少し前に、都内で大手コンビニチェーンの店員をしているという、あるTwitterユーザーの以下投稿が話題になった。
<『ちょ、待ってぇ!』コンビニのレジ。電子マネー決済音が鳴るのを待てずに、決済前に立ち去ってしまう人がいる。店員はレジからすぐには離れられない。でも逃げられたら、こっちのミスで自腹。『おっきゃくさぁーん!』腹の底から叫んだら、他の客が引き止めてくれた。お願いよ。慌てずに確認してね。>
新型コロナウイルス感染対策により、キャッシュレス決済対応のレジを導入する店舗がこの3年間で大幅に増えた。しかしながら、決済音を確認しないまま立ち去る客によるトラブルもあるとのツイートだ。では、実際のところ、そのような客はどの程度いるのか、大手コンビニチェーン3社に聞いてみた。
「実際にそのような事例の発生や、増加しているということは確認できておりません」(ローソン広報部)
「バーコード決済開始当初は画面が読み取れないなどの事象が発生しておりましたが、現在は修正を加えたことで、ほぼ発生していないと聞いております」(セブン&アイ・ホールディングスの広報センター)
「セルフレジを利用するお客様のご様子は店員が確認しており、決済がお済みでない場合はお声がけさせていただいております。ご利用方法は、セルフレジ付近に掲示させていただいておりますが、操作にお困りの場合は、店員にお声がけいただけましたらご案内いたします」(ファミリーマート広報部)
大手3社は、店員がバーコードを読み取り、客が会計操作を行う「セミセルフレジ」が主流だ。よって、ツイートのようなトラブルが増えているという現場からの報告はないという。また、決済前に立ち去る客がいれば、結果的に店に損害が発生することになるが、店員が自腹で不足分を補填させられるようなことはないそうだ。
完全なセルフレジではトラブルの可能性も
未決済トラブルに関しては、ネット上に次のような書き込みも見られた。
<スーパーでそれやったババア見たわ。スイカ近づけるフリだけして音が鳴らないから、店員に気付かれてまだ会計終わってないと言われ、機械がわかりにくいせいって、とぼけてたなあ>
商品のバーコード読み取りから会計操作までを客自身が行う完全なセルフレジだと、書き込みのような万引き犯が出てくる可能性もある。実際、和歌山市内のスーパーで先月、日本酒のパックなどの商品に「半額シール」を不正に貼り付け、セルフレジで精算したとして、男性が電子計算機使用詐欺の疑いで逮捕された。しかし、そうした悪意ではなく、ただセルフレジに不慣れなために本当に戸惑う中高年層が少なくないのも事実だ。そんなとき、店員を呼んでセルフレジの操作方法を聞く光景はしばしば見られる。恥ずかしながら、筆者もバーコードがうまく読み込めないために、スーパーで店員の助けを求めたことがある。原因は些細なことで、「スマホをもう少し近づけてください」というアドバイスで無事に会計が済んだ。
大手コンビニチェーンの広報担当者によれば、「スマホには保護フィルムや覗き見防止フィルムを貼っている人も多く、画面が暗くなっていたりするとバーコードが読みづらいときもある」とのこと。また、メーカーによってセルフレジの操作性が異なることも、客側からすれば戸惑う原因になっているようだ。客がいちいち操作方法のために店員を呼んでいたら、従来の有人レジより余計な手間が増えそうな気もするが、大手コンビニ3社では、完全なセルフレジが少ないために、今のところそのような報告はないという。
コンビニよりもセルフレジ導入が進んでいる100円ショップチェーンのダイソーの運営会社、大創産業広報課はこう話す。
「セルフレジの導入は都市部店舗を中心に進めておりますが、当社全体ではまだまだ始まったばかりの段階にあります。導入の主な目的は多様なお客様へのサービス向上です。当初より、当店で初めて使われるお客様も想定されておりましたので、レジ付近にはスタッフを必ず配置しご案内をしております」
小売業界における人件費削減ニーズや人手不足の解消、国のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の方針などから、今後もセルフレジの導入は確実に進む。客側の立場として精算時トラブルを防止するためにも、セルフレジでは必ずレシートを受け取り、会計に間違いがないかチェックすることが重要だ。
(文=横山渉/ジャーナリスト)