単体でPCでのお絵描きが完結するデジ絵入門にピッタリなPC一体型液タブ「Kamvas Studio 16」でプロのイラストレーターさんにお絵描きしてもらったレビュー

GIGAZINE
2023年06月26日 09時00分
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安価で購入できるエントリー向けの液晶ペンタブレット「Kamvas 13」や、4K対応のプロ向け液晶ペンタブレット「Kamvas Pro 24(4K)」などを製造・販売するHuionから、PC一体型の液晶ペンタブレット「Kamvas Studio 16」が登場しました。PC一体型なので面倒な配線は必要なく、電源をつけるだけで手軽にPCでのお絵描きができるということで、実際にプロのイラストレーターであるほしのるるさんに使ってもらいその実力を確かめてみました。

Kamvas Studio 16は、新世代のHuionペンコンピュータです。15.8インチ2.5Kディスプレイです。 | Huion Official Store: Drawing Tablets, Pen Tablets, Pen Display, Led Light Pad
https://store.huion.com/jp/products/kamvas-studio-16


目次:
◆フォトレビュー
◆スペック
◆ベンチマークテスト
◆セットアップ
◆プロのイラストレーターさんにお絵描きに使ってもらった

◆フォトレビュー
Kamvas Studio 16はこんな感じの箱に入っています。


フタを開けるとKamvas Studio 16本体が収まっていました。


その下には各種付属品がきれいに収納されています。


内容物は左にあるのがKamvas Studio 16本体、右の上段にあるのが折りたたみ式スタンドST200、中段が左からペンケース PB02、USB Type-Cケーブル、USB-PD電源アダプタ(65W)、下段が左からクイックスタートガイド、アンチタッチグローブ、クリーニングクロス。


これがKamvas Studio 16本体。外観は完全にタブレットです。


ディスプレイ上部に500万画素のカメラ。


背面はこんな感じでHuionのロゴが入っています。


背面上部には800万画素のカメラ。


背面下部のロゴが入っている部分は以下のように開閉可能なスタンドになっています。


このスタンドは無段階調節可能なので、あらゆる角度でKamvas Studio 16を立てることが可能。スタンドを最大まで開いた状態でiPhoneの計測アプリの水準器機能を使ってディスプレイの角度を測ってみると15度でした。なお、本体付属のスタンドはKamvas Studio 16を立てて利用するには十分すぎるほど丈夫ですが、このスタンドを使ってお絵描きするとスタンドがどんどん開いてしまうので、お絵描き時には折りたたみ式スタンドのST200が必須です。


天面には排熱用のスリットが所狭しと並んでいます。


天面の端には指紋認証センサー搭載の電源ボタン。


底面には特に何もなし。


左側面には左端にスピーカー、右端にUSB Type-Cポートが2個。


右側面には左からイヤホンジャック、音量調節ボタン、スピーカー。


音量調節ボタンは一見電源ボタンのようです。


ペンケース PB02はシンプルな見た目。


Huionのロゴが入っている側の先端は以下のようにひねって取り外すことが可能で、ペンの替え芯が入っています。替え芯は標準ペン先フェルトペン先が3本ずつ入っていました。なお、替え芯はどちらも公式ストアで購入可能です。


ペンはどこに入っているのかと思ったら、この先っぽを引っ張ると出てきました。


これが付属のデジタルペン・PW550S。液晶ペンタブレット用のペンとしてはかなりスリムです。なお、持ち手部分が太い方が好みという人は、別途PW550を購入して利用することもできます。


ケースには以下のように小さな穴が開いています。


ここにペン先をひっかけることで、ペンを交換できるようになっているわけです。


折りたたみ式スタンドST200の見た目はこんな感じ。


上部をパカリと開くことができます。


そして金属パーツを以下のように奥側に押し込みます。


ベース部分にある溝でパーツを固定。固定箇所は3箇所から選べます。


すると以下のようにスタンドになります。


スタンドの脚になる部分は大きいものと小さいものの2種類あるので、2×3=計6段階の高さに調節することができます。


最後にHuionロゴの下にある本体を受け止める足場を回転すればスタンドの完成です。


スタンドにKamvas Studio 16を置いてみると、ディスプレイの傾斜が最も低くなった状態が以下で、角度は14度。


ディスプレイの傾斜が最も大きくなった状態だと、角度は42度でした。


付属のUSB Type-Cケーブルと65Wの電源アダプタはこんな感じでコンパクトです。


Kamvas Studio 16はバッテリー内蔵なので電源ケーブルをつながなくても単体で動作可能ですが、本体を充電する際は電源アダプタにUSB Type-Cケーブルを挿します。


そして電源アダプタをコンセントに挿入。


あとはUSB Type-Cケーブルを本体のUSB Type-Cポートに挿せばOK。Kamvas Studio 16にはUSB Type-Cポートが2つありますが、どちらに挿しても本体への給電が可能。給電が開始されるとポートの左側にある小さなLEDインジケーターが白く点滅しました。


バッテリーを充電したら電源をオンにしてさっそくKamvas Studio 16を使ってみます。


◆スペック
Kamvas Studio 16のスペックは以下の通りです。

OS:Windows 11 Professional
CPU:Intel Core i7-1165G7
グラフィックス:Intel Iris Xe Graphics
メモリ(RAM):16GB DDR4
ストレージ(ROM):512G SSD
寸法:幅384mm×縦234mm×薄さ11.9mm
重量:1.7Kg
本体カラ―:ダークグレー
ワイヤレスタイプ:Wi-Fi 6
Bluetooth:Bluetooth 5.0
カメラ:5.0MP(前面カメラ)、8.0MP(背面カメラ)
スピーカー:2W×2
マイク:デュアル・マイク
センサー:指紋センサー、重力センサー、ホール電圧センサー
インターフェース:フル装備のUSB Type-C×2、3.5mmオーディオジャック×1
ディスプレイサイズ:15.8インチ
解像度:2560×1440ピクセル(縦横比16:9)
液晶タイプ:IPS液晶
アクティブエリア:349.6mm×196.7mm
コントラスト比:1200:1
輝度:400nit
読取速度:14ms
視野角:89°/89°(H)/89°/89°(V) (Typ.)(CR>10)
色域:100% AdobeRGB
色深度:16.7M(8bit)
バッテリー:58Wh
入力電圧:100-240VAC、50/60Hz、1.8A
出力電圧:5V 3A;9V 3A;12V 3A;15V 3A;20V 3.25A
スタンド:内蔵キックスタンド、折りたたみ式スタンドST200
使用環境温度と湿度:0~40度、20~80%
保管環境の温度と湿度:マイナス20~60度, 10~90%
ペン解像度:5080LPI
圧力レベル:8192レベル
精度:±0.3mm(センター)、±1mm(コーナー)
読取可能高さ:10mm
反応時間:>300PPS
傾き検知:±60°
フィンガータッチ:10ポイント静電容量方式タッチパネル

◆ベンチマークテスト
PassMark Performance TestGeekbench 6の記事作成時点での最新バージョンを使ってベンチマークテストを実施しました。なお、ベンチマークテスト時はKamvas Studio 16を電源とつなぎ、Windows 11の電源モードを「最適なパフォーマンス」にしています。

PassMark Performance Testのバージョン11でベンチマークテストを実施した結果が以下。「Passmark Rating(全体)」が「3193.7」(スコア下位37%)、「CPU Mark」が「7452.0」(スコア下位41%)、「2D Graphics Mark」が「259.7」(スコア下位22%)、「3D Graphics Mark」が「2651.5」(スコア下位34%)、「Memory Mark」が「2616.9」(スコア上位53%)、「Disk Mark」が「21015.3」(スコア上位85%)です。


Geekbench 6でのベンチマーク結果は以下の通り。CPUはシングルコアスコアが「1809」で、マルチコアスコアが「4892」。


シングルコアパフォーマンスの詳細が以下。


マルチコアパフォーマンスの詳細が以下。


GPUベンチマーク(OpenCL)のスコアは「11034」。


パフォーマンスの詳細は以下の通り。


GPUベンチマーク(Vulkan)のスコアは「14427」。


パフォーマンスの詳細は以下の通り。


なお、Kamvas Studio 16でベンチマークソフトを走らせながら、赤外線サーモグラフィの「FLIR i3」を使って温度測定も行ってみました。測定してみると端末の左上にあるUSB Type-Cポート部分に熱が集中しており、最も熱い場所の温度が41度前後でした。


◆セットアップ
Kamvas Studio 16では難しいセットアップを行う必要がありません。また、専用ドライバもあらかじめインストールされているため、お絵描き用のソフトさえインストールすればすぐにPCでのお絵描きを開始できます。専用ドライバで最初にやっておくべき設定は以下の通り。

まずはデスクトップ上にある以下のショートカットをダブルクリックします。


すると専用ドライバ管理画面が起動します。初期状態だとドライバの言語設定が英語になっているので、ウインドウ右上にある歯車アイコンをクリックして、「General」をクリックし、「Language」のタブをクリックして言語設定を英語から日本語に変更。


管理画面の言語設定が日本語になるとこう。一気に使いやすくなります。


「ペンコンピューター」→「作業領域」→「モニターキャリブレーション」の順にクリック。


するとKamvas Studio 16のディスプレイが以下のように変化するので、画面上に表示される赤色の点をデジタルペンでタッチします。デジタルペンの先っぽとマウスポインタ―の位置が微妙にずれて気になるという場合、モニターキャリブレーションを行うことでずれを修正することができます。


次に「デジタルペン」→「プレスキー」の順にクリックするとデジタルペンの手元部分にあるボタンに割り当てるキーやショートカットを自分好みに変更することが可能。変更したいボタンをクリック。


キーボードやマウスボタンだけでなく、切り替え機能や特定のプログラムの起動など、さまざまなショートカットを割り当てることができます。


さらに、「筆圧感度設定」からデジタルペンの筆圧感度設定を変更することもできます。ただし、イラストレーターのほしのるるさんは「私は筆圧感度設定はドライバではなく個々のアプリケーションで行うようにしている」と語っていました。個々のアプリケーションで筆圧感度設定を行う理由は、「ドライバで筆圧感度を設定しても、各種アプリで筆圧感度の微調整を行わなければならなくなり二度手間になるから」だそうです。


なお、歯車アイコンをクリックし、「詳細情報」から「アップデートを確認」をクリックするとドライバのアップデートをいつでも確認できます。


この他、Kamvas Studio 16には指紋認証センサーが搭載されているので、指紋認証を設定しておくと起動時やロック解除時などにPINコードを手入力する必要がなくなり非常に楽チンです。指紋認証は設定の「アカウント」画面にある「指紋認証(Windows Hello)」をクリックして、「セットアップ」をクリック。


「開始する」をクリック。


PINコードの入力を促されるので入力します。


すると以下のような画面が表示されるので、電源ボタンを指で数回タッチすることで、セットアップを完了させます。


なお、複数の指を登録したい場合は「指の追加」から可能です。


◆プロのイラストレーターさんにお絵描きに使ってもらった
セットアップも終わったので、まずはお絵描き初心者のGIGAZINE編集部員が心の赴くままに線を引いてみました。実際に手に持って動かすデジタルペンの動きと、Windows上のマウスポインタ―やお絵描きソフトのペンの動きはシンクロしており、「リアルのペンを動かしてから遅れてデジタルのペン先が追ってくる」ということは一切ありません。


ペンの視差も全くと言っていいほどなし。素人目線では紙に線を引くのと違いを感じないレベル。


筆圧感知は8192レベルで線の濃淡も自由自在。


また、デジタルペンは傾き検知にも対応しているので、使用するお絵描きソフト次第ではペンの傾き具合で使用する線の種類を変えることもできます。


ここからはプロのイラストレーターであるほしのるるさんにKamvas Studio 16を使ってお絵描きしてもらいました。なお、ほしのさんが普段お絵描きに使用しているのは、4K対応の24インチ液晶タブレットである「Wacom Cintiq Pro 24」と「CLIP STUDIO PAINT」とのことなので、今回はCLIP STUDIO PAINTでお絵描きしてもらいました。なお、ほしのさんにKamvas Studio 16を使ってお絵描きしてもらった際は、本体を充電せずにバッテリー駆動で利用してもらっており、Windows 11の電源モードは「バランス」でした。


少し触ってみて感じたのは、Kamvas Studio 16のディスプレイが非常にタッチ操作に敏感ということ。ウェブブラウジングなどの操作時にタッチ操作の反応が遅いと感じることは一切なく非常に好感触だったのですが、お絵描き時には手の小指球部分がディスプレイに触れると意図しない操作(キャンバスの拡大縮小や回転など)が起きてしまいました。そのため、ほしのさんはアンチタッチグローブを着けてお絵描きすることに。このアンチタッチグローブを着けると誤作動の数をかなり抑えることができました。


このアンチタッチグローブはよく見ると縫い目が入っており、ディスプレイと触れる小指球から小指の外側にかけてのみ生地が二重に補強されていることに気づきます。なお、公式ストアから替えのグローブを購入することも可能です。


ほしのさんは初めはグローブを着けてのお絵描きに慣れないようで、「グローブの薬指部分がなかったらペンを持ったままでのピンチイン・ピンチアウト操作もできるのに」と嘆いていました。


しかし、時間が経つとお絵描きしながらペンを持った方の手で自然にピンチイン・ピンチアウト操作を行っていたので、慣れれば意外と気にならないものなのかも。タッチ操作不要という人もいるかもしれませんが、タッチ対応の方がより直感的に操作できる印象で、スマートフォンやタブレットなどでのお絵描きに慣れているという人はかなり重宝しそうです。ほしのさんは「CLIP STUDIO PAINT側がもっといろんなタッチジェスチャーに対応していたらタッチ対応がさらに便利になるかも」とも語っていました。


Kamvas Studio 16はちょうど11インチiPad Proが2つ分くらいのサイズ感で、本体重量は1.7kgなのでギリギリ持ち歩きも可能なレベル。そのため、ほしのさんは「スタバに持っていくとかなり目立ちそうだけど、気分転換に家の中で作業場所を変えるなどができるのは良さそう」と語っていました。


また、PC一体型なのでゴチャゴチャしがちな液晶ペンタブレット周りの配線がスッキリするのもポイント。ほしのさんが普段使用しているWacom Cintiq Pro 24は非常に大きいためデスクも大きなものが必要だそう。さらに専用スタンドも使用するとなると、耐荷重を考慮すると「デスクの選択肢はほとんどなかった」とのこと。それに対してKamvas Studio 16はPC一体型の液晶ペンタブレットなので、端末が占有するスペースはかなり小さくて済み、作業スペースを選ばないという利点があります。


普段は24インチの液晶ペンタブレットを使っているというほしのさんですが、Kamvas Studio 16のディスプレイサイズについて「16インチあればサイズ感的にはお絵描きにちょうど良い」と語ってくれました。24インチの液晶ペンタブレットに慣れてはいるものの、16インチほどあればお絵描きで困ることはないだろうとのこと。


これまでいろいろな液晶ペンタブレットを触ってもらいましたが、Kamvas Studio 16はそのどれと比べてもペンの視差や追従性、モニターの発色や解像度の高さなどで劣っていると感じることはないそうで、「いつもの作業環境と比較しても何の違和感もない」とほしのさん。ただし、ディスプレイの最大輝度だけは「もう少し明るくあってほしかった」とのこと。


また、CLIP STUDIO PAINTのゆがみツールを使ったり、レイヤーが増えていったりすると(10程度)、「PCの動作がもったりするシーンがあった」とほしのさん。普通のお絵描き程度なら問題ないとのことですが、キャンバスのサイズが長辺1万ピクセルを超えるような「仕事でお絵描きをする際」などは、「スペック的な物足りなさを感じるケースが出てくるかも」とほしのさんは指摘していました。

Kamvas Studio 16のバッテリーを100%まで充電し、ディスプレイの輝度を最大にした状態でほしのさんに1枚のイラストを描いてもらったところ、お絵描き開始から2時間50分が経過した時点で、バッテリー残量は13%まで減少しました。なお、Windows 11の電源モードはバッテリー残量が20%になった時点で省電力モードに自動で移行する「バランス」モードでした。


このお絵描きの際にFLIR i3で本体の温度を測定すると37.2度で、ベンチマークテスト時ほどは発熱していませんでした。


以下の動画はほしのさんに約2時間かけてお絵描きしてもらった際の様子を10倍速にした動画。ほしのさんによると、今回は普段あまりやらないような色の塗り方に挑戦しており、その一例が「肌を影が入った状態から塗り始める」だそうです。普段は肌を塗ってそこに影を足すように色を塗っていくそうですが、今回は先に影込みで肌を塗り、そこに光を足すようにイラストを仕上げています。このようなプロのイラストレーターさんの妙技が楽しめるだけでなく、お絵描き使用時のKamvas Studio 16の挙動をチェックすることもできるのでぜひとも再生してみてください。

【10倍速】PC一体型液タブ「Kamvas Studio 16」でプロのイラストレーターさんにお絵描きしてもらう様子 – YouTube
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というわけで完成したイラストが以下です。


実際にKamvas Studio 16をいろいろ使ってみた感想としては、液晶ペンタブレットとしての性能面に文句のつけどころは一切ないということ。PCとしてのスペックはそれほどずば抜けているわけではないものの、趣味でお絵描きする分には十分で、それでいて面倒な配線は不要&ドライバもあらかじめインストールされているため、機械音痴には特にオススメできそう。また、ギリギリ持ち運びも可能なレベルということで、フットワークの軽い学生や、これからデジタルでのお絵描きに本格的に挑戦してみたいという人にピッタリなマシンです。ほしのさんも「iPadでお絵描きしている人が次のステップに行く際や、外でのスケッチが好きな人なんかにも喜ばれそう」と語っていました。

なお、Kamvas Studio 16は公式ストア上で販売されており、価格は29万9999円。また、2023年7月26日までの期間限定で使える1万円オフクーポンも配布されているので、気になる人はチェックしてみてください。

Kamvas Studio 16は、新世代のHuionペンコンピュータです。15.8インチ2.5Kディスプレイです。 | Huion Official Store: Drawing Tablets, Pen Tablets, Pen Display, Led Light Pad
https://store.huion.com/jp/products/kamvas-studio-16


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