「ルパン三世VSキャッツ・アイ」瀬下寛之監督&静野孔文監督インタビュー、二大タイトルの世紀のめぐり会いはどのように生み出されたのか?

GIGAZINE



「ルパン三世」アニメ化50周年と「キャッツ・アイ」原作40周年を記念して、まさかの両作品のコラボレーションが実現し、アニメ「ルパン三世VSキャッツ・アイ」がPrime Videoで配信されます。いずれも複数回のアニメ化が行われている人気作品ですが、かの天下の大泥棒と怪盗集団が1つの世界で共存する作品はどのように作られたのか、本作の監督である瀬下寛之さんと静野孔文さんに、詳しい話をうかがってきました。

アニメ『ルパン三世VSキャッツ・アイ』公式サイト
https://www.lupin-vs-catseye.com/


GIGAZINE(以下、G):
本作「ルパン三世VSキャッツ・アイ」の話がお二人のところにあったのはいつごろのことだったのでしょうか。

瀬下寛之監督(以下、瀬下):
2年前ぐらいですね。

G:
このタイトルを聞いたときの第一印象はどんなものでしたか?

静野孔文監督(以下、静野):
「ルパン三世」も「キャッツ・アイ」も、本当に超メジャーなタイトルで、それぞれバラバラでも1作品ずつになるものを1つにする。これはちょっと荷が重いなぁと思いましたが、また瀬下さんとご一緒できるということなので、そこで不安はだいぶ解消して。今までも共同で監督をさせていただくことがあったので、これは何かあったら頼ればいいなと(笑)

(一同笑)

静野:
気楽ないい関係を築けているなぁと。

G:
瀬下監督はどうでしたか?

瀬下:
僕はインタビューしていただいた作品(アニゴジや「Levius」)をご覧の通り、こんなメジャーをやる監督ではないですよ。アニゴジの時もそうですが、「静野さんがやるなら、やります」と(笑)

G:
(笑) ということは、オファーは同時だったのですか?

瀬下:
石山プロデューサーが狙いすましたようにオファーは同時でした(笑)。別件の打ち合わせで静野監督と一緒にいる時だったと思います。

G:
まさにその石山プロデューサーが本作について語った内容で、「ルパンの世界観にキャッツたちが存在しているように見せたい、ルパンのキャラクターに寄せてほしい」というオーダーが北条さんからあったとのことでした。このオーダーを受けて、どのように制作していったのですか?

瀬下:
世界観やスタイルを統一するためには、1人のキャラクター原案者にまとめてもらうのがいいのではないか」という戦略を立てました。それで、両方の作品を解釈しつつ豊かなキャラクター原案を作れるのはこの人ではないだろうかと考えて、私の監督作品である「Levius」の原作者としてお付き合いのあった中田春彌さんに依頼することになりました。「中田さんがかっこいいと思うルパンとキャッツアイを描いてみてください」というお願いをさしあげたんですが、結果、素晴らしいデザインを仕上げていただいて、まさにこれだと。

G:
中田さんがTwitterで画像を公開していましたね。


瀬下:
キャラクターデザイン原案として、本当にたくさんのいろいろなスケッチを作っていただきました。

G:
絵の第一印象はどうでしたか?

瀬下:
「かっこいい」の一言です。

G:
公開されているビジュアルをいろいろ見ていくと、ルパンはこれまでの作品の面影がかなり残っている一方、キャッツアイはかなり変化が加わった印象があります。これは、最初から変えていくぞという方針だったのでしょうか。それとも、いろいろとデザインを検討していく中で、変えていくことになったのでしょうか。


瀬下:
ルパンとキャッツアイが、まずは同じ世界観の中にいることが最重要でしたから、変遷については成り行きです。中田先生が解釈したルパンとキャッツアイの瞳は、それぞれにかっこよく肉感的で、並んでいても違和感はありませんよね?

G:
そうですね。

瀬下:
アニメの制作途中に迷いはじめると、完成できませんからね。ラフスケッチの段階でしっかりと確認させてもらいました。

G:
異なる2作品のキャラクターが同じ世界にいるわけですが、制作するにあたっては、それぞれの世界を均等に合わせるようなイメージだったのでしょうか。

静野:
北条先生からは「ルパンの世界観をベースにしてもらっていいですよ」と言っていただいたんですが、その言葉はいただきつつも、極力、自分が見たルパンとキャッツアイをベースにしつつ、1980年代という背景を舞台にすれば、2つの作品のキャラクターを共存させることができるのではないかと考えました。

G:
「80年代」という点では、石山プロデューサーが「ルパンのジャケットがピンクなのは、『キャッツ・アイ』の時代設定が80年代であり、本作もその時代設定をフィーチャーしているため『80年代のルパンと言えばピンク』という思いがあり決定しました」というコメントを出しておられました。確かに作中にはスマホもネットもなく、出てくる新聞記事をよく見たら「ソ連」という名前が出てきたりして確かに80年代だなと思いましたが、とはいえ、どことなく現代のような雰囲気も感じました。この世界を作るに当たっては、どのようにバランスを取っていったのでしょうか。

瀬下:
80年代をモチーフにすることで、懐かしんでもらうというサービスもあり得ますけれど、本作はそこがメインではなく、あくまで「80年代として描いている」というだけです。

G:
なるほど。「スマホは出さない」などは徹底して気をつけるけれど、80年代の文化をあえて大きく扱ったりはしないと。

瀬下:
そういうことです。

静野:
気をつけたのは電話などの通信手段のもろもろや、服装や車です。80年代的なモチーフにはするようにしましたが、今の若い人たち、「ルパン」や「キャッツ・アイ」を知らない人たちが見たときに「あれはなんだ?」と引っかかって作品に入り込みにくくなるようなマニアックな要素は、極力描かないようにしました

G:
具体的に「こういうのは引っかかりそうだ」と避けたものはありますか?

静野:
町並みや看板、ネオンといった部分ですね。「あれ?自分たちが知っている日本じゃないのかな?ファンタジーなのかな」と思われてしまうことはノイズになってしまうなと。冒頭シーンを、極力目立たないような隅田川沿いの町並みにしているのは、そういった理由があります。一方で、「携帯電話やスマートフォンはありません」ということははっきりと主張しなければいけないので、大きな自動車電話を使ったり、FAXで通信したりして「80年代はこういう時代でした、わかってくださいね」ということをわかりやすく示しています。


G:
キャッツ・アイ原作者の北条司さんが本作について「『ルパン三世』は、中学生の時から読んでいた大先輩の作品です。モンキー・パンチ先生がこのコラボの話を聞かれたらどんな反応をされていたかな…?と考えずにはいられません」とコメントを発表しておられました。制作を担当したお二人は、2つの作品から1つのお話をどのように作っていったのでしょうか。

静野:
両作品のキャラクターが非常に個性的なので、まずはそのキャラクターの個性を損なうことなく描こうというのがありました。ただ、尺も決まっていて、1タイトルでも映画が1本作れる作品なのに、2倍のキャラクターがいるわけです。

G:
整理するだけでも大変ですね……。

静野:
全体のバランスを考えたとき、ルパンと愛がバディ的な関係になるというか、心を通わせていくようなストーリーを軸として、いかに「ルパンが盗むもの」「キャッツアイが盗むもの」を1つのものとして絡めていくか、そして家族愛をいかに感動的に描けるか、そういった感じで考えて構成していきました。北条先生から「三部作の中に、ハインツを入れた方がいいのでは」などいろいろアドバイスをいただき、三姉妹とお母さんだけではなくハインツも含めることで、より強固な家族愛をしっかり描けるんじゃないかということで、プロットが決まっていきました。

瀬下:
このアドバイスは本当にありがたかったですね。

G:
プロットから形にしていく作業は、事前に考えるよりも大変なものではないかと思うのですが、苦戦した部分はどういった点でしたか?

瀬下:
静野さんとストーリープロットを作っていく段階で、「こういうときには誰か出てきて欲しい……そうだ不二子がいる」となってくれるんです。ルパン一味に銭形警部、キャッツアイの3姉妹に俊夫……これだけ揃っていると、どんな状況でも個性豊かで魅力あるキャラクターを登場させることができる。ですから、お客さんに喜んでもらえるようなストーリーという根本的な難しさは当然ありましたが、「キャラクターをどう扱えばいいか」と悩むことはありませんでした。


G:
おおー、なるほど。

瀬下:
それに加えて、北条先生が「とにかくルパンを大事にしてください」と尊重してくださる関係だったので、我々も自由にやらせてもらえて、非常にやりやすい作品でした。

G:
方針が明確だからこそ、自由にやれるところが大きかったという感じでしょうか。

瀬下:
そうですね。どんな難しい役柄でもこなしてくれる大ベテランの役者さんが複数控えている。そんな現場感覚でしたね。

G:
先ほども話に出たように「ルパン」「キャッツ・アイ」ともに1作品ずつでも映画が1本作れるぐらいのタイトルだということで、今回こうして1本の話にするにあたって、さすがに入りきらなかった展開やアイデアもあるのではないでしょうか。

瀬下:
いろいろありました。不二子が4人目のキャッツになるというアイデアもあったんです。激しいアクションの後、服がボロボロになってしまった不二子に泪姉さんが「予備のレオタードならあるわよ」とか(笑)。

G:
(笑)

瀬下:
このネタ、ウケますね……入れた方がよかったかな?(笑) 不二子も入った4人でレオタードを着て立っていたら、なにか、こみ上げる幸せがないですか?

G:
絵面がいいですよね、頭に浮かびます。見てみたかった。

瀬下:
こんなアイデアが色々出るのも、ルパンやキャッツアイが超有名だからこそです。キャラクターの力のおかげです。

G:
そういえば、瀬下監督のInstagramを見ると、2022年10月に「すずめの戸締まり」を見たという感想が投稿されていました。


瀬下:
完成披露試写会の投稿です。『すずめの戸締まり』にはCGキャラクター演出として、本作と同時並行に2年ぐらい携わっていました。

G:
複数の作品を手がけるときは、どのようにスタイルとして分けるのですか?同時に両方進めるというわけにはいかないのではないかと思いますが。

瀬下:
僕は仕事が複数ないとメンタル的に耐えられなくて(笑) 切り替えつつやったほうが気持ちが安定します。1つの作品で何か引っかかると、深みにハマりすぎてしまうんでしょうね。

G:
なるほど、そういうスタンスで。

瀬下:
その方がバランスが取れるんだと思います。

G:
静野監督は同時に2つ3つやった方がいいのか、1つに集中する方がいいのか、どうですか?

静野:
特に決めていないですね。お話が来たら受けようかなと思っていて。

瀬下:
ちなみに、同時に扱う本数でいうと静野さんの方が圧倒的に多いです(笑)。

G:
おお……パンクしたりはしないんですか?

静野:
ひょっとすると、周りには迷惑をかけてしまっているかもしれないですね(笑)

瀬下:
結局、僕も静野さんも「シドニアの騎士」のころからずっと並行していろいろやってますね(笑)。

G:
本作は2023年1月24日にジャパンプレミアが開催され、1月27日からPrime Videoで配信されます。インタビューを読んでから作品を見る人もいると思いますが、そういった人にこれだけは伝えておかなければいけないということはなにかありますか?

静野:
試写で見ていただいたと思うんですが、隠れキャラには気付かれましたか?

G:
背景にすごく気になるキャラがいたので、試写2回目で確認しました(笑)

静野:
ぱっと見たときは気付いてもらえないかもしれないですけれど(笑)、そういう面白い要素もありますので、ぜひ確認してみて欲しいと思います。

G:
「キャッツ・アイ」の場合はアニメシリーズから時間が経過していて、本作で初めて触れるという人も少なくないと思います。そういった点は制作時、気にしましたか?

静野:
ルパン一行もキャッツもメジャーなキャラクターだという感覚で作っているので、「このキャラクターはこういう性格です」といった説明は省いてもいけるだろうと判断しました。

瀬下:
基本的に「初見の人に向けて説明しなければ」という意識では作っていないです。初見だと「なぜこの3姉妹は泥棒なのに目立つ色のレオタードを着ているんだろう」とか思うかもしれませんが(笑)……。

静野:
「なぜ警察署の目の前に泥棒がカフェを開いているんだ」とかありますもんね(笑)

G:
(笑)

瀬下:
俊夫からすれば、自分が追いかけている泥棒と同じ名前の喫茶店ですからね(笑) でも、それが面白いんですよね。

静野:
そこから気になって原作を読んでもらったり、トムスさんのYouTubeチャンネルで見てもらえばばっちりです。

【公式】キャッツ・アイ 第1話「君はセクシーな泥棒」 “CAT’S EYE” EP01(1983) – YouTube
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瀬下:
今ちょうど「うる星やつら」のリメイクを放送していますが、なぜ宇宙人が虎縞のビキニを着ているんだろうとか、初見の方は思うんですかね(笑)


G:
でも1度見たら忘れないですよね。

瀬下:
そう思います。70年代、80年代のキャラクターの強さですね。憧れます。

G:
確かに、ありますねえ。静野監督は「GEMSTONEクリエイターズオーディション」というオーディションプロジェクトのサイトで現役高校生監督と対談していて、テレビアニメと劇場公開アニメの演出面での違いを質問され、「原作ありかオリジナルかで違う」と回答していました。本作は原作が2つあり、しかしお話はオリジナルです。どういった点に気をつけたり、注力したりしたのでしょうか。

静野:
ちょっと前の回答と重なる部分があるかもしれませんが、いかにこの両タイトルの主役級キャラクターたちをバランスよく描くか、プロット開発時にはすごく悩んでスタートしました。

G:
「バランス」よく描くというのは、活躍度合いなどのことでしょうか?

静野:
スクリーンタイム云々のことではなく、いかにこの作品の中で必要とされる出現の仕方ができるか、活躍できるかという部分ですね。ルパンサイドだけで3人に不二子ちゃん、キャッツが愛たち3姉妹、さらに警察に銭形と俊夫と、個性的なキャラクターがてんこ盛りなので、これは苦労するだろうなぁと思いながら入りました。

G:
(笑)

静野:
先ほど瀬下さんがおっしゃったように、キャラクターがとにかく個性たっぷりなので「このシーンはこのキャラクターだよな」となんとなく当てはめていくと、本当にドラマを進めてくれるんです。すごくぶっ飛んだ設定や見た目で個性が強烈だと、当時のスタッフは大変だったろうなあと思っていたんですが、自分で扱ってみると80年代のキャラクターの個性はとても魅力的で、それだけで物語を引っ張っていってくれるものだということを実感しました。そこは、本作をやってみて新しくわかった部分で、仕事を引き受けてよかったなと思っています。

G:
強烈な個性を感じるのはどういったときですか・

静野:
どのキャラクターでストーリーを動かしていくかとなったと、尺も決まっているので、今回は愛ちゃんでストーリーを引っ張っていこうと考えました。時には、このキャラクターの個性には役不足かもしれない、この2人は相性が悪いかもしれないと心配しつつプロット開発することもあるんですけれど、本作の場合、「ここはこういう会話だとうまくいくな」というのがぱっとわかったり、「愛と別行動中のとき、泪と瞳はどういう会話をするか、どういう行動に向かうか」がもう決まっていたかのように目に浮かんだりして、そういう点では、クライマックスをどう落とすかというところ以外は結構早めに仕上がりました。

G:
おおー、なるほど。

静野:
最後をどうするかは悩みましたけれど、そこも北条先生のアドバイスでクリアできて、うまくまとまったと思います。

G:
なるほど。何度か話の中で「尺」のことが出てきましたが、キャラクターで苦しむことがなかった代わりに、時間の調整が苦労した部分という感じでしょうか。

静野:
そうですね。個性あるキャラクターたち全員に活躍してもらって、スクリーンタイムもある程度用意しなければいけないというのは苦労するだろうなあと思いました。ただ、やってみると、キャラの個性がグッと強いので、出番が短時間でも十分にいけるということがわかってきました。

G:
「ルパン」は以前、「ルパン三世VS名探偵コナン」というコラボもやっていて、読売テレビの諏訪プロデューサーが、ビルから人が落ちたら死ぬコナンと、ビルから落ちても死なないルパンという、絶対に交わらない2つの世界観を持つ作品を1つに収めるのが大変だったという話をしていました。

ルパン三世と名探偵コナンのコラボ映画実現までにどんな苦労があったのか諏訪プロデューサーが語る – GIGAZINE


G:
「ルパン三世」と「キャッツ・アイ」の場合は、コミカルな味を持ちつつシリアスな雰囲気もあるという点は共通するのではないかと思いますが、そのあたりでのすり合わせみたいなものはありましたか?

静野:
「ルパンはビルから落ちても死なない」とは僕は思っていなかったですね。むしろ、僕はコナンの映画もやっていますけれど、コナンこそビルから落ちても死なないんじゃないかとすら思うところがあります。不死身度でいえばコナンの方かもしれないですよ。

G:
(笑)

静野:
弾も当たりませんし。

瀬下:
もう、無双ですよね(笑)

G:
無双(笑)

静野:
本作に関しては、キャッツはケガするとどうなるか、どうすると傷つくかなど、原作の良さを損なわないようにということを第一に考えました。実際に見ていただいて、どうでしたか?違和感はありませんでしたか?

G:
最初は「大きいくくりだと『怪盗もの』で似ているようだけれど、やっぱり別物なんだ」と感じて、この2つが本当に交わるのだろうかと不安もあったのですが、見ているうちに「今はルパン三世」「今はキャッツ・アイ」と思うことがなくなって、気がついたらなじんでいるなと。


瀬下:
最高の評価ですね。

G:
どこからなじんでたのかわからなくて「いつの間に?」でした。

瀬下:
狙い通りです。嬉しいです。

G:
ということは、作品がどこで融合したのか気付かなかったのは正解なんですね。

瀬下:
キャッツ・アイの世界観でストーリーを牽引しつつ、化けたルパンが入りこんでくることで、自然に融合していく印象の構成にしてます。

G:
なるほど、じわじわとルパン色が濃くなっていったんですね。こうやって種明かしを聞くと「なるほど、そうだったのか」と納得なのですが、見ているときは「これ、完全に融合した世界になってるよなぁ」と思っていました。……あと、すごく気になった部分として、キャッツアイのコスチュームが変わっていましたが、これはどのようにして変わることになったのですか?


瀬下:
今回、レオタードのままでいくのかについてはすごく悩んだところでした。80年代という設定ではあっても、女性の描き方、セクシャルな描き方にやはり配慮は必要であろうと。結果として、今の時代にマッチするようなコスチュームにアレンジしていきました。

G:
ルパンも作品によってデザインが細かく違っています。今回は80年代でピンクジャケットのルパンということですが、最終的にこの姿に決まったのはどういったところが決め手ですか?

静野:
1つの世界に2つのタイトルを入れるということで、デザイン原案を中田先生に頼むところからまず始まっています。石山プロデューサーからは80年代のルパンを出したいという話があり、キャッツ・アイも80年代だからちょうどいいんじゃないかということで、このお題から、いかに両タイトルが1つの作品として成立するかを探ってもらい、デザインしていきました。


G:
ちょっとここで作品からは外れた話で、瀬下監督は複数の仕事を並行する方針だということなのですが、2021年6月に設立された「Studio KADAN」の代表取締役副社長になったと。

瀬下:
この4年間、KADOKAWAさんの新作タイトルも監督しているんです。その縁で、新会社設立に参画しました。その新作ももうすぐ発表します。

G:
Instagramでちょっと写真も公開されていますね。

瀬下:
KADOKAWA傘下には、今3社のアニメ制作会社があります。手描きアニメのキネマシトラス、2DデジタルアニメのENGI、そして3DCGアニメのStudio KADANです。この3社が、KADOKAWAの作品をまさに様々なスタイルでアニメ化していくという戦略です。

G:
ちょうどこの半年ぐらい人気を集めている、Stable DiffusionやMidjourneyといった画像生成AIについても伺ってみたいのですが……。

瀬下:
この状況を面白がってはいますけれど、本格的な導入はまだまだこれからのことですね。

G:
なにか、こういうことができるようになれば本格的に使われそうだというイメージはありますか?

瀬下:
AIを絶妙に使いこなすユーザーがあっという間に出てくると思います。YouTubeを使いこなすのと同じようにです。でも、それによって我々がお金を払ってまで観たいと思うコンテンツを作れるかどうかはわかりません。どういうマネタイズの仕組みになっていくのか、どんなマーケットが作られるかは、まだわからないです。

G:
本作においては、CGのプロセスで新たに取り入れたものは何かありましたか?それとも手堅く作っていったのでしょうか?

瀬下:
今回は手堅い作りで、技術的な冒険はあまりしていないです。

G:
「こうした技術は次作以降に取り入れたい」などの、要注目技術はありますか?

瀬下:
「実用」にはリスクを伴うものなので、本作のような作品では実験的な技術は入れにくいのが現状です。今のところ、次作以降で検討しているのは、プランニングにおけるリアルタイムエンジンの導入くらいでしょうか。

G:
次作以降ということなので、そのときにはまだ話を伺えればと思います。

瀬下:
僕はあまりリスクを取りませんので、面白い話ができないかもしれません(笑) 細々とCGアニメを作りながら、細々とツール開発を続けているだけですから。

G:
静野監督に伺いたいんですが、瀬下監督はそういうリスクを取らない方なんですか?

静野
いやいや(笑) ……といっても、いろいろ聞きたくなっちゃうと思うんですけれど、今、アニメ業界もゲーム業界もAI技術を取り入れて動いていますし、画像生成AIもディープフェイクも、うまく組み合わせることで、ある工程を飛ばしていけるんじゃないか、こうしていけるんじゃないかと開発は進んでいます。詳しくは言えませんが。

瀬下:
言いにくいですよね(笑) コア・コンピタンスの領域なので。

G:
なるほど、それでもコア・コンピタンスのレベルに至りつつあるということなんですね。

瀬下:
そうかも知れません。実際、僕や静野さんは、映像制作においてテクノロジーがとても重要だという共通認識がありますし。

G:
なるほど。

瀬下:
だからこそ、インタビューに答えづらい技術領域もあるわけです。

G:
そろそろ時間いっぱいだということなので、最後にお二人から「こういうことは言っておきたい」というものがあれば。どういった内容でも大丈夫です。

静野:
なんだろうな……できるだけ多くの方に見て欲しいですね。

瀬下:
そうですね。多くの方にご覧いただきたいですね。日本を代表する魅力的な泥棒キャラクターであるルパンとキャッツアイ、誰もが想像したことのある豪華共演をお楽しみください。

静野:
ぜひ応援をお願いします。

G:
脱線した質問にまでお答えいただき、ありがとうございました。

Amazon Original「ルパン三世VSキャッツ・アイ」は2023年1月27日(金)からPrime Videoで世界独占配信スタートです。

Amazon Original『ルパン三世VSキャッツ・アイ』PV第2弾解禁!2023年1月27日(金)よりPrime Videoにて “世界独占配信”! – YouTube
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©モンキー・パンチ 北条司/ルパン三世VSキャッツ・アイ製作委員会

◆「ルパン三世VSキャッツ・アイ」作品情報
・スタッフ
原作:モンキー・パンチ『ルパン三世』/北条司『キャッツ・アイ』
監督:静野孔文 瀬下寛之
脚本:葛原秀治
副監督:井手惠介
キャラクターデザイン:中田春彌 山中純子
プロダクションデザイン:田中直哉 フェルディナンド・パトゥリ
アートディレクター:片塰満則
編集:肥田文
音響監督:清水洋史
音楽:大野雄二/大谷和夫
アニメーション制作:トムス・エンタテインメント
アニメーション制作協力:萌
製作:ルパン三世VSキャッツ・アイ製作委員会

・音楽
「ルパン三世」
音楽:大野雄二
「THEME FROM LUPIN III 2019 ~ Playback’80」
作曲・編曲 :大野雄二 / 演奏:You & Explosion Band
「キャッツ・アイ」
音楽:大谷和夫
Arranged by fox capture plan

主題歌
杏里 ANRI「CAT’S EYE 2023」
作詞:三浦徳子
作曲:小田裕一郎
編曲:小倉泰治。デイヴ・ライツァス

「ルパン三世VSキャッツ・アイ」オープニングテーマ
fox capture plan「THEME FROM LUPIN vs CAT’S EYE」

・キャスト
ルパン三世:栗田貫一
次元大介:大塚明夫
石川五ェ門:浪川大輔
峰不二子:沢城みゆき
銭形警部:山寺宏一
来生瞳:戸田恵子
来生泪:深見梨加
来生愛:坂本千夏
内海俊夫:安原義人
永石:麦人
銀河万丈
東地宏樹
菅生隆之

配信URL:https://www.amazon.co.jp/dp/B0B8THMHBS
コピーライト:©モンキー・パンチ 北条司/ルパン三世VSキャッツ・アイ製作委員会
公式HP:lupin-vs-catseye.com
公式Twitter:@lupin_vs_cats
ハッシュタグ:#ルパンVSキャッツ
※作品の視聴には会員登録が必要です。(AmazonプライムについてはAmazon.co.jpサイトをご覧ください。)
Amazon、および、Prime Videoに関連するすべての商標は、Amazon.com, Inc. 又はその関連会社の商標です。

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