地球外生命体は「紫色の惑星」にこそ存在しているのかも

奥深い色、パープル。

かつて太陽系の惑星についてしか知らなかった人類は、それからわずか30年ほどで、この広い宇宙に散りばめられた5000以上もの遥かなる異世界を発見してきました。その中から、地球のような惑星はまだひとつも見つかっていません。

しかしながら、もし宇宙のどこかに生命を宿した惑星が存在しているとしたら、そもそもそれは地球のように青く輝いていないかもしれない。

むしろ、かなり大胆な紫色かもしれないんです。

紫色の正体はバクテリア

カール・セーガン研究所に所属する研究者チームが発表したところによりますと、地球外生命体の痕跡を探す上で重要視されるべきは紫色の惑星なのだそうです。

紫色の正体は、紅色細菌。彼らは幅広い環境条件において繁茂するうえに、その星全体に独特な反射率スペクトル(要はどぎつい紫色)を与えるそうです。

紅色細菌には水生と陸生の両タイプがあり、いずれも光合成を行ない、可視光や酸素をほとんど必要としない微生物です。地球上でも遠浅の海や海岸沿い、湿地帯、または深海の熱水噴出孔などに生息しています。

そして実のところ、この紅色細菌こそが、30億年前に地球上に生命が誕生したときにもっとも多く繁殖した生命体のひとつであるとも考えられているそうです。

太陽系外惑星をモデル化

今回の研究では、20種類以上の「紅色硫黄細菌(purple sulfer bacteria)」と「紅色非硫黄細菌(purple non-sulfer bacteria)」が集められ、培養されました。

研究者たちは、まずそれらの細菌から生物色素を抽出し、反射率測定を行ないました。さらに、そのデータを使って太陽系外惑星に紅色細菌が繁殖していた場合の反射率スペクトルをモデル化し、その星がどんな色に輝くかを再現したそうです。

モデル化されたのは、いずれも地球に似ているけど、地球とはかけ離れた環境下におかれた太陽系外惑星たち。論文によれば、地球にそっくりな惑星以外にも海しかない星や雪玉のような星、凍てついた氷の星などを再現したそうです。そしてその結果、どの惑星においても、紅色細菌が作り出した反射率スペクトルは強烈な紫色だったそうです。

赤色矮星に育まれて

実際、太陽よりも温度が低い赤色矮星を周回する惑星は、紅色細菌にとって絶好のすみかです。そして、天の川銀河に存在する恒星の大半は、赤色矮星です。

「地球上でもニッチな環境下で繁栄している紅色細菌です。さらに赤い太陽の光があれば、もっとも効率よく光合成を行なえるわけです。もしも彼らが葉緑素を持った植物や、藻類や、細菌類と競争しなくてもいい星に住んでいたなら…」と、研究者のひとり、Ligia Fonseca Coelhoさんは話しています。

そう考えると、たしかに紅色細菌が太陽系外惑星上で繁殖しないわけがないと思えてきますよね。

さらに、30億年前に紅色細菌を大量に宿していた地球が、その後育んだ生物多様性を考えると、なんだかワクワクしてきませんか?

生命の象徴は緑ではなく、紫?

この研究結果を踏まえ、Coelhoさんたちは今「紫色の惑星カタログ」を作成中だそうです。どの色、どの科学的特徴が、その惑星にどんな生物や鉱物の存在を意味しているのかを説明するのがねらい。

次世代の強力な望遠鏡を手にした科学者たちが、この広い宇宙の中から多種多様な生命体を探し出すためのツールとして活用できそうです。たとえ、その生命体が地球上のものとまったくちがう姿をしていても。

「地球上の生命体と異なっているからという理由で地球外生命体を見逃さないためには、このようなデータベースが必要です」とカール・セーガン研究所所長のLisa Kalteneggerさんは説明しています。

「私たちは今やっと眼を開き、私たちをとりまくこの魅力的な世界を見始めているのです」とKalteneggerさん。

紅色細菌は実に幅広い環境下で生き延び、繁栄することができるので、地球とは異なる環境の惑星でも生存できることは想像に難くありません。

これからは、紫が新しい緑になるかもしれません

Source: Monthly Notices of the Royal Astronomical Society, Cornell Chronicle