大気圏の水蒸気を減らしたら、温暖化を抑止できるか?

気候変動に対抗していくためには、1つではなくありとあらゆることをやっていくしかないんです。できることはやってみる。そう、地球の大気圏から水蒸気を減らすなんてアイデアもやってみたらいいんです。

アメリカ海洋大気庁(NOAA)の地球構造学研究所研究員であるJoshua Schwarz氏が率いる研究チームが、地球の大気から水蒸気を減らすという対策を提案しています。

研究論文の主執筆者でもあるSchwarz氏が、米Gizmodoの取材にコメントしてくれました。いわく「そんなに複雑なアイデアではないんです」。

水蒸気減らすとどうなるの?

地球の大気において、水蒸気は温室効果ガスのような役割をしています。太陽からの放射線を吸収し、地球の表面へと排出します。

成層圏(地球の大気の内側から2層目)に氷核形成粒子を加えることで、その水蒸気の量を減少させようというのが、今回の研究論文が語るところ。大気の水蒸気が減れば、より多くの熱が宇宙へと放出される=地球にこもる熱が減るというシンプルな考え方です。研究では、水蒸気量を3%減らせば、世界中で効果が出る計算になっています。

成層圏は地球から6〜20km上空から、50kmまで。この高さならば飛行機でリーチできるので、氷核形成粒子を届けることは可能です。

まだ「1つのアイデア」にすぎない

研究チームは、高層大気の水蒸気の動きをトラッキングするNASAの観測航空機Airborne Tropical TRopopause EXperimentの観測データを用いて、成層圏から一定の水蒸気を減らすために必要な粒子の量を算出するモデルを制作。

モデル算出では、このやり方が地球温暖化の緩和に役立つと推測されたものの、実行するには技術的な課題があります。例えば成層圏に粒子を届けたとして、それをどう大気に注入するか、その技術は開発する必要あります。

Schwarz氏は、取材にてこう語ってくれました。

「このアイデアは(地球温暖化の)特効薬ではありません。誰も知らない魔法の解決策でもありません。少しでも正しい方向へと向かう1つの選択肢にすぎないのです。

魔法のような解決策があるなら、やるなとはもちろん言いません。ただ、現段階ではいろいろなアイデアを必要としており、何にどうアプローチするかを模索するときです。

惑星と人類のためにどの方法がいいのか、複数のアイデアをミックスさせてみるのもいいかもしれませんね」

研究論文はScience Advancesに掲載されています。