1. 東京大学の「ChatGPTに関する情報をまとめて把握できる動画」が好評
東京大学吉田塁研究室が5月13日に実施した「教員向け ChatGPT 講座 ~基礎から応用まで~」という講演の動画がYouTubeで公開されている(INTERNET Watch)。これは教員を対象にして、ChatGPTに関する情報をまとめて把握できるようにすることを意図したもので、4時間を超えるボリュームがある。参加者の8割がアンケートで最高評価を付けるほどの好評を博している。
「本イベントの動画や資料は、各大学や教育機関などの勉強会、研修、FD・SDなどで是非ご活用下さい」とのことで、広く利用することができる教材となっている。大学だけでなくとも参考になる。
ニュースソース
- 東大が開催した教員向けのChatGPT講座、映像および資料がオンラインで無料公開中[INTERNET Watch]
2. 議論が深まりつつある「AIと著作権」
文化庁と内閣府は「AIと著作権の関係等について」と題された文書を公表した(PC Watch)。このなかで、生成AIによる学習および生成物と既存作品の著作権の関係に対する見解が明らかにされている。適用条文の違いから、「AI開発・学習段階」と「生成・利用段階」に分けて説明されている。
「AIの開発および学習段階において、著作物に表現された思想または感情の享受を目的としない利用行為は『原則として著作権の許諾なく利用することが可能』」としている。ただし、「必要と認められる限度」を超える場合や、「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」は規定の対象とならない。
また、「生成と利用段階において、AI生成画像をアップロードして公表したり、複製物を販売したりする場合の著作権侵害の判断は、私的な鑑賞/行為などを著作権法で利用が認められている場合を除き、通常の著作権侵害と同様に扱う」としている。
具体的な判断基準などは事例を積みかせる必要があるかもしれないが、ひとつの判断を示した意味は大きい。
これについて、AI領域の法務に詳しい弁護士の柿沼太一氏は自身のTwitterアカウント(@tka0120)で「かなり踏み込んだ内容」と言及している(ITmedia)。
文化庁は6月19日にオンラインセミナー「AIと著作権」を開催し、これらの件を含めて説明をする(INTERNET Watch)。
さらに、これとは別に、早稲田大学は、コロンビア大学ロースクール、香港大学と共同で6月10日に「人工知能と著作権法」というシンポジウムを開催している(ITmedia)。
ニュースソース
- 生成AI画像は類似性が認められれば「著作権侵害」。文化庁[PC Watch]
- 文化庁の「AIと著作権」の解釈が話題に AIに詳しい弁護士「かなり踏み込んだ内容」[ITmedia]
- 「AIと著作権法」早稲田でセミナー 米国著作権局長や赤松健氏、Microsoft、Google担当者など豪華メンバー[ITmedia]
- 文化庁、6月19日開催のオンラインセミナー「AIと著作権」の受講申し込みを受付中[INTERNET Watch]
3. 生成型「アイドル」が続々
生成AIを使って作り出されたアイドル「さつきあい」のグラビア写真集が集英社から発売されたのは5月29日だったが、翌週の6月7日には販売の終了を発表した(ITmedia)。公式Twitterアカウントも削除されている。集英社はその理由について「制作過程で、編集部で生成AIをとりまくさまざまな論点・問題点についての検討が十分ではなく、AI生成物の商品化については、世の中の議論の深まりを見据えつつ、より慎重に考えるべきであったと判断するに至った」と説明している。
具体的にどのような「論点・問題点」があったのか、外部からの何らかの申し立てがあったのかなどは明らかにされていないが、一般的に、生成AIが学習した画像とそこから出力された画像の間に著作権的な問題が内在していることは議論となっているところだ。さらに大手の出版社が商品化をしたというところも論点になっているかもしれない。
いずれ、この問題をどう考えたのかは広く共有されてもよいのではないだろうか。
一方、「神宮寺藍」というAIで生成されたグラビアアイドルも話題になっている。「TikTokでアカウントを開設してからたったの数日で動画が100万回以上再生された人気のクリエイター」ということだ。記事によれば、「神宮寺藍の名前で運営されているTwitterでは『TikTokは壮大な社会実験です』と『中の人』の言葉が綴られており、組織体が仕掛けているようだ」とされている。それ以外にも、Twitterでは「天音あい」が8万人からフォローされているという(Yahoo!ニュース/Real Sound)。
今後、こうしたAIで生成されたモデルやアイドルが量産されることになるのだろうか。
ニュースソース
- 集英社、“AIグラビア”の販売終了 「生成AIの課題について検討足りなかった」 Twitterも削除[ITmedia]
- “実在しない”19歳港区女子のTikTokが100万回再生 増加する「AIインフルエンサー」の危険性と課題[Yahoo!ニュース/Real Sound]
4. NFTを使った商品2題――「ハヤカワ新書」と「新垣結衣NFT」
生成型AIの話題の影に隠れがちだが、注目すべきNFTを使った商品も登場している。
メディアドゥと早川書房が「NFTによる電子書籍」が紙の本に付属する「NFT電子書籍付き新書」を発売する(INTERNET Watch)。早川書房によれば「+400円程度で電子書籍がついてくる、それを人にあげたり売ったりできるのが利用者のメリット」という。
この「NFT電子書籍付き新書」というプリントメディアには、電子書籍を取得できるカードが封入されている。このカードをスマートフォンで読み取ることで、電子書籍を取得できる。電子書籍はメディアドゥが展開するNFTサービス「FanTop」で電子書籍部分だけ他人に譲渡したり、二次流通としてユーザー間で売買したりすることが可能になる。今後、動画などでの限定特典の提供も計画している。
もう1つはアサヒ飲料による「新垣結衣NFT」(デジタルブロマイド)をプレゼントするキャンペーンだ(ITmedia)。対象商品を購入して応募シールを集めた人の中から抽選で100人にこのNFTが提供される。
提供者側のNFTを利用する企画がこなれてきた感じがある。意味の分からないユーザーもまだまだ多いだろうが、意味を感じさせないまま楽しめたり、利用できたりする企画は重要だ。
ニュースソース
- アサヒ飲料、「新垣結衣NFT」がもらえるキャンペーン 十六茶購入で[ITmedia]
- メディアドゥと早川書房、世界初の「NFT電子書籍付き新書」を発売、新レーベル「ハヤカワ新書」で 「+400円で電子書籍がついてくる」、さらに電子書籍がユーザー間で売買可能に[INTERNET Watch]
5. Apple Vision Proは「空間コンピューター」
6月4日、米アップルは数多くの新製品を発表した。
そのうち最も注目されているのがApple Vision Proだ(アップル)。これは、いわゆるヘッドマウントディスプレイ(HMD)と呼ばれるデバイスだが、アップルは「初の空間コンピューター」であると発表している。メタバース、VR、ARなどをアピールせず、新しいユーザーインターフェースのコンピューターであるという位置付けだ。実際に発表会の映像などを見ると、リアル空間を映し出す高解像の画像にオーバーレイするように表示され、これまでのマウスやキーボードの代わりにコンピューターの操作をしたり、映像コンテンツなどを視聴できるようだ。
現地で取材したジャーナリストたちは一様に「すごいデバイスである」と感想を述べているようだが、確かに、これまでのヘッドマウントディスプレイとは明らかに性格を異にする。
ただし、価格は50万円近いとなると、一気に消費者に広まることはないだろう(ひょっとすると為替や物価などの兼ね合いで、日本では高く感じるが、米国ではそれほど高いとは感じないのかもしれないが)。いずれにしても、今後の展開には注目をすべき商品といえるだろう。
また、他の巨大IT企業が競う生成型AIについては具体的な言及はなかったようだ。さまざまなソフトウェアの中に溶け込ませるようにAIの機能を実装してはいるが、生成型AI単体では勝負をしないということか。
その他の製品については以下のニュースソースをまとめておく。
ニュースソース
- AirPods、パーソナルなオーディオ体験を再定義[アップル]
- Apple Vision Proが登場 — Appleが開発した初の空間コンピュータ[アップル]
- Apple Watchのマイルストーンとなるアップデート、watchOS 10が登場[アップル]
- Apple、15インチMacBook Airを発表[アップル]
- Apple、M2 Ultraを発表[アップル]
- Apple、プライバシーとセキュリティに関するパワフルな新機能を発表[アップル]
- Apple、健康に関する新しい分野についてのパワフルな情報を提供[アップル]
- Apple、新しいMac Studioを発表、さらにMac ProにはAppleシリコンを搭載[アップル]
- iOS 17でiPhoneがよりパーソナルで直感的に[アップル]
- iPadOS 17、iPadに新たなレベルのパーソナライズと汎用性を提供[アップル]
- tvOS 17により、Apple TV 4KでFaceTimeとビデオ会議を利用できるようになります[アップル]
- アップル「WWDC23」まとめ! one more thingで発表された「Vision Pro」やiOS 17など揃い踏み[ケータイWatch]
- App Storeのデベロッパ、 2022年にApp Store経済圏で 合計1.1兆ドルの売上を記録[アップル]