巨大な恒星や白色矮星がその生涯を終える際に起こす大規模な爆発が超新星爆発です。超新星爆発が発生すると、強烈なガンマ線が周囲に放たれ、50光年以内の惑星に住む生命体は壊滅的な打撃を受けるとされています。イリノイ大学のイアン・ブラントン氏らの研究チームの調査により、従来の想定と比べて約3倍離れた距離で発生した超新星爆発でも、惑星の大気に深刻な影響を及ぼす可能性が示唆されました。
X-Ray-luminous Supernovae: Threats to Terrestrial Biospheres – IOPscience
https://doi.org/10.3847/1538-4357/acc728
Supernova X-rays zap planets’ atmospheres, 160 light-years away
https://earthsky.org/space/supernova-x-rays-planets-within-160-light-years/
これまでの研究では超新星爆発が発生すると、放たれたガンマ線によって半径5光年以内の惑星表面に住む生命体はすべて絶滅、25光年以内の惑星の生命体の半数が絶滅、50光年以内の惑星の生命体は壊滅的な被害が発生するとされていました。
しかし、NASAのチャンドラX線観測衛星やニール・ゲーレルス・スウィフト、NuSTARなどが31個の超新星を観測した結果発見された新たなデータによると、超新星爆発が発生した場合、放出されるX線によって最大160光年離れた惑星の大気に深刻な損傷を与える可能性があることが判明しました。
Quick Look: New Stellar Danger to Planets Identified by NASA’s Chandra – YouTube
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超新星爆発によるガンマ線の放出は数日から数カ月で収まりますが、爆発による爆風が高密度のガスの雲に衝突して発生するX線は数カ月から数十年にわたって放出され、衝撃波によってガンマ線よりもはるか遠くまで到達します。
超新星爆発によるX線は最大160光年の距離の惑星の大気に深刻な影響を与える可能性があります。ブラントン氏は「もしも地球にX線の急流が直撃した場合、オゾン層の大部分が破壊され、生物にとって有害な紫外線から保護する働きが失われます」と述べ、「オゾン層が破壊された場合、人間や動物は深海や地下以外では生存が不可能になります」と警告しています。
しかしイリノイ大学のコナー・オマホニー氏は「今のところ、地球の付近にX線による大量絶滅を引き起こしかねない星は存在していません」と報告しています。
一方でオマホニー氏は「地球では過去に超新星爆発の影響を受けた可能性があります」と述べ「地球の地質学的過去において、付近で超新星爆発は何度も発生しています」と語っています。オマホニー氏によると、世界各地で採取された鉄の放射性同位体を調査した結果、約200万から800万年前に地球から約65から600光年の距離で超新星爆発が発生した可能性があるとのこと。
研究チームは「これらの超新星爆発の1つまたは複数が相互作用して、地球の大気に対して強いX線を放射し、生命の進化に何らかの役割を果たした可能性が示唆されています」と報告しています。
また、このような超新星爆発は、銀河における地球に似た生命が存在できる領域であるハビタブルゾーンを縮小させる可能性が指摘されています。
イリノイ大学のブライアン・フィールズ氏は「超新星爆発に伴うX線に関するさらなる研究は、恒星のライフサイクルの理解にとどまらず、宇宙生物学や古生物学、地球惑星科学などの分野にも影響を与える可能性があります」と述べています。
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