肩書きを持つのは、体重でいえばダイオウホウズキイカ(Mesonychoteuthis hamiltoni)、体長でいえばダイオウイカ(Architeuthis dux)です。

しかしヒロビレイカは、ある器官のサイズが最大級です。2本の腕の先端に備えている発光器は、獲物を混乱させるために発光する器官。動物界で最も大きい発光器なんだとか。この器官は生物発光を行なう器官で、深海生物、特に捕食者の中では珍しくありません。

「このイカは…(中略)…私たちのカメラを獲物だと思って襲ってきて、巨大な生物発光のヘッドライトで驚かせようとしたんです」と、チームの主任科学者であるHeather Stewart氏は前述のリリースにて説明しています。

確かによく見てみると、イカは視界に飛び込んでくる際に発光器を見せ、カメラにまっすぐと向けています。数秒間カメラを抱き込んだ後、食物を諦めてフレームの外へと泳ぎ去ったのでした。

深海探査は続く

現在、調査船「RV Dagon(ダゴン)」は、太平洋のノバ・カントン・トラフを調べる3カ月に及ぶ遠征の最後の数週間に入っています。水深3~8kmの海底で生物多様性と地質多様性を探査・記録するというミッションです。

それほどの水深であれば、何が見つかるかは誰にもわかりません。水深1km地点で見つかったのがヒロビレイカなら、不気味だけど驚異的な生き物の発見…ということもありえそうです。

Source: THE UNIVERSITY OF WESTERN AUSTRALIA, Live Science, Smithsonian Ocean Portal

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