Googleは動画広告の「スキップボタン保証」を回避しようとさまざまな手を使っている

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YouTubeにはいろいろなフォーマットの動画広告が用意されています。このうち、視聴者がスキップ可能な広告の場合、広告主はスキップされた場合にはお金を払わなくてよいという「スキップボタン保証」がセールスポイントの1つとなっていますが、実際にはさまざまな策を講じて広告をスキップ不可能な状態にすることでGoogleは保証を回避しようとしていたと、独立系デジタル広告監視機関であるCheck My Ads Instituteが指摘しています。

Google’s Epic Multi-Billion Dollar Ad Scam Makes Sense To Us
https://checkmyads.org/branded/googles-epic-multi-billion-dollar-ad-scam-makes-sense-to-us/


YouTube以外も含めたGoogleの動画広告において、多くが広告主と約束した基準を満たしていなかったことが、調査会社・Adalyticsの調査によって明らかになっています。

「Googleの動画広告は多くが広告主と約束した基準を満たしていない方法で表示されている」という報告、AI生成サイトへの広告出稿も – GIGAZINE


YouTubeのプロダクトマーケティングマネージャーであるジム・ハビック氏は、2016年に公開した動画広告の解説の中で、「(YouTubeの動画広告である)TrueView広告は、視聴者に広告を見るか見ないかの選択肢があり、『見る』を選ばない限りあなた(広告主)も一銭も払わなくてOKです」と説明しています。Check My Adsは、この仕組みを「スキップボタン保証」と名付けています。

TrueView EXPLAINED While Being Bombarded With Puppies | YouTube Advertisers – YouTube
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Check My Adsはハビック氏が言及していないこととして、「YouTubeはTrueView広告のみを配信しているわけではない」点を挙げています。YouTube以外のサイトなどにも動画広告を配信するGoogle動画パートナー(Google Video Partners:GVP)はYouTubeの外部にあるネットワークであり、広告主やYouTubeやインターネット経由で視聴者にリーチできるようにしています。Googleでは、インターネット経由でリーチすることもYouTubeと同等のエクスペリエンスであると位置づけているとのことで、実際、企業の支払った動画広告予算の少なくとも50%はYouTubeではなくGVPで配信されていたことが、前出のAdalyticsの調査で明らかになっています。

GVPで配信される広告は、ミュート状態で再生されていたり、画面端の気付かないような位置にあるプレイヤーで再生されていたり、あるいは他の広告に隠れてわからないような位置で再生されていたりと、とても広告主に保証したような条件とは思えないものが多数でした。

これについてCheck My Adsは「スキップボタン保証」を回避し、広告主に料金を支払わせるためだと推測しています。先行調査をAdalyticsと共同で行ったWall Street Journalは、1000件で5ドル(約723円)相当の価値しかない広告に対して、Googleが1000件で100ドル(約1万4500円)を請求したと報じています。Check My Adsは、Googleが「スキップボタン保証」回避によって数十億ドル(数千億円)を稼いだ可能性を指摘しています。

なおCheck My Adsは、動画広告の予算の多くがまわされているというGVPについても疑いの目を向けています。


GVPの広告を掲載するパブリッシャーについて、Googleは「慎重に審査している」と説明し、在庫品質基準を満たし、動画広告の安全性に関する約束を常に順守することが必要だと述べています。Adalyticsによる先行記事への反応として、GoogleはGVPパブリッシャーの審査ポリシーは非常に厳格であり、その上で「我々がどれぐらい真剣に問題に対応しているか、2022年にポリシー違反で14万3000以上のサイトで広告の配信を停止したことでご理解いただきたい」と説明しています。

しかしCheck My Adsは、一度はGVPパブリッシャーとして承認されたサイトが14万もポリシー違反で停止されるのはどういうことなのかと指摘しています。

また、GVPの広告はアメリカの経済制裁対象であるイラン製のモバイルアプリにも表示されていたとのことから、「Googleは広告を通じて資金を提供していた可能性がある」とも指摘しました。

Googleはこの件について、Check My Adsのコメント要請に応じなかったとのことです。

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