青い目をしたすべての人は約1万年前に突然変異を起こした共通の祖先から派生した可能性

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人間の虹彩には茶色や灰色、緑色など人種や地域によってさまざまな瞳の色が存在します。一方で世界の約10%とされる青色の虹彩を持つ人は、約6000年から1万年前に住んでいた共通の祖先から派生した可能性があることが示唆されています。

Blue eye color in humans may be caused by a perfectly associated founder mutation in a regulatory element located within the HERC2 gene inhibiting OCA2 expression | SpringerLink
https://doi.org/10.1007/s00439-007-0460-x


Blue-eyed humans have a single, common ancestor — ScienceDaily
https://www.sciencedaily.com/releases/2008/01/080130170343.htm


Everyone With Blue Eyes May Descend From a Single Human Ancestor
https://www.popularmechanics.com/science/health/a43656366/everyone-with-blue-eyes-may-come-from-same-human-ancestor/

Don’t It Make Your Brown Eyes Blue? | Science | AAAS
https://www.science.org/content/article/dont-it-make-your-brown-eyes-blue

そもそも人間における髪や肌、虹彩などの色はメラニン色素の量で決まり、虹彩が茶色の場合はメラニンの量が多く、青色の場合は量が少ないとされています。

また虹彩の色を決定づけるメラニンの量には「OCA2」と呼ばれる遺伝子が大きく関わっています。OCA2から生成されるタンパク質は、メラニンの生成や貯蔵に関わる細胞の成熟を促し、虹彩のメラニン量に重要な役割を担っています。

さらにこのOCA2が突然変異すると、もともと茶色だった虹彩は緑色やヘーゼル色に変化する可能性が示唆されています。一方で、長期間にわたる研究にもかかわらず、茶色の虹彩が青色に変わる原因は明らかにされていませんでした。

2008年にコペンハーゲン大学のハンス・アイバーグ氏らの研究チームは、デンマークのある一族を継続的に調査して遺伝するDNAを調査するとともに、ヨルダンとトルコの人々が持つ茶色または青色の虹彩の比較を行いました。調査の結果、茶色の虹彩が青色に変化する要因は、OCA2ではなく「HERC2」と呼ばれる遺伝子にあることが判明しました。

HERC2には、OCA2の発現を制御する機能があり、HERC2が突然変異を起こすと、OCA2の発現を低下させることでOCA2から生成されるタンパク質の量を減少させます。その結果、虹彩のメラニン量が減少し、茶色の虹彩の生成が阻害され、青色の虹彩に変化すると考えられています。


アイバーグ氏はHERC2の突然変異について「最初にHERC2遺伝子の突然変異を起こした人物のおかげで、青い虹彩を持つ人間が誕生しました」と述べています。最初にHERC2に突然変異を起こした人物から次の世代へと変異が遺伝し、青色の虹彩を持つ人物の数は次第に増加していきました。

HERC2のルーツを調査した研究チームによると、ヨーロッパ系の人々に多く見られる青色の虹彩は、約6000年前から1万年前の新石器時代に黒海周辺に住んでいた人々から発展した可能性があるとのこと。その後、HERC2の突然変異を起こした約6000年前から1万年前の人物は北欧を中心として移住し、現代ではスカンディナヴィア半島に住む人々に青色の虹彩の割合が多くなっているとされています。

クイーンズランド大学の遺伝学者であるリチャード・シュトゥルム氏は「ある遺伝子が別の遺伝子の働きを制御することは珍しいことではありませんが、その突然変異を見つけることは困難です。青色の虹彩へと変化する要因は今のところHEC2遺伝子の突然変異という1種類しか発見されていませんが、いつの日か青色の虹彩を引き起こす別の要因が発見されるかもしれません」と述べています。


アイバーグ氏は「茶色の虹彩から青色の虹彩への突然変異は、人間に良い影響をもたらすものでも、悪い影響をもたらすものでもなく、髪の色や量、そばかすといった見た目に関する変異の一種で、人間の生存の可能性を脅かすものではありません」と述べています。さらに「このような変異は単に、自然が人間の遺伝子をシャッフルして、その中でさまざまな変化を試しているにすぎません」と語っています。

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