ジャニーズはテレビから消えず…大手メディア、芸能事務所への忖度と過剰な配慮


ジャニーズ事務所

 ジャニーズ事務所の“性加害”を巡る一連の問題は、いまだ収束の気配を見せていない。

 同事務所創設者である故ジャニー喜多川氏による少年たちへの性加害が最初に報じられたのは、今から24年前。「週刊文春」(文藝春秋)が14週間にもわたり特集を組んだが、大手メデイアなどはこの問題をまるでタブーのように受け止め、取り扱うことを行ってこなかった。

 しかし、そこから英BBCなどの海外メディアが取材を行ったこと、「週刊文春」のさらなる報道などもあり、今年に入り問題が再燃した。

 実名で被害を告発する元ジャニーズタレントも現れ、国会でも法改正を求める約4万人の署名を集めて訴えを行うなど、世論は確実に動き出しつつある。

 とはいえ、櫻井翔を起用する「NEWS ZERO」(日本テレビ系)では、その報道姿勢に対してネット上でも批判が集まるなど、世間とメディアの認識にいまだ埋めがたいズレがあるようにも感じられる。それでも、テレビなどのマスメディアを見渡すと、ジャニーズタレントを見ない日はない。

 民放キー局社員は、一連のジャニーズの性被害問題を受けて、業界内での取り扱いについて次のように明かす。

「芸能事務所への配慮や忖度は、テレビ局の中では必ず存在します。今のテレビを見渡すと、ジャニーズ事務所と吉本興業が絶対的な力を持っていることは明々白々。いくらコア視聴率を重視してインフルエンサーやユーチューバーを起用するようになったとはいっても、あくまで彼らは主役を張るような人材ではありません。あくまでジャニーズやビッグネームの芸人さんがいてこそ生きるんです。おそらく、それは今後も変わらないでしょう。特に幅広い年齢層から絶対的な支持を集めるジャニーズは、代えが効かない存在でもあり、最大のタブーでもありました」

 今回の報道に関する局内での受け止め方については、「事務所の対応を見ている段階でもある」と続ける。それを踏まえても、ジャニーズは今後もテレビ業界においては絶対的な存在でもあるはずだ、と明言する。

「もちろん、局により受け止め方は多少異なるでしょうが、上層部の考え方としては、『具体的な事件化がされていない段階での対応は難しい』というところでしょう。現在、ジャニーズ事務所が第三者機関による調査を宣言していますが、まずはその調査結果を受けての判断になると思います。現状、捜査機関や法務省、厚生労働省といった各省庁が具体的に動いているという話は聞きません。テレビ局としては、ジャニーズがテレビから消える、ということは全く想像ができません。もしそうなることがあるとすれば、それはテレビ局にとっても大きな打撃を受ける、ということを意味します」

 ジャニーズへの“タブー”が存在するのは、何もテレビ局だけではない。大手出版社やスポーツ紙、新聞などメディアですら、踏み込めない領域が存在する。スポーツ紙の芸能担当記者がこう明かす。

「例えば熱愛記事に関しても、ジャニーズの場合は他の事務所よりも入念に先方確認を行います。その結果、事務所の顔を立てて記事にしない、後追いをしないということも決して珍しくありません。インタビュー記事や、親会社へ与える影響、事務所からの取材NGを食らうリスクを考えると、事務所や会社の意向を無視し、制止を振りほどいて“飛び降りる”ことは、実質的に不可能です」

 一方で、一際スキャンダルに対して過敏に反応する週刊誌としても、同じことがいえるのだ。大手出版社の社員が、こう解説する。

「『週刊文春』と並び、硬派な記事で世間を騒がせてきた『週刊新潮』にしても、新潮社でジャニーズのカレンダーを作成してきた兼ね合いがあり、よほどのことがない限り、ジャニーズのスキャンダルは追いません。そのほかにも、ファッション誌や写真集、単行本などでジャニーズへ頼る機会も多い小学館、集英社、講談社といった大手出版社も、ジャニーズのスキャンダルに関しては基本的に取り扱いを避ける傾向にあり、記事を出す場合も事務所への配慮や忖度は必ず行います。今の日本のマスコミにおいて、ジャニーズと真っ向から戦う姿勢があるメディアは、週刊文春以外に存在しないといえるでしょう」

 自民党は性被害防止対策の強化に向けた提言案をまとめたが、ジャニー喜多川氏からの性被害を訴える元所属タレントらが求めている児童虐待防止法の改正については、提言に盛り込まれなかった。一連の問題を受けても一向に意識が変わらないことから、決してメディアだけではなく、政界にもはこびる意識の“深度”を感じてしまう。

(文=Business Journal編集部)

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